令和の販売員心得 黒川想介 (22)

2020年5月13日

ITや電子系用語の理解必要
次の担い手と談義を始めよう

ネットの発達によって、技術者は販売員に頼らずとも必要な時にネットで済むと言われてきた。しかし、こういった技術者は製品開発技術者や製品設計技術者であり、製造関係の設備技術者、製造技術者、生産技術者のように製造現場関係の技術者は意外と簡単に販売員を頼る。ネットやカタログを見ればわかることも、わりと気軽に販売員を頼ってくる。そのようなこともあって、平成期の機器部品販売員は次々と発売される高機能化・多機能化する新商品をとにかく覚えようとしてきた。そして顧客からの問い合わせに丁寧に回答し、競合に取られないようにした。

しかし、忙しく動いている販売員は製造関連の技術者からの問い合わせで調べ物をする時間が結構なウェイトになっている。いわゆるできると言われる中堅販売員はこのウェイトが結構高い。顧客に好かれ浮気をされないように一生懸命やってきたのだが、その大変な努力のわりには売り上げがそれほど伸びていないと思っているなら、そんなに前のめりになって対応しなくてもいいのではないか。時代は令和という節目を迎えているのだから、一度立ち止まって考えてみるのもいいものだ。

これまでの機器部品営業を大雑把に大分類すると、この営業が始まった㈰昭和の黎明期と離陸期㈪オイルショック以降の成長拡大期㈫GDP500兆円に達して以降の平成の成熟大競争期の三つに分けられる。

 

営業の型はそれぞれの市場背景によって変わってきた。令和の時代をどのように見るかによって営業の型は違ってくる。製造の現場を間近で見ている販売員は、現場で各種のロボット案件が多くなっていることがわかる。

また、生産効率や品質を上げるために、さらに高機能的商品を求めていることも見える。だから今後ますます難しくなるFA機器を勉強し、覚えなくてはならないと考える。そう考える販売員は、平成の大競争期でやってきた商品技術の習得に拍車をかけるだろう。

しかしそれもあるが、情報技術の発展が製造現場にも大きな影響を与える。まだその影響は始まったばかりであるから、新たな市場にふさわしい商品は見えてこない。しかし、新しく誕生する市場に携わるグループや人はボチボチ見えてきたから、その人達と接触を図ろうとするなら昭和という黎明期の営業の型を参考にするのが良い。

 

昭和の黎明期は市場を探して、市場を大きく広げようとした。当時の販売員はどのような営業をしていたのか。その頃、市場や現場に積極的に足を運んで新規開拓したのは、販売店ではなく機器部品メーカーの販売員だった。その販売員は、電気・電子・機械などの学校を卒業した理系出身者が多かった。

理系出身の彼らはセールスマンではなく、自称「セールスエンジニア」と言っていた。自動制御市場は未成熟であったから、現場に自動化を普及させるには、現場の様子や機械の動きを具体的に知る必要があった。そのためには理系の素養を持って、現場の技術者と仕事上の談義をする必要があったのだ。そうしないでいきなり商品を紹介しても、「忙しいから帰ってくれ」と言われるのが関の山であった。だから理系の素養が必要だったのは商品技術の説明やプレゼン力ではなく、現場の人と談義し現場を探ることにあったのだ。

令和を昭和の黎明期と重ねて見るといろいろ見えてくる。令和も10年位たつと新しい市場は発展拡大し、そこで使う新しい機器部品も多数誕生して、市場も様変わりするだろう。今はかつてのセールスエンジニア営業が身につけていた理系の素養のように、IT用語やITに絡む機器を構成する電子系用語を理解しておく必要はある。そして次の市場の担い手である人やグループと話ができるようになるところからスタートすればいい。