サーボモータ国内外で市場回復、好転

サーボモータの市場が回復に転じている。国内では半導体製造装置やロボット、工作機械の堅調な需要拡大、海外では中国市場の回復などが主要因で、メーカー各社は増産に追われている。しばらくはこの基調が続くことが予想され、高水準の伸びが続きそうだ。製品的には高分解による高速・高精度制御や、簡単な調整作業、安全対策などを中心に取り組まれて、また用途ごとの専用機種を開発する動きも強い。

半導体製造装置・ロボット・工作機械 堅調な需要拡大

日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産統計によると、サーボモータの2016年度(16年4月~17年3月)の生産額は957億円で前年度比102.9%と、プラスに転じた。15年度92.7%と大きく減少したが、上昇に転じたといえる。17年度は106.5%の1019億円と2年ぶりに1000億円台回復を見込んでおり、過去何度か山谷を経験してきたサーボモータ市場にとって、今は上昇途上といえそうだ。

現在のサーボモータ市場の好調を支えているのは、インダストリー4.0やIoTなどの言葉で代表される情報技術やものづくり変革の潮流が大きい。今、絶好調の半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置の生産は、スマホやタブレットPCなどの生産拡大、車の自動運転に絡んだカーナビゲーションシステム、ドライブレコーダーなどでセンサやカメラなどが旺盛な需要となっていることが大きい。スマホやタブレットPCは半導体やFPDの塊ともいえる存在であり、車もまた半導体をはじめとした電子機器が大きな影響力を持つ存在になっている。

半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置の生産は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)の調べによると、16年度が前年度比23.1%増の1兆9805億円と、近年にない高い伸びとなっている。世界市場でも拡大しており、SEMIの調べた16年の半導体製造装置販売額は、412億4000万ドルと前年比13%増加し、受注額も同24%と大幅に伸びている。

そして、国内では深刻な人手不足、海外ではアジアの新興国を中心とした人件費の上昇から生産の自動化投資が急速に増えている。中国では人件費の上昇に加え、工場ワーカーの不足も加わり、自動化は待った無しの状況といわれ、ロボットなどの自動化機械に置き換えが進んでいる。

国内でも人手不足に加え、自動機やロボットでないと人では作れないものも増えており、自動化投資が取り組まれている。ロボットは産業用に加え、非製造業でもホテルでのサービスや外食産業の人手補完用、警備や清掃などといった幅広い用途で試行しながら普及が進んでいる。

日本ロボット工業会(JARA)では16年度の生産を過去最高の7000億円、17年度は7500億円まで拡大する見通しを立てている。ロボットは極端にはサーボモータとセンサで構成されているともいえ、ロボットの伸長はサーボモータの伸長ともほぼ比例する。ここ数年で2倍ぐらいまでに増加すると予想されているロボットの需要が、サーボモータの市場拡大のけん引役になることは確実だけに、ロボットの果たす役割は大きい。

そして、停滞していた工作機械の受注も反転して増加基調になっている。16年12月からは4カ月連続で前年同月を上回っており、復調が確実になっている。15年、16年と2年連続減少となっていたが、日本工作機械工業会では17年の出荷額を1兆3500億円(前年比8%増)と3年ぶりにプラスを見込んでいる。中国市場が回復基調に入ってきていることに加え、スマホ、自動車関連も引き続き旺盛な設備投資が計画されており、急速な回復が予想されている。

米国市場もトランプ政権の製造業の国内回帰に向けた政策で、自国内での生産を促す取り組みを強めていることで、自動車関連を中心に、工場の立地や生産拡大などの計画を発表しているだけに、工作機械などの需要増につながる設備投資効果が期待できる。

このところ為替が比較的安定していることから、極端な海外生産シフトは見られない。基本地産地消が基本にしながら国内、海外とも生産を強化するサーボモータメーカーが多い。

高速・高精度 制御操作性を重視

サーボモータの需要はこのほかに、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレーターなどのアミューズメント関連、回転ずしのベルトコンベヤー制御などでも採用が進んでおり、新たな市場を形成している。

サーボモータ各社は、使いやすさに重点を置いた製品開発を進めている。複雑な制御調整が簡単にできるオートチューニング機能、機械の振動を抑えながら短時間で位置決めを行う制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、さらに効率的な生産を進めるネットワーク化対応などが開発のポイントとなっている。

オートチューニングでは、ワンタッチで機械の共振制御などにも対応できるよう、各社が独自の機能を搭載している。制振制御技術ではアーム先端の振動に加え、装置本体の残留振動も抑制できる低周波抑制アルゴリズムを搭載し、さらなる高精度調整を可能にしている。

高速化では、速度周波数応答2.5kHz、22ビットロータリーエンコーダの標準搭載で、400万パルス/revを超える高分解能製品もラインアップされ、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を可能にしている。整定時間を短縮することは、業務の効率化につながり、機械・システムの生産性が向上する。

また、サーボモータの制御に関しては、指令応答特性を高めるフィードフォワード機能(FF機能)と、外乱抑制特性を高めるフィードバック制御(FB制御)があるが、FF制御とFB制御を完全に分離して制御を行うことができる、2自由度制御方式を搭載したサーボモータも使われている。

両制御を完全に分離することで、より高速・高精度なモータ制御が実現する。例えば電子部品実装機では、部品搭載ヘッドの振動を抑えた高速実装タクトの実現や、金属加工機では、摩擦や粘性の影響を少なくし、切断面を滑らかにするといった高精度な加工が実現できる。

さらに、1台のアンプで最大3台(3軸)のサーボモータができる機種も評価が高まっている。

最近注目されているのは、アンプの診断機能を使ったサーボモータの予知診断機能である。サーボモータの稼働時間などを計測して、故障などを予知することで稼働停止などに伴うトラブルを未然に防止することにつながる。

ネットワーク対応では、EtherNet技術をベースに、通信速度150Mbps全2重の高速独自ネットワークを駆使し、リアルタイム通信性能や、自由度の拡大が図られている。

EtherCAT、MECHATROLINK、SSCNET、SERCOSなどEtherNetでサーボモータとのネットワークが可能な製品も増加して、一層使いやすさが増している。

セーフティ化対応も著しい。サーボモータに関連する規格として、ISO13849-1、IEC61508シリーズ、IEC62061、IEC60204-1、IEC61800-5-2などがあるが、このうちIEC60204-1は、機械の電気装置に関する要求事項を定めた規格で、停止の制御機能について定義されている。

可変速ドライブシステムの機能安全規格であるIEC61800-5-2への対応も行われている。安全規格への対応は特に、自動車製造関連の用途で求められることが多く、サーボモータ各社のほとんどが対応を行っている。

このほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したタイプや、IP67対応品も増えている。

低剛性への対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動したい取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。

小型・軽量化の例では、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給するようにすれば、機構が単純になってコンパクト化が可能となる。故障の発生や外的トラブルの要因も減らせ、低コストや省資源というメリットにもつながる。

機器の小型化では、リニアサーボモータの動向も注目されている。回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べ、推力が大きく、短ストローク移動で加減速の繰り返しなどに強みを発揮できる。特に、小型で速い動きが求められている機械などに最適である。

「オールインワン・サーボモータ」として、ドライバ、エンコーダ、モーションコントローラ、シーケンサ、ネットワークまでを1台に収納した製品は、配線作業が不要で、省スペース化とともにトータルコストダウンが図れる。

搬送機械、繊維機械などでは、1台のマシンに使用するモータ数が多く、特にサーボアンプの小型化や各軸のゲインチューニング工数の短縮が求められる。このため、回路基板をワンボード化するなど、高密度実装と最適放熱設計での超小型サーボアンプもある。

センサレスの動向に注目

今後注目されるのが、センサレスサーボモータの動向だ。インダクションモータの付加価値を上げたともいえ、エンコーダなしで電圧および電流からモータの速度と位置を検出して、高精度な速度制御や簡易な位置決め制御が実現できる。しかも負荷変動(0~100%)に関係なく安定した速度で運転や位置決めを実現でき、位置決め精度も高い。エンコーダを使用しないため、小型化が可能で機械の省スペース化にもつながる。また、部品点数が少なくなることで、トラブルも少なくなり、メンテナンス性も良くなる。

IoTと連携したものづくりが志向される中で、装置・システムでのサーボモータの果たす役割はますます高まっている。特定の機能に特化した開発も志向されつつあり、また、ネットワークの特性を生かしたサポート対応も期待される。
次のステップアップに向けた取り組みがますます加速しそうだ。

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