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拡大する農業用ロボ開発 マシンビジョンとAI活用 カギ

著:IDS Imaging Development Systems GmbHSilke von Gemmingen

農業の人手不足は日本に限った話ではない。世界でも農業に自動化技術を取り入れることで労働力不足を解消しようという動きは活発に動いているようだ。ここでは、ドイツの産業用カメラメーカーのIDS Imaging Development Systemsと、イギリスの研究チームのレタス収穫ロボットの開発の様子を紹介する。

レタスは、ヨーロッパや米国において貴重な作物だが、労働力不足によってこの露地野菜の収穫の困難さが増している。収穫作業に携わる十分な人数の季節労働者の手配が、この業界での最大の課題の1つとなっている。さらに、生産者価格が賃金の上昇に追いついておらず、農家の利幅は非常に小さくなっている。

そんななか、イギリスでは農業工学と機械の専門家が、産業用カメラメーカーのIDS Imaging Development Systems(ドイツ)と共同で、レタス収穫を自動化するロボットソリューションを開発。Innovate UKが資金を提供し、Grimme農業機械ファクトリーとAgri-EPI Centre、ハーパーアダムス大学、西イングランド大学Centre for Machine Visionに加え、イギリスの2大サラダメーカー、G’s FreshとPDM Produceがチームに参加している。

開発したレタス収穫ロボットは既存の西洋ネギ収穫機械を改造。レタスを地面から持ち上げてピンチベルトで挟み、外側の葉っぱは自動的に取り去りて茎をむき出しにし、マシンビジョンと人工知能を使って切断する場所を正確に判定して本体を奇麗に切り分ける。

IDS製品セールススペシャリストRob Webbによると、「レタスの刈り取りプロセスは、自動化プロセスにおいて技術的に最も複雑なステップだ。開発中のプロトタイプ収穫ロボットには、丈夫で、過酷な環境に最適なuEye FAファミリーのGigE Visionカメラを採用している。また屋外での用途なのでIP65/67保護等級のハウジングが必要となる」と指摘する。

結果、選択したのが、コンパクトなSony製2/3インチグローバルシャッターCMOSセンサーIMX264を搭載したGV-5280FA-C-HQモデルだった。

「このセンサーを選んだ主な理由は汎用性に優れていることが大きい。AI処理にはフル解像度は必要ではなく、感度はビニングで増加できる。センサーフォーマットが大型になると広角光学機器も不要になる」(Rob Webb)。

この用途では、CMOSセンサーは卓越した画質、光感度、並外れたダイナミックレンジという特徴を持ち、ノイズはほとんどなく、非常に高いコントラストで5:4フォーマットの5MP画像を22fpsで実現し、照度が変化する環境でも使用できる。

レンズ、チューブ、トレーリングケーブルなど、さまざまなアクセサリを取りそろえ、カメラハウジングやねじ止め式コネクター(Xコーディング8ピンM12コネクターおよびBinder製8ピンコネクター)も同様に頑丈となっている。また、ピクセル前処理、LUT、ガンマなどのカメラ内蔵機能で、必要なコンピューティング能力を最小限に抑えることができる。

農業分野が抱える課題は実に複雑だ。国際連合食糧農業機関(FAO)の予測によると、人口の急激な増加に対応するには、2050年には農作物の生産をおよそ2012年に比べて50%増加させなければいけないという。こうした収穫高の予測は、農業業界にとって大きな課題となっている。農業は他の分野と比べてデジタル化が進んでおらず、気候変動や労働力不足の面で変革を進めていかなければならない。

未来の農業は、ネットワーク化されたデバイスと自動化にかかっている。そのなかでカメラは重要な構成要素であり、人工知能はその中心的なテクノロジーだ。収穫ロボットなどのスマートアプリケーションは農業の人手不足の問題に大きな貢献を果たすことができる。