IoTが導く次世代製造業 注目浴びるIndustrie4.0、Industrial Internet(後編)

2016年6月29日

【製造業のサービス業化-ビジネスモデル転換の可能性-】

■変貌する製造業

Industrie4.0とIndustrial Internet、並列に取り上げられることが多いが、中身をみると、違いが感じられる。

Industrie4.0は製造業の根幹である生産方式に対する挑戦である。Industrie 4.0では変種変量生産が目標とされている。一般的にはトヨタシステムとして多品種少量生産が確立し(※多品種を少量ずつ、トータルでは大量生産を維持するシステムであることに注意)、その後はセル生産方式、モジュール生産方式などが普及してきた。Industrie4.0は第4次産業革命と標ぼうするものの、いまだその全体像は明確ではない。生産方式の改善を超え、革命と称するだけのインパクトを実製造業世界に構築できるか、今後の動きには注視が必要である。

他方、Industrial Internetが描く将来像は、製造業のサービス業化である。例えば、発電機メーカーは、これまでは発電機を販売し、購入した企業がそれを運用していた。しかし発電機にセンサーが設置され、メーカーがインターネット経由で詳細にその情報を入手できれば、故障診断や予知ができるようになるかもしれない。

そうなれば、ユーザーは、発電機の利用料だけを支払い、発電機資産の持ち主や運用責任はメーカーが引き受ける、といったサービス形態も可能になってくるのだ。

つまり、Industrial Internetは製造業のビジネスモデルを大きく転換する可能性を秘めたアプローチということができよう。

■重要なのはセンサーよりソフトウエア

世間ではIoTといえばセンサーへの注目が集まっているといえよう。Industrie4.0やIndustrial Internetにおいても同様で、多様なセンサーが多数搭載され、そのデータの収集や分析を通じた技術革新が焦点となっている。

そのこと自体はもちろん同意するのだが、矢野経済研究所が同分野で注目しているのはセンサーでない。最終的に勝負を決するのはソフトウエアだと考えている。現在のIoT×製造業においては、ソフトウエアの議論が不足しているように感じる。

例えばMES。製造実行システムのことであるが、ITベンダーに勤務する方でも耳にしたことのない人が多いだろう。MESは製造現場のデータをERPやPLMなど上流層へと引き上げる段において非常に重要な役割を担うのだが、その導入率は特に日本では非常に低い。

現在でも、製造現場側と管理側とで情報連携がシステム化されていないケースはかなりあり(むしろ連携している方が少ない)、そのような中、単純に製造現場にセンサーを設置することにどれほどの意義があろうか。IoTの導入事例が雑誌やインターネット記事に多数でているが、製造工程の一部にセンサーを取り付け、単にデータをサーバに取り込んでIoTと騒ぐのはそろそろ終わりにすべきだろう。

現実問題として、重要なのは全体最適をはかるために、どれだけ可視化できているかである。もし今、現場側で入力したデータを、現場限りで利用しているならば、まずはそれを全社レベルでウオッチできる状態を構築する方が、新たなセンサーを導入するよりはるかに重要なのではないか。

現在、矢野経済研究所では、上記のような視点も踏まえながら、「IoT×製造業」をテーマとしたマーケティングレポートを発刊している。

■矢野経済研究所 主任研究員 忌部 佳史
2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士