製造業・世界と戦う担い手づくり エキスパート待望 (14)

若手技術者の視野を広げるためには

若手に限らず技術者というのは自分の専門的な部分にのめり込みがちな性格の方が多いため、仕事の視野が狭くなりがちです。

例えば自分の専門についてはいくらでも話をすることができる一方で、同じ技術でも少し専門領域がずれると全く話ができなくなる、ということはざらにあると思います。

基本的にはこれが大きな仕事の支障になるということはないかもしれませんが、長い目で見た時、若手の段階からあまりにも狭い範囲で閉じこもってしまうと、ある程度年齢を重ねた時に柔軟性に欠ける人材になりかねません。

一般的に、技術者といえどもある程度年齢を重ねれば管理職に進んでほしいのが組織の本音。この管理職になった段階でのマネジメント力は、当然一般的にいう管理能力に加え、多様な技術者を率いていくだけの幅広い専門性も重要になってきます。ここでいう幅広い専門性というのは詳細を知っているということではありません。

自分の専門性以外のことについても興味を持ち、部下のいうことに耳を傾けることで部下の力を引き出し、組織としての力を発揮するために必要な環境を整えるための最低限の知識のレベルです。

このような知識を得るために必要なのは何といっても好奇心。そしてこの好奇心を将来持つために重要なのが若手技術者のうちにどれだけ視野を広げられたのか、ということにつながってくるのです。

 

■若手技術者の視野を広げるために効果的な社内の取り組み

本来視野を広げるためには同業他社、または他業界の「同年代技術者との交流」です。

しかし機密事項の多い技術職ではなかなかこのような機会は生まれず、また若手技術者はそもそもどこまでが機密で、どこからがそうでないのか、といった判断さえ難しいはずでオープンな議論はできないと思います。

そこでお勧めなのが「自社内で異なる部署の人物と交流する」というものです。自社内というのがポイントです。

同じ社内であるということは話すことについて基本的に制限はありません。相手に理解してもらえるか否かは別として、機密事項も話せます。そして同じ社内でも部署が異なれば別の企業のように文化も人も違うはずです。さらに社内の異なる部署の方々がどのような仕事をしているのか、ということを垣間見ることで自分の仕事の陰には多くの方々が関わっているのだ、ということも理解できるのではないでしょうか。

このような交流を若いうちに行うのが非常時重要な刺激となり、将来的に組織全体を俯瞰してみるという力につながっていくのです。

 

■社員旅行を異業種交流に活用する

そんな中、社員旅行が見直されているようです。従来の慰安旅行ではなく、社員同士の交流を深めるためのイベントを主体としたエンターテインメントの色が強くなっているとのこと。マスコミでも紹介されており、イベント企画企業もあるようです。

このての社員旅行は強制をしてはだめで、参加したいな、と思わせることが重要であると考えられます。いずれにしても一考の余地はあるのではないでしょうか。

特に中小企業や大企業でも事業部の小さな場合は、上記のような取り組みは結果として若手技術者の視野拡大に非常に効果的となる可能性もあります。若手技術者の方々が安心して話ができ、さらに異業種の方と交流することで視野を広げられる。そんな取り組みも折を見て設定してはいかがでしょうか。

若手技術者の視野拡大に対する取り組み検討の一助になれば幸いです。

 

◆吉田州一郎(よしだしゅういちろう)
技術者育成研究所所長・FRPコンサルタント。入社2~3年目までの製造業に従事する若手技術者に特化した法人向け人材育成プログラムを提供し、自ら課題を見つけそれを解決できる技術者育成サポートを行う。

東京工業大学工学部高分子工学科卒業後、ドイツにある研究機関Fraunhofer Instituteでの1年間のインターンシップを経て同大学大学院修士課程修了。世界的な展示会での発明賞受賞、海外科学誌に論文を掲載させるなど研究開発最前線で業務に邁進する一方、後身の指導を通じて活字を基本とした独自の技術者人材育成法を確立。その後、技術者人材育成に悩みを抱えていた事業部から、多くの自発的課題発見/解決型の技術者を輩出した。

主な著書に『技術報告書
書き方の鉄則』、『CFRP~製品応用・実用化に向けた技術と実際~』(共著)など。

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