令和の販売員心得 黒川想介 (75)単に商品を売りたい欲心より 相手を知りたい気持ちで臨む

ラジオのトーク番組の中で、ある有名なアナウンサーが次の様な話をした。駆け出しの頃から色々な人にインタビューをした。自分も少しは有名になり、若手のアナウンサーからインタビューを受ける機会がふえた。あるインタビューを受けた時に真摯に関心を持って私の事を見てくれるのがこんなにうれしい事なんだと気づいたと言う。アナウンサーは色々な研修があるだろう。その中にはインタビューをする時は相手の人に関心を持ってインタビューする事等の教えは当然あると思う。しかし現場に出て、いざインタビューをする段になると意外とその教えは忘れ、自分の聞きたい事のみに集中してしまうと言う。それでも回を重ねればアナウンサーの場合は多業界の人達との出合いや経験が実になって、聞き方に円熟味が出てくる。こうした事は機器部品の販売員にも相通じるものがある。

営業という仕事は人との出合いを大事にして商品を売ることである。誰にでも出来るような簡単な事ではない。それには営業力がいる。営業力といっても色々あるが大きく括ると二ツの部分に分けられる。(一)顧客になり得る人ならいかなる人でも良好な関係にもっていく部分。(二)商品を売り込む技の部分の二ツである。アナウンサーの例のように(一)の部分を身につけるにも二通のやり方があるようだ。

その①はアナウンサーが自分の聞きたい事に集中し、回を重ねて円熟味を出したように販売員が色々な立場や業界の人に営業を仕掛けて中堅販売員になるやり方である。これは時間をかけて多彩な経験や知識が身につき良好な人間関係が築ける。その②はアナウンサーが述壊した様に誰でも関心を示されればうれしくなって話は弾む。その会話からは多くの情報が得られる。その多彩な情報を武器にコミュニケーションの領域を広げて良好な人間関係が築ける。平成の中堅販売員は(一)の部分をその①のやり方で作ったが、中堅アナウンサーのようにどんな顧客にも円熟味がある会話を仕掛けて良好な関係に持ち込むまでに至ってない。昭和のように毎日のように多くの人に会う環境ではないし追いかけられる忙しさの中で似たような経験が多いから人間関係の構築力は弱いのである。その②の顧客に関心を持つやり方は普遍的心理をうまく使っている。それで顧客から得られる幅広い情報を糧にしてビジネス会話力が身につき、新規客との人間関係構築力がついてくる。販売員は顧客に関心を持つのは当然であると思っているために油断がある。

販売員の顧客への関心は何か売れる商品はないかという所に目がいく関心になる。無意識でも強いこの様な関心は人間関係を良好にする関心の持ち方ではなく単に商品を売りたいと思う欲心である。販売員だから頭の中に商品があってもいいが、商品の目を通さないで人間が本来持っている相手の事が知りたいという気持ちで臨むことが大事なのだ。ビジネスであるから顧客の製品や製品の販売先、顧客の会社の事や製造現場のこと、あるいは仕事の内容のこと等に関心を向けることに他ならない。長い間担当している顧客を販売員はわずか数%しか知らないかもしれない。それでは日頃会っている技術者とは個人的話題をまじえて円滑な会話ができるが紹介された他部門の人とは商品を離れたら思うような会話はできないだろう。他部門でも同じ会社の人である。もし製品の事や製造現場の事、あるいは会社の方針や技術者が持っている普遍的な課題を話題にしてコミュニケーションができるなら紹介された他部門の技術者でも自分たちのことをよくわかってくれていると感じて心を開いてくれる。営業の始まりは相手に関心を示すことなのだ。

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