【ボックス・ラック特集】ⅠoT関連需要加速 インフラ整備・情報化 市場拡大へ追い風

ボックス・キャビネット・ラックの需要が高水準で続いている。各種社会インフラの老朽化に伴う大規模修繕、省エネ化対応や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けたスポーツ施設・商業施設・ホテルの建設、交通インフラの整備など、さらには2027年開業を目指すリニア中央新幹線建設などの関連投資が活発化してきている。また、IoTの言葉で代表される情報・通信技術を活用した新たなもの作りや、自動車、携帯電話などの通信データの増大に対応して、データセンターの立地も旺盛に継続して需要を支えている。

東京五輪・リニア関連投資活発

ここ1、2年でIoTという言葉が一挙に定着するとともに、情報化投資が急速に拡大している。IoT関連機器の収納用、AI関連機器の収納用、電力消費量の増大に伴う熱問題対策が課題のデータセンター用の市場が拡大している。

また、鉄道関連では回生ブレーキによって発電された電力をいったん発電所内の蓄電池に蓄電した後に活用するスマートグリッド運用などの需要が生まれ、発電された高圧な直流(DC)電気の制御や、低消費電力制御のニーズに対応する受配電盤、制御盤などの需要が増えている。

さらに、次世代交通システムに対応する燃料電池自動車(FCV)、電気自動車(EV)の普及に向けて、EVの充電ステーションや水素充電ステーション設置時におけるボックス・キャビネット・ラックの需要も期待されている。首都圏直下・東海・東南海地震などに対処するための耐震、制震、免震性を高めたラックの需要も高まっている。

ボックス・キャビネット・ラックの最近の技術傾向として、熱対策、地震対策、軽量化、省施工、防塵・防水性、セキュリティなどに重点が置かれた製品が開発されている。顧客の海外進出、輸出などの動きに合わせて国際規格への対応なども不可欠になってきている。

ボックス・キャビネット・ラックの設置にあたっては、設置場所の環境を考慮しながら製品の選定を行う事が、製品を安全に使用するための重要なポイントになる。

特に屋外にキャビネットを設置する場合、収納される電気・電子・制御機器は、設置場所の周囲温度が高いと誤動作を生じたり、寿命が短くなったりする可能性が高い。直射日光による内部温度上昇を抑制するため、建物北側や遮へい物の陰、風通しの良い場所への設置が望ましい。

直射日光が当たる場合、明度が高い「白」に近い色は、内部温度が上昇しにくい傾向にあり、逆に明度が低く「黒」に近い色は内部温度が上昇しやすい傾向にある。外装色が選択可能なら内部の温度上昇を抑えるために明度の高い色の方が良い。

取り組み進む熱・地震対策

熱対策としては、屋外用では遮光板を設け直射日光による温度上昇を抑えたり、扉やボディーに換気口を設け、放熱効果を高めたりしているものがある。パンチング材の採用により通気性を持たせ、天井面のスリット加工と突き出し扉の上面スリット加工により、天井コーナー部の熱がスムーズに排出され、背面から抜け出せずに回り込んだ熱が突き出し扉の傾斜面からスムーズに排出される仕組みが取られたりしている。

材料は、通常の使用状態で生じる機械的、電気的、熱的、化学的影響および、湿度の影響に耐えるようなもので、適当な材料の使用、メッキ、塗装、その他の方法で有効にさび止めするという事になっている。

盤の塗装は、一般に美観、防食の効果を期待して施される。使用場所によっては厳しい腐食環境下にさらされ、その防食性能が盤自体の寿命に関わってくる。海岸からの距離が約300メートルを超え1キロメートル以内は耐塩仕様、海岸からの距離が約300メートル以内の場合は重耐塩仕様にする必要がある。また、酸性ガスが発生する場所は耐酸仕様、アルカリ性ガスが発生する場所は耐アルカリ仕様にしなければならない。材料のスチール、ステンレス、アルミ、樹脂などには、それぞれ特徴がある。スチールは重いが、耐久性に優れており、多種多様な機器を収納できるシステムラックなどにも適している。ステンレスは、耐食性、耐候性に優れる。樹脂製のボックスは、軽くて絶縁性に優れ、さびにも強い。

地震対策としては、耐震、免震、制震がある。耐震は容易な地震対策の一つで、地震の揺れに耐え、構造物の倒壊を防ぐ。耐震対策を施したラックは強固で倒壊する心配はないが、地震時の機器への負担が一般的に大きくなり、機能保護には対応していない。免震は構造物と設置面の間にベアリングやすべり材を設置し、構造物に直接揺れを伝えない。制震は、超高層ビル・住宅や橋梁などに実績がある揺れを吸収する最新技術。制震ラックは制震ダンパーが変形することにより、地震エネルギーを吸収し、ラック内の揺れ、および変形を低減し、連続する大地震にも効果を発揮する。

安全規格合致など国際化も

ボックス・ラック・キャビネット市場では、IT機器、インターネット、LAN、CATVなどに用いられる通信機器を収納するためのシステムラックが、データセンター・サーバルームなどで大量に採用されている。

サーバラックは、サーバ・ストレージなどを収納するためのラックで、ケージナット対応のマウントアングルが前後に装備され、ラックマウントタイプのサーバを確実に固定できる。大量のケーブルを効率的に管理して、アクセススペースにより運用の効率を向上させるタイプもある。

ネットワークラックは、LAN構築用のネットワーク機器を専用に収納するラックで、外装パネルの取り外しやオプションによる配線処理を考慮した仕様になっている。

大幅な需要増が見込まれるIoTを、都市や道路、公共空間や屋外施設などの、さまざまな屋外環境で構築するための熱対策を施したボックスも今後市場が伸長しそうだ。

ファン、避雷器、電源、監視カメラ、センサやデバイスをIoTシステムと接続する装置などを内蔵し、電波透過性にすぐれた高強度・難燃性樹脂、高い防水・防塵性と内部機器熱対策で内蔵機器を守っている。

HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と連携して家中のエネルギーの「見える化」を進める通信計測ユニット用のボックス、地震時の防災機能を高めた感震リレー付ホーム分電盤関連も今後、需要が見込まれる。

ユーザーの利便性を高めるために、制御盤用キャビネットの穴加工・見積もり・発注などが、web上のソフトで簡単に行えるサービスの提供も各社で始まっている。納期も短縮できる。

国際化に関しては、ボックス・キャビネット・ラックにおいても安全規格の合致、輸出、国内外仕様統一の要求が高まっており、欧州のCEマーク、米国のULマークなどの取得も進みつつある。

ボックス・ラック・キャビネットは分電盤、制御盤、弱電機器収納など使用目的が幅広く、一般家屋、学校、オフィス、工場、病院などさまざまな環境に設置されている。今後もIoT機器関連、AI関連、耐震ラック、HEMS関連、ネットワーク・移動体通信などで市場拡大が見込まれる。

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