転換期迎えたFA商社、「コト」売り さらに磨きを

コロナ禍ウェブ営業、組織改編も推進

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で製造業は大ダメージを受け、流通を担う商社・販売代理店も多くが10%程度の業績ダウンを強いられる厳しい1年となった。

それでも対面に代わるWEBでの商談やウェビナー、新商材としてのコロナ対策用品の取り扱い、組織再編、技術研修の強化など、新しい時代の商社像に向けた試行錯誤を重ね、少しずつ結果が出てきている。

何年も前からモノ売りからコト売り、ソリューション提案の強化が叫ばれてきたが、そのトレンドは今年も継続。技術力の強化で提案に磨きをかける。

 

ライト電業ではソリューションビジネス部が50人を超え、社員の4分の1以上が技術者として活動するまでに充実。現在は技術スキル増強に力を入れている。

中央無線電機は、技術提案に向けてPLCや画像、モータ等の製品の有資格者育成を推進。さらに需要が期待されるロボット等にも手を広げ、資格を生かした営業体制の再構築を行っている。

新生電機は、実機を使ったロボットの研修を積極的に行い、社内でロボットコンテスト開催など技術力の強化を図る。

岡本無線電機は、技術力を生かし、生産設備を納入するマニュファクチャリングシステムの提供が顧客に好評。新規顧客の開拓にも一役買っている。

鳥居電業もFAからラボ、メディカルなどあらゆる領域のオートメーション化を担う形への進化を進め、ハードウエア+FA系ソフトウエアの組み合わせ提案を強化している。

 

新たな時代に向け積極的な組織変革

コロナ禍で市場の動きが停滞し、自社や顧客も含めた業界全体でものの考え方や基準が変わったことをチャンスと捉え、組織や拠点などに大きく手を加える動きも進む。

サンセイテクノスは、20年に新規に拠点を4カ所開設。社内の密の回避と客先に近い場所に拠点を設けることでサービス体制の強化を図る。また中部地区で新たな物流センターが稼働を開始し、在庫保管応力が3倍に拡大した。

サンワテクノスも、業務管理をリモートでサポートしながら各地域は密着型で営業に専念できる新たな仕組みを強化。四国、長岡での新たな営業所開設に加え、甲府や金沢、東北でも開設を検討中。物流も小口配送の効率化を構想している。

 

因幡電機産業は、産機カンパニーのオフィスを移転し、そこにロボットセンターを併設。協働ロボットに加え、見える化や遠隔監視、オリジナル商材の展示を増やし、製造現場の自動化・省人化・IoT化をトータルで提案できる環境を整備した。

立花エレテックもショールームの規模を拡大し、「タチバナスマートラボラトリー」として運用を開始。最新のIoT/M2M機器、産業用ロボット、人協働ロボット、スマートグラス、3Dプリンターを展示し、顧客の導入前検証ができる体制を整えた。

大和無線電機では新組織として「コントロールセンター」を設置。物流外注との連携から、営業支援や仕入業務を担当する他、営業部と管理部の部門間協業を進めていく。

 

変わる営業手法

コロナ禍で営業手法が変わり、多くが対面営業からWEB営業にシフトした。進んだ企業では、さらにひと手間を加えることで、訪問・対面できない逆境をはね返す、新たな営業手法の開発にも成功している。

高木商会は、19年から進めてきた営業のデジタル化がコロナ禍で威力を発揮。顧客がリモートに慣れないなかで、逆に動画ツールを活用したオンライン営業やリモート営業の習熟度の高さで効率化やレスポンスを速めて高評価を獲得。WEBセミナーも30種類を開催し、2000人以上が参加。21年も積極開催し、見逃した人向けのオンデマンド配信による再放送なども行っていくとしている。

大洋電機は、新たに市場用途別の製品をアピールするA4PDFチラシを作成して顧客にメールで提案。特に訪問できない海外からの引き合いが増加。産業用Ethernetのパッチコードで売り上げ20倍という結果につながった。

またコロナ禍ではマスクや手袋、パーテーション、消毒液など対策用品のニーズが高く、FA商社・販売代理店各社も新たにコロナ対策の商材を取り扱って拡大防止に貢献し、一部ではヒット商品も生まれている。

サンナイオートメーションは、コロナ対策用商材として仕切り用のパーティションやマスク、CO2測定器などを取り扱い、感染拡大防止に一役買った。サンワテクノスでもコロナ対策商品として、空間除菌消臭装置や深紫外線LED利用除菌装置などの販売も増やしている。

 

新時代迎え見直される存在価値

コロナ禍で市場環境が大きく変わり、業界全体で新たなビジネスの志向も進んでいる。新しい時代への過渡期を迎えるなか、商社・販売代理店の立ち位置も変わる可能性を秘めている。プラス/マイナスの両方に振れる可能性があるが、それでも商社・販売代理店はエンドユーザーとの太いパイプを数多く持っていて、リモートであっても気軽につながれる関係性は大きなメリット。逆にコロナ禍で接触に制限があるからこそ、その強さが際立ち、あらためて存在価値が見直されている。

新時代にあっても商社の価値は変わらない。アール電子は「新型コロナで営業方法や市場環境が大きく変わりつつあるが、商社としての役割を果たすためには、メーカーより早くユーザーニーズを把握しながら、求められているいろいろな商品を、MOQ(最低発注数量)が必要な少量の注文でもできるだけ安く、フレキシブルに見積もり・提供できるようにすることで、ワンストップ購入できる商社の存在価値が見直され、ますます重要性が高まってくる」とし、基本に立ち返る重要性を示唆している。

 

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