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研究開発現場 マネジメントの羅針盤 忘れがちな正論を語ってみる(5)下

組織変更だけでなく 構造的弱点を補う施策を

■組織構造を変更するときは併せてその構造的弱点を補う施策を講じるべき

組織形態には、それぞれメリット・デメリットがあり、唯一絶対的にこれがいいというものはありません。メリットは、組織変更をすることで、おのずと享受できるものです(できるはずです)。今、“おのずと”と書きましたが、この“おのずと”というのは、組織構成員の多くが組織変更のねらいや意味合いを理解し、その組織構造で期待される役割を果たすことで、もたらされるということです。

皆が組織変更の意味するところを理解していない場合には、“おのずと享受できる”ことにはなりません。しかし、組織構成員が組織変更の意味がわからないという状態は、かなりひどいマネジメントであって、それほど多くみられるわけではないので、ここでは問題にしないことにします(多くないと信じたいという希望も込めて)。

組織変更時にマネジメントが意識するべきことは、新たな組織構造に伴って構造的に発生するデメリットに対して、何らかの補完施策を講じることです。たとえば、組織を技術分野別に括った場合、顧客との距離が遠くなってしまうなどのデメリットが生じがちです。そこで、マネジメントがなすべきことは、そのデメリットを小さくする施策(たとえば、エンジニアに顧客訪問をすることを促すなど)を講じることです。組織変更は万能ではありません。いや、組織構造変更の意思決定だけでは、必ずデメリットが悪い形で問題として露呈してしまうことを恐れるのが、ある意味健全なマネジャーと言えます。マネジャーは、組織構造を変更したときには、併せてその構造的弱点を補う施策を講じるべきなのです。

■組織構造の弱点を補うメッセージが必要

もう一点、組織構造とマネジャーのなすべきことについて、「少し、おかしいな」と思っていることを書きます。

たとえば、事業部から委託費をもらって研究を行うような組織構造のコーポレートラボがあるとします。このような構図にあるコーポレートラボのマネジャーが、「仕事をもらうために御用聞きになっちゃうんだよね~」とか「事業部から下請け的な仕事を押し付けられるんですよ、しかたがない…」などと、嘆いていることを耳にすることがあります。しかし、それはおかしなことです。何を被害者みたいなことを言っているのでしょうか。マネジャーの仕事は、このような構図にあるときに、「事業部が次に欲しくなる技術を考えて、提案しよう! そのためには、われわれラボが、顧客のことをもっとよく見よう! 新たな技術があれば解決できる顧客の悩みを見つけよう!」と、メンバーを鼓舞・指導していくことです。

逆もしかりです。事業部からの“紐付き”の研究費のしばりがなく、コーポレートから交付金的(?)に研究予算がもらえる組織構造であるとします。こういう自由な研究所のマネジャーの中には、「研究所は“象牙の塔”。どうしても浮き世離れの研究になるんだよね~」とか「研究のための研究、学会発表を目的とする研究になりがちなんだよね~」などと、緊張感のないことを言っている人がいたりします。何を評論家のようなことを言っているのでしょうか。マネジャーの仕事は、このようなときに、「誰も気づいていないような新たな事業の種となるような研究に取り組んで、いつの日か、あらたな事業部を立ち上げよう! われわれは、未来の社会を創造していくんだ!」と、メンバーの使命感を奮い立たせていくことにほかなりません。

組織構造から発生しがちな状況に甘んじていては、マネジャーの存在意義がありません。陥りがちな問題状況にならないように、現場に対してメッセージしていく、介入していくことこそが、生身の人間としてのマネジャーの仕事なのです。

■塚松 一也(つかまつ かずや)R&D組織革新センター チーフ・コンサルタント

R&Dの現場で研究者・技術者集団を対象に、ナレッジマネジメントやプロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとして、魅力的なありたい姿を真摯に構想し、現場の組織能力を信じて働きかけ、じっくりと変革を促すコンサルティングスタイルがモットー。ていねいな説明、わかりやすい資料づくりをこころがけている。

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