ホロニクス・インターナショナルが提言。変わる「洗浄」の常識、汚れを可視化しデータ管理

見えない汚れでトラブル増加
高まる洗浄度検査の重要性

加工後のワーク表面に付着した小さな切粉などの異物が、組み立てや塗装への悪影響、摩耗、動作不良や導通不良の原因になるのはよくあること。それを取り除くために行うのが、いわゆる「洗浄」だが、実はそこにも落とし穴がある。洗浄後の洗浄剤や油、微小な異物の残留だ。

表面に何もないように見えても、実はごくわずかな成分が除去されずに残り、それが異物となってトラブルを引き起こすケースが多発していることが最近分かってきた。そうした事態を防ぐため、洗浄後のワーク表面の残留異物を計測する、洗浄度を測る重要性が高まっている。

 

これまでの洗浄の常識と新たなトラブル

これまでの洗浄工程では、パワフルな洗浄機や、環境に優しく洗浄力が強い洗浄剤を使うことが良しとされ、「何を使って洗ったか」が洗浄の良しあしをはかる基準となってきた。しかし近年、洗浄後に表面に残った成分が原因となるトラブルが相次ぎ、洗浄に対する見方が変化してきている。

例えばある自動車部品で、想定寿命よりもはるか前に故障が相次ぎ、原因不明の経年劣化が問題視された事件があった。

出荷時点では品質検査をクリアし、外観上は何も問題なかったが、数年後に回収した時には、一部の接着部分が著しく劣化。詳しく調べると、劣化が特に進んでいた部分から接着剤とは別の成分が検出され、実はそれが洗浄剤であることが分かった。洗浄後のすすぎが不十分で、成分が残ったまま接着剤を塗布して貼り付けたため、その部分の劣化が早まって強度を下げ、結果として故障が相次いだというトラブルだった。

 

大手メーカーを中心に見直しが始まる洗浄工程

これはあくまで氷山の一角。トラブルにこそなっていないが予備軍は数多く存在する。ワークへの付着物を除去することばかりに目が向き、「加工前と同じ状態まで戻して次の工程に渡す」という基本が押さえられていないことが多く、それが微小な異物や成分の残留が起きてしまう最大の原因となり、大手企業を中心に洗浄工程の見直しが始まっている。

ワーク表面の洗浄度を測定する洗浄度検査装置「SQMX」を展開するホロニクス・インターナショナル(横浜市中区)によると、近年の日本メーカーの品質問題の発生以降、製造業全般で品質管理の厳格化が強まっており、特に自動車や電子機器メーカー等では洗浄工程へのチェックが厳しくなったという。

高橋邦明社長は「大手メーカーを中心に、この洗浄方法だから大丈夫とか、キレイに洗っているとか、感覚的なものでは本当の品質管理にはならないことに気づき始めた。汚れを可視化しデータ化して管理する重要性を感じ、対策が始まっている」という。

 

洗浄度検査機への問い合わせ増加中

実際に同社のSQMXに対する引き合いも増加傾向。SQMXは、洗浄後の表面に残った異物はもちろん、洗浄剤や油分等の目に見えない汚れも数値化し、リアルタイムで汚れを判断できる測定装置。洗浄度の検査方法には、洗浄後の洗浄液から異物を抽出して顕微鏡で観察するやり方もあるが、それだと時間も手間もかかることもあり、即時測定ができるSQMXの評価は高い。

ワークに紫外線を照射し、光励起現象によって放出された電子の量を相対的に計測することで表面の清浄度を計測。汚れていれば放出される電子量は少なく、測定値は低くなり、これによって汚れの度合いを数値化し、結果をモニタリングできる。

インラインで生産ラインに組み込んで使え、価格は200万円から300万円程度。測定は簡単で専門家のようなスキルがいらず、大手自動車メーカーなどがこっそりと導入する例が増えているそうだ。

▲洗浄度検査装置「SQMX」

 

洗浄品質データの有無がビジネスを左右する

また、近年のIoT需要やデータ活用への関心度の高まりとともに、発注元企業が製造プロセスのデータを証拠(エビデンス)として求めるケースが出てきている。これまでは出荷前の品質検査だけで良かったが、最近はプロセスの品質管理を重要視する風潮が強まり、そのデータを添えることを義務付ける企業も出てきた。

洗浄工程では洗浄度測定がそれに当たり、「測定装置を所有し、検査を実施し、数値データを提出して品質を証明できることで受注が有利に働く例も増えてきている」(高橋社長)という。

さらに、欧米など海外企業に製品を売り込む場合、こうしたデータ提出は彼らのビジネスの土俵に上がるための最低ライン。出荷前の品質検査と、製造プロセスでのデータが合わさって、そこではじめて高品質と認められる。数値管理はグローバルの常識であり、海外企業との取引を想定する場合、製造プロセス内における品質管理体制とデータによるエビデンスが重要になる。

 

変わる洗浄工程 洗浄度測定の重要性

洗浄工程は、加工で生じた異物を除去し、原状復帰させることが主目的。ワークに付加価値を与える工程ではないが、製品が完成するまでに何度も行われる重要な工程であり、そこで万が一、異物や成分が残留していると、それが何重にも積み重なり、最終的には不具合を引き起こす原因となる。

それを防ぐためにも洗浄後のワークの清浄度の測定は不可欠。また、加工能力を最大限に引き出すためにもワークの状態を元通りにすることはとても重要だ。

洗浄は洗ったら終わりではない。洗った後、元通りになっているかを定量的に示すことが大切。日本品質をさらに高めるためには製造プロセス内における測定・検査の体制を整えることがカギになる。

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