技術者の採用でどのようなポイントを見ればいいかわからない
「論理的思考」と「定量表現」
技術者の新卒、中途採用における観点とは
新卒の技術職採用はもちろん、中途の技術者採用においてどのような観点をみて判断すべきか、ということについて迷うことはないでしょうか。
採用担当の方が技術の経験があれば、自らの経験に照らし合わせながら、主観で採用可否を決めるというのも決して悪いわけではありません。なぜならば、主観的とはいえ、採用に関わるレベルの技術者であれば、企業内部事情をよく知っており、自身もその職種である程度の成果を出しているということが前提にあるため、社内での活躍可否について理解できているためです。
しかしながら必ずしも技術的なバックグラウンドのある方が採用に関われるとは限りません。そのようなケースでは、「技術職」という技術的専門性をもって企業の維持発展に貢献できる人材をどのように考えるべきか、ということを一般職とは異なるアプローチで取り組まないと、優秀な技術者の卵や、即戦力となる技術者を逃してしまう可能性があります。
技術者の採用においては、どれだけ技術が進歩しても、研究開発スピードが上がっても、グローバル化が進んでも、業種が異なっても、普遍的な部分があることは知られていない事実かもしれません。
この普遍的なポイントになるのは、「自分のこれまでの経験で最も技術的に苦労したところと、その解決に向けた取り組みを聞き出す」という問いかけです。
これにより、①自らの研究テーマについて能動的に取り組んだか(主体性)②課題が出てくるまで突き詰めたか(忍耐力)③解決に向けてどのような動きをしたか(解決力)④わかりにくい研究の話を分かりやすく説明できているか(論理的思考力)といったことを聞き出すことが重要である。
そして、さらに踏み込むべきポイントがあります。それが、「その返答が客観的かつ定量的であるか」ということです。
技術者にとっての客観的とは
まず客観的については、過去のコラムでも述べたことがありますが、「論理的思考力を有しているか否か」という観点で判断します。
論理的思考力というと、ロジックツリーをはじめとしたロジカルシンキングに目が行きがちですが、技術者のスキルとしてはそのようなスキルもさることながら、「自分のやってきたことを他人にわかりやすく説明できるか」ということを最優先に見る必要があります。
一見わかりにくい技術的観点をわかりやすく説明できているか、質問に対し、わかりやすく答えられるか、という力は技術者にとっての論理的思考力での最重要ポイントの一つといえるでしょう。「難しいことをわかりやすく伝えられるか」この力は結局のところ入社後にチーム戦となった後のコミュニケーションに直結するところですので、ぜひ判断基準に入れていただければと思います。
技術者にとって重要な定量表現
そしてもう一つが、「定量的な表現ができるか」という点です。大きい、小さい、多い、少ないといった定性的な表現は、技術的な業種以外では重要になることもあります。しかしながら、技術というのは基本的に「数字というグローバル言語を基本として成り立っている」という紛れもない事実があります。数字で議論しないと、技術的な内容については人により解釈が異なってしまうリスクがあるためです。
裏を返すと定量的な議論が苦手な技術者は、独りよがりになるケースが多く、情報発信型マーケティングのような今後の技術者に求められるスキルに劣るケースが多いことを忘れてはいけません。「自分のこれまでの経験で最も技術的に苦労したところと、その解決に向けた取り組みを聞き出す」というリアクションについて、どれだけ数字が出てきているのかをよく見てください。
そして、定量的な表現が認められない場合、「具体的にどのような観点で苦労したのか、定量的に教えてください」「解決に向けた取り組みとその結果について、数字を使って説明できますか」ということを振ってみてください。
化学系であれば分子量や吸光度比、収率、機械系であれば応力や弾性率、ポアソン比、もっと広く科学系であれば密度、距離、といったものがあるでしょう。最近製造業でも採用が増えてきているプログラマ系であれば、どちらかというとプログラムのロジックツリーのようなことを説明できるか否か、ということを見ることになります。
しかし、それでも関数など数学的な考えが必要になるケースもあり、以下のような指標が一例といえます。
■プログラマ能力指標表
https://postd.cc/programmer-competency-matrix/
いかがでしたでしょうか。技術者を採用した後にその方が戦力になるか否かの見極めのポイントでもある、「技術情報伝達能力」「定量的な表現能力」という2点。
技術者を採用するにあたっての観点検討の一助にしていただければ幸いです。