令和の販売員心得 黒川想介 (1)

見込み客に最寄化商品を新たに売り込む秘策は…

令和の時代に入り、目に見えていろいろなことが変わっていくことだろう。制御機器や電気、電子部品を主として商う営業も例外ではない。ますます戦略的営業を心掛けていかなければならなくなる。平成時代を過ごしてきた販売員が身につけた営業戦法や、目指してきた営業は大きく分けると次の三点になる。

一つ目は、顧客のお困りごと解決。そのための商品知識の会得。二つ目は競合を意識した商品の売り込み。そのために差別化された商品知識の会得。三つ目はエンジニアリング力やシステム力、ソリューション。そのための複雑な商品知識の会得。以上のようにレベルの差はあるが、商品知識を会得することが販売員の売り上げを上げる営業となっていた。

平成時代を大ざっぱに通観してみると、①海外への設備投資は活発だったが、その分、国内の設備投資は少なくなった②主力設備の自動化が国内ではほぼ成し遂げられた③設備コストや他の理由で自動化されていない箇所は多々残ってはいたが、生産技術者の仕事は改善やリニューアルを専らとしていた④昭和に比べると生産技術者の数はかなり減少した

 

以上のような顧客側の事情に対応して、機器・部品の販売員は、顧客や見込み客から依頼される案件を一つも取りこぼさないように商品知識に関するレベルを上げていく営業となった。

軍事学者のクラウゼヴィッツは戦場において、攻めの形式より守りの形式は強い戦いの形式であると言った。まさに平成時代は、国内では戦いの強い形式である守備を念頭に置いた営業であった。クラウゼヴィッツの「戦争論」では、防御に関して300ページ割いているのに、攻撃に関しては80ページである。近代戦はむやみに攻撃をしかけても不利だから、有利な防御戦で勝つことを考えた方がいいということだろう。

昭和のように需要が増え続けた時代と違って、市場がある程度安定した平成では労力を使い、攻めて行くより取られないように固める営業であったことになる。だから会社の実力を上げて誘い込んだ案件や新規の見込み客を取りこぼさないよう商品まわりの研修を強化してきたのである。かつて製造設備市場が立ち上がった昭和の勃興期では、まだ会社には案件を誘い込む力も見込み客を引き寄せる力もなかった。その頃は販売員の活躍の時代だった。

 

まだ機器や部品の商品研修がなかったその頃に、アメリカ人ウィリー・ゲールという人の書いた一冊の小冊子が翻訳された。日本語のタイトルは「心理販売術」といった。ウィリー・ゲール本人は全米で一番多くのお墓を売った販売員である。彼は見込み客に見当をつけて、初回のアプローチから数度の訪問を継続し、見込み客の心理を捉えて受注するまでの営業方法を書き上げた。

お墓は当時も高価な耐久材であったし、物が物だけに積極的に欲しがる人は少ない。当時は集客営業などはまだ発達していなかった時代であり、販売員が攻めて行くしか売り上げを上げる道はなかった。だから案件が舞い込んでこない当時の機器や部品の営業の参考になった。

現在の販売員に、お墓を売るにはどうすればいいかと質問してみた。墓石の材質や墓地の条件や価格を話してもあまり意味がないし、一体どうすればいいのかと逆に聞いてきた。墓は特殊だから難しいという販売員もいた。

それでは最寄品化しているスイッチを見込み客に売るにはどうすればいいかと質問した。最寄化したスイッチを売り込んだことのない彼らはいつものように、現在使用中のメーカー型式や困っている事を聞いて特徴や価格の優位性を強調した。これでは見込み客に最寄化したスイッチは売れない。最寄化した商品を販売員の力で売るにはどうやればいいのか。その答えを墓売りのウィリー・ゲールは教えている。

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