日本産業機械工業会、2020年度産業機械の受注見通し

2020年3月23日

日本産業機械工業会は、2019年度の受注実績と2020年度の産業機械の受注見通しを発表した。

2019年度の日本経済は、海外経済の停滞で輸出や生産が伸び悩み、さらに10月の消費税の増税や大型台風等の影響もあって、回復の勢いが鈍化している。そのような情勢の下、2019年度と2020年度の産業機械の受注見通しを以下の通り策定した。なお、新型肺炎の感染拡大等の不確定要素が存在しており、この見通しにその影響は織り込んでいない。

2019年度

 内需は、非製造業が増加するものの、製造業と官公需が減少していることから、対前年度比99.3%の3兆2,706億円と見込んだ。
 民需のうち製造業については、前年度に大型投資が続いた化学工業や石油製品での反動減に加え、輸出が低調なはん用・生産用機械、電気機械、情報通信機械の減少の他、自動車も落ち込んでいることから、前年度実績を下回るものと見込んだ。非製造業については、電力業からの火力発電設備の更新需要の増加に加えて、運輸業や卸売・小売業からの物流機器の需要増により、前年度実績を上回るものと見込んだ。官公需については、環境装置の水質汚濁防止装置やごみ処理装置の減少により、前年度実績を下回るものと見込んだ。
 外需は、アジア、中東、北アメリカ、アフリカ、ロシア・東欧が減少し、特に中国が落ち込んでいることから、対前年度比86.4%の1兆6,703億円と見込んだ。機種別ではボイラ・原動機が発電プラントの受注もあって増加しているものの、化学機械が天然ガス関連の大型案件の減少から前年度を下回り、金属加工機械(製鉄機械)では
世界的な鉄鋼需要の伸び鈍化を背景に減少し、プラスチック加工機械や運搬機械では自動車や半導体産業からの受注が減少している。
 この結果、内外総合では、対前年度比94.5%の4兆9,409億円と見込んだ。

2020年度

 内需は、民間設備投資の年度後半からの緩やかな回復と官公需の持ち直しにより、対前年度比104.2%の3兆4,075億円と見込んだ。
 民需については、5G(第5世代移動通信システム)などデジタルテクノロジーの進展や、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応など、電機・電子や自動車を始めとする加工産業やその川上にある素材産業では、より付加価値の高い製品が求められることから、生産ラインの強化など先延ばしになっていた設備投資が緩やかに回復していくものと見込んだ。また、物流倉庫などの自動化・省力化投資や、工場の省エネルギー化投資も緩やかに回復していくものと見込んだ。
 なお、電力向けの火力発電設備については受注環境の厳しい状況が続くものの、バイオマス発電の需要は高水準を維持していくものと見込んだ。
 官公需については、自然災害に対する防災・減災など、国土強靱化に関する需要の増加に加え、水質汚濁防止装置やごみ処理装置の更新需要が増加するものと見込んだ。外需は、米中貿易摩擦の影響などで前年度に落ち込んだことから、対前年度比105.0%の 1 兆7,538億円とプラスを見込むものの、2018年度の水準までは回復しないものと思われる。
 オイル&ガス分野については、天然ガス関連の投資計画が進展するとみられることから、化学機械、ポンプ、圧縮機等の需要が増加していくものと見込んだ。
 また、環境意識が高まる中、世界共通の課題である温室効果ガスの削減に貢献する我々産業機械業界の優れた省エネ・低炭素型製品や環境対応技術のニーズは拡大していくものと見込んだ。
さらに、ハイテク分野が5G(第5世代移動通信システム)等をけん引役に回復していくことで、IT関連財から産業機械へ需要拡大の波が広がるものと見込んだ。
 この結果、内外総合では、対前年度比104.5%の5兆1,613億円と見込んだ。

1.ボイラ・原動機

2019年度
内需は、電力からの火力発電の高効率化等の更新需要が増加しており、対前年度比120.0%の1兆615億円と見込んだ。外需は、アジアでの発電プラントの大型案件の受注に加え、北アメリカ、ヨーロッパの火力発電設備の受注が増加していることから、対前年度比115.0%の4,777億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比118.4%の1兆5,392億円と見込んだ。

2020年度
内需は、バイオマス燃料等を使用する自家発電設備や、防災・減災のための非常用電源等の需要が緩やかに増加するものの、石炭火力発電の発注の減少により、対前年度比95.0%の1兆84億円と見込んだ。外需は、電力需要が拡大する新興国では、既存の火力発電設備の効率化や燃料転換等の需要が増加しているものの、石炭火力発電の新設・更新が減少していることから、対前年度比90.0%の4,299億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比93.4%の1兆4,384億円と見込んだ。

2.鉱山機械

2019年度
内需は、ガラス・骨材を製造する窯業土石や、鉄鋼(製鉄所)等の破砕機・粉砕機等の需要が増加しているものの、前年度にインフラ整備で大型設備を受注した建設の反動減により、対前年度比80.0%の237億円と見込んだ。外需は、アジア、中東、ヨーロッパの増加により、対前年度比105.0%の17億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比81.3%の254億円と見込んだ。

2020年度
内需は、素材産業からの能力増強等の設備投資が一服するものの、都市再開発に伴う建設関連の需要や、国土強靱化に向けたインフラ整備等が下支えし、受注金額としては前年度並みの、対前年度比100.0%の237億円と見込んだ。外需は、東南アジアでのインフラ整備に伴う需要増の他、オセアニア等での資源開発の増加により、対前年度比105.0%の18億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比100.3%の255億円と見込んだ。

3.化学機械

※冷凍機械、環境装置のうち大気汚染防止装置と水質汚濁防止装置を含む

2019年度
内需は、電力の大気汚染防止装置の増加に加え、食品や紙・パルプ、鉄鋼、非鉄金属からの需要が増加しているものの、化学と石油製品が前年度に複数の大型設備を受注した反動減で前年度を下回っている。さらに下水処理等の水質汚濁防止装置が減少していることから、対前年度比95.0%の8,378億円と見込んだ。外需は、アジア、北アメリカ、ロシア・東欧が前年度の大型案件の反動減により前年度を下回り、対前年度比65.0%の4,957億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比81.1%の1兆3,335億円と見込んだ。

2020年度
内需は、素材産業では維持・更新が中心になり、電力の大気汚染防止装置も増加は見込みがたく、民需全体では微減となるものの、官公需の下水処理等の水質汚濁防止装置については前年度を底として回復していくとみて、対前年度比100.0%の8,378億円と見込んだ。外需は、LNG関連投資の増加に加えて、エチレン等のプラントの新増設の増加、新興国での下水処理等の水インフラの需要増により、対前年度比120.0%の5,948億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比107.4%の1兆4,327億円と見込んだ。

4.タンク

2019年度
内需は、化学と石油製品から複数の大型設備を受注していることから、対前年度比130.0%の206億円と見込んだ。外需は、LNG受入基地等の大型設備の需要が前年度に引き続き回復せず、設備の維持・更新が中心となっていることから、対前年度比100.0%の24億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比126.0%の231億円と見込んだ。

2020年度
内需は、電力・ガス業界からのLNGタンクの新設案件の増加は見込みがたく、また、化学・石油製品での前年度の反動減により、対前年度比90.0%の185億円と見込んだ。外需は、アジアでのLNG受入基地の新設等の需要は見込みがたく、対前年度比100.0%の24億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比91.1%の210億円と見込んだ。

5.プラスチック加工機械

2019年度
内需は、自動車、その他製造業(プラスチック製品製造業を含む)の減少により、対前年度比70.0%の758億円と見込んだ。外需は、アジアや北アメリカにおける自動車・電気・電子関連設備の受注減少により、対前年度比85.0%の1,213億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比78.5%の1,971億円と見込んだ。

2020年度
内需は、通信機器や半導体関連産業の生産の回復の他、自動車の安全運転サポートカー・自動運転に使用されるセンサやレンズ類、電動化に関する部材等の生産の増加に伴い、低迷していた需要が年度後半から徐々に持ち直していくとみて、対前年度比100.0%の758億円と見込んだ。外需は、5G(第5世代移動通信システム)対応の新製品拡充に伴うの設備投資の拡大に加え、半導体関連投資も年度後半にかけて回復していくとみて、対前年度比105.0%の1,274億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比103.1%の2,032億円と見込んだ。

6.ポンプ

2019年度
内需は、官公需からの発注が減少しているものの、化学、鉄鋼、建設、電力の増加により、対前年度比100.0%の2,814億円と見込んだ。外需は、アジア、中東が減少しているものの、北アメリカで天然ガス関連の大型設備
の受注もあって増加し、対前年度比100.0%の949億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比100.0%の3,764億円と見込んだ。

2020年度
内需は、民需では設備の維持・更新が中心となり前年度並みとなるものの、官公需が「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の最終年度でもあることから発注量が増加するとみて、対前年度比105.0%の2,955億円と見込んだ。外需は、アジア等でのオイル&ガスや水インフラ関連、工場・ビル等での需要増により、対前年度比105.0%の996億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比105.0%の3,952億円と見込んだ。

7.圧縮機

2019年度
内需は、食品、石油製品、電気機械、情報通信機械で増加しているものの、化学、はん用・生産用、電力の減少により、対前年度比100.0%の1,465億円と見込んだ。外需は、北アメリカやヨーロッパ、オセアニアが石化プラント向け等で増加していることから、対前年度比105.0%の1,501億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比102.5%の2,967億円と見込んだ。

2020年度
内需は、素材産業等での大型設備の新設等は見込みがたいものの、多くの業種で環境意識の高まりから低炭素化に向けた省エネ性の高いコンプレッサへの更新需要が底堅く推移していくとみて、対前年度比100.0%の1,465億円と見込んだ。外需は、石化プラントでの需要の増加や、新興国等での建設、工場、資源採掘現場等での需要が増加していくとみて、対前年度比107.5%の1,614億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比103.8%の3,080億円と見込んだ。

8.送風機

2019年度
内需は、自動車、電力、運輸等の増加に加え、官公需も増加していることから、対前年度比102.5%の235億円と見込んだ。外需は、中東の減少により、対前年度比80.0%の16億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比100.6%の252億円と見込んだ。

2020年度
内需は、バイオマス発電等の需要が続くものの、鉄鋼、自動車、電力、運輸等では維持・更新が中心となり、対前年度比100.0%の235億円と見込んだ。外需は、アジアでの製鉄プラント向けやオセアニアでの鉱山向けの需要が増加し、対前年度比105.0%の17億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比100.3%の252億円と見込んだ。

9.運搬機械

2019年度
内需は、はん用・生産用、情報通信機械における物流機器の減少の他、電力の木質バイオマスや石炭の搬送クレーンの減少により、対前年度比90.0%の2,986億円と見込んだ。外需は、港湾設備がアジアやヨーロッパで増加しているものの、電気・電子関連や自動車関連の生産ライン向け物流機器等がアジアで減少し、特に中国ではローカルメーカの台頭からも減少していることから、対前年度比85.0%の1,235億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比88.5%の4,222億円と見込んだ。

2020年度
内需は、クレーンについては港湾向けで自動化への更新需要が増加するものの、電力の燃料搬送用が減少し前年度並み、物流機器については製造業の落ち込みを運輸や卸売・小売等での物流の効率化を目的とした堅調な需要がカバーする形で横ばい、機械式駐車場では都市再開発等の計画が進み、前年度並みを確保し、運搬機械全体では対前年度比100.0%の2,986億円と見込んだ。
外需は、電気・電子、自動車産業からのマテハン設備の需要が年度前半に落ち込む他、電力での石炭搬送クレーンが減少するものの、食品や流通業界向けの自動倉庫の増加や、港湾クレーンの自動化・省力化投資や老朽化対策による増加により、運搬機械全体では対前年度比100.0%の1,235億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比100.0%の4,222億円と見込んだ。

10.変速機

2019年度
内需は、食品、鉄鋼、金属製品、情報通信機械、自動車からの需要が減少していることから、対前年度比92.5%の327億円と見込んだ。外需は、アジア、ヨーロッパが減少し、ただし、海外での受注・生産体制に移行しているため受注金額の水準が低くなっており、対前年度比70.0%の55億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比88.4%の382億円と見込んだ。

2020年度
内需は、製造業の需要減が当面続くと思われるが、年度後半以降に搬送設備や精密機械等での需要が持ち直していくとみて、対前年度比100.0%の327億円と見込んだ。外需は、ロボットや物流、FA関連等での需要が中国等で緩やかに回復していくとみて、対前年度比102.5%の56億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比100.4%の383億円と見込んだ。

11.金属加工機械(製鉄機械)

2019年度
内需は、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、自動車からの需要が減少していることから、対前年度比80.0%の770億円と見込んだ。外需は、アジア、特に中国が減少していることから、対前年度比95.0%の490億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比85.2%の1,260億円と見込んだ。

2020年度
内需は、鉄鋼や非鉄金属からの老朽設備の更新需要が増加するとみて、対前年度比102.5%の789億円と見込んだ。外需は、世界的な設備過剰状態が続く中、増加は見込みがたく、対前年度比90.0%の441億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比97.6%の1,230億円と見込んだ。

12.その他産業機械

※業務用洗濯機、メカニカルシール等を含むが、中核をなすのは官公需向けごみ処理装置である。

2019年度
内需は、官公需向け都市ごみ処理装置の発注時期の遅れに加え、規模の大きな設備更新が少なかったことなどで減少していることから、対前年度比85.0%の3,910億円と見込んだ。外需は、アジアで過去の受注のキャンセル等が発生した影響もあって減少し、対前年度比90.0%の1,464億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比86.3%の5,374億円と見込んだ。

2020年度
内需は、官公需向け都市ごみ処理装置の更新需要が、大型案件を含めて増加するとみて、対前年度比145.0%の5,669億円と見込んだ。外需は、東南アジア等での廃棄物の埋立処理場の逼迫や、廃棄物発電の事業化に関するニーズの高まり等、ごみ処理装置の需要は緩やかに増加し、また、前年度の受注キャンセル等のマイナス分の反動もあって、対前年度比110.0%の1,610億円と見込んだ。
内外総合では、対前年度比135.5%の7,280億円と見込んだ。

日本産業機械工業会