産業用ロボットを巡る 光と影(31)ロボットの導入に成功した企業 ナカンテクノ 一般的な平面印刷とは時代を画する曲面印刷!

今回は実際にロボットの導入に成功した会社としてインタビューした。

-ナカンテクノの優れている点は?

1937年の創業以来、一貫して印刷機メーカーとして配向膜(はいこうまく)印刷装置のほか、インクジェット印刷機、精密グラビア印刷機、オリジナル印刷版の製造など、印刷機の関連装置を取扱い、これらの累計販売台数は1000台の実績がある。

その中でも特に、液晶ディスプレイ(LCD)向けの配向膜印刷装置においては約30年にわたり開発・製造をしてきたノウハウを最大限に活用し、配向膜印刷装置は世界シェアNo,1を誇る。

-ナカンテクノの印刷ロボットシステムは何が優れていますか?

加飾印刷の分野では、スマートフォン/PAD/車載ガラスなど全てにおいて曲面ガラスが

使用されている。この曲面ガラスに印刷する際に、インクジェットヘッドでの印字で「ヘッドとガラスとのギャップ(距離)」を均等に保つ必要があるがロボットを使用することで様々な曲面ガラス形状においても姿勢を変化させ一定のギャップを保ったまま印刷を行うことが可能となる。これにより膜厚の均一性、抜き部分の直進性において優れた印刷性能がある。

ナカンテクノの印刷ロボットシステム

ロボットがワークを持ち、印刷を行う

-ターゲットはどのような業界が多いですか?

1)FPD業界:液晶モニタ製造、タッチパネル、カバーガラス

2)造船業界:鋼材、鋼板

3)自動車業界:車載ガラス

-SIerの助けを借りずに自社でロボットシステムを構築した理由は?

当社のロボットシステムは、顧客ごとに異なる仕様になることが多いため、臨機応変に色々な仕様に対応することが求められる。幸い弊社には様々な装置を開発してきた実績と共にシステム構築~現場立上げまでの作業を一貫して行えるエンジニアが育っている。そのため、自社内にて完結出来る技術を有していると自負している。

-ロボットシステムで苦労したことは?

当社のロボットシステムは、前述したようにヘッドとガラスとのギャップを均等に保つだけでなく、一定速度で動作させ液の塗布を行う。その塗布誤差は数十μm以内を求められるため、高精度のロボット軌道が必須であり実際の塗布状態によって軌道修正が発生する。この修正にはCADデータの地道な編集だけでなくワーク(製品)の品種ごとの調整に膨大な時間を要するため、とても頭を悩まされた。顧客にもよるがワークサイズは1m以上ありワーク・印刷ヘッド・ロボットハンドそれぞれの干渉をオフラインでシミュレーションが必須であり、細心の注意を払って動作軌道を作成しなければならない。また、せっかく作った軌道も、ロボットの特異点により思わぬロボットの暴走が発生するなど問題点となりうる部分が多数であった。実際に以前のロボットシステムでは満足のいく動作軌道作成までにかなりの時間を要してしまった。

詳しくは後述するが、これらの問題を富士ロボットに出会ったことで解決できた。

-富士ロボットの「RobotWorks」は具体的に何が良いか?

RobotWorksの利点は多数あるが当社で特に実感している点は以下3点である。

  1. 操作が簡単:

ロボットとCADの素人である当社の社員が富士ロボットのトレーニングを1日受けた後、すぐに顧客向けロボットシステムの動作軌道を作成できた。今後、納めた装置を顧客に運用していくことになるが、操作が簡単であることは当社の海外支店メンバーのサポートレベル向上にもつながり、顧客から評価されると確信している。

2)機能が現場向き:

以前は、ロボットで実際に液の塗布を行った後、その塗布状態を確認しティーチング位置の修正が現場では必須だったが、この修正にはCADデータの地道な編集というアナログな方法で軌道修正を行っていた。このCADデータの修正だけでも数時間を費やし、結果がNGであれば再度CADデータの編集・印刷確認を繰り返していた。RobotWorksで同じ修正作業を行うと5~10分程度で軌道全体の修正が完了するため、再度修正したい場合でも短時間でできる。よって、多品種のワークを扱う現場では大きな工数削減となる。この修正も前述した1日のトレーニングを受けた社員が簡単に実践できたため、結果的に社員の教育まで含めて時間削減となった。

3)新規ロボットシステムの構成(位置関係)を早期に検討ができる:

RobotWorksでは「ロボットの各軸の総移動量を表示する機能」や「特異点チェック機能」などがある。よって、ロボットと印刷ヘッドなど周辺機器が「どの位置関係であれば安定した動作軌道となるか」という初期レイアウト構成の検証が容易にできる。繰り返しとなるが操作が簡単であるため、社内設計部門・立上部門と部署間で共通の検討ができ、より完成度の高い装置を作り上げることにも役立っている。

-ロボット化・デジタル化には「富士ロボットのコンサルタティング」!

上記インタビューとは別に、当社としてどうしても伝えたいことを述べる。

「富士ロボットのコンサルタティング」は当社にとって極めて有意義な知識を得られた。(得た知識は「大事なノウハウ」なので多くは語れないが、)例えば、各ロボットメーカーの長所・短所も事前に伺った上で安川電機製ロボットの導入を決定した経緯もある。「ロボット導入」=「即高効率の設備」という甘い世界では無いと以前導入したロボットシステムで実感していたので、もし初期の選定を誤っていた場合には取返しのつかない大きな失敗をしていたと思う。

さらに先日も富士ロボットが来社の際に調整中のロボットシステムに問題があったので、解決手法を聞いた。来社本来の目的と逸脱した内容にもかかわらず、解決まで尽力してもらった。「売ったら終わり(売った後、顧客に関わらない)」という企業もある中、富士ロボットの距離感の近いサポートは現場の人間からすると極めて有難いものであった。「ものづくりのデジタル化」へ変革しようとしている企業には「富士ロボットのコンサルタティング」をお勧めしたい。

◆山下夏樹(やましたなつき)
富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。1973年生まれ。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

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