LED照明特集 照明の主役へ急伸 産業用への採用進む

LED照明の用途が産業分野にも広がりを見せている。制御盤内や加工機械・装置の内部照明用として採用が増えているためだ。色の種類もオレンジ色などカラフルになってきている。省エネ・長寿命などの大きな特徴を背景に照明の主役になってきており、今後も産業分野での採用が増えそうだ。

■用途ごとの表示色多彩に
日本照明工業会による自主統計(参加23社)によると、2014年4月~15年3月まで、1年間の照明器具全体の出荷金額は6707億7200万円で、このうちLED器具は4746億1600万円と約70%を占めており、前年に比べ約10ポイント上昇した。LED器具は、前年同期比でも15.9%増とLED器具を除いた照明器具全体の伸びが減少する中にあって、際立っている。LED器具は台数ベースでも同21.6%増と大きく増えているが、LED器具の単価が下がってきていることから金額以上に台数の伸びが大きくなっている。

東日本大震災以降、省エネへの意識が一段と高くなり、節電対策の切り札としてLED照明への切り替えが進んだ。

照明器具メーカー各社は、政府のLEDへの切り替え方針を受け、白熱電球の生産終了をはじめている。また、水銀による環境汚染を防ぐための「水俣条約」により、20年以降は電池、蛍光灯(水銀を一定量以上含有)、高圧水銀灯、スイッチ・リレー、温度計など計測機器の製造、輸出、輸入が禁止される。大規模施設や屋外施設には水銀灯が多く使われており、これらも順次、LED照明や無電極ランプなどに置き換わっていくものと見られる。

LED照明の特徴は、省エネ性に優れていることはもちろん、高輝度・長寿命・高信頼性・低発熱性・耐衝撃性・瞬時点灯などが挙げられ、その特徴から従来型の照明器具が持つデメリットを補うことができ、家庭用から産業用まで幅広い分野で採用されている。例えば、LEDの発光体は非常に小さいため、マイクロアレイレンズと組み合わせることで、強い指向性の照明が開発されている。レンズの種類を変えることで、照射角度を選択でき、空間照明や、スポット照明などに使われている。照度も年々増しており、定格光束6万ルーメンを超える器具も登場している。一般家庭用の40W電球が500ルーメン程度といわれているので、約120個分の明るさを1台でまかなうことができる。

■過酷環境下の耐久性重視
LEDにも寿命があり、経年劣化により輝度が落ちてくるものの、一般的な照明用LEDでは、70%期において想定寿命6万時間(24時間連続点灯した場合でも7年弱)の寿命があるといわれており、一度設置すれば交換の手間が省けるばかりか、電球廃棄の手間もなくなる。省エネ効果としては、同じ明るさでも一般的な白熱電球と比べ、8分の1程度、蛍光灯と比べても2分の1の消費電力といわれており大幅な省エネが期待できる。

LED照明は、家庭用から店舗やビルなどの業務用と採用が増え始め、現在は工場や工場で使用される機械装置向けの産業用で普及が進んでいる。産業用では、機械の表示灯光源としてLEDの採用が進んでいるが、照明としてのLEDはこれからである。制御盤や配電盤などの内部照明や、加工機械・装置の本体内部の照明用である。

産業用LED照明は、家庭用や業務用に比べ一段と厳しい使用環境の条件が求められる。このため、こうした用途に特化した専業メーカーが発売していることが多い。例えば、「マイナス40℃対応品」は、即時点灯が可能で長寿命、省エネであることから低温倉庫などで活用されている。さらに、食品工場、金属加工工場などの厳しい環境でも使えるよう、耐水・耐油性能を備えたタイプも登場し、「IP67G」「IP69K」などの、通常の防水はもちろん、耐油性能や、水の直接噴流にまで耐えられる製品も登場している。プラントなどの防爆環境でも使えるタイプもバリエーションが増えてきており、ゾーン1、2に対応した水素製造プラントや水素ステーションでも使用できる製品、非点火防爆構造で軽量化を図った製品などが登場している。

一方、課題としては、素子自体が熱に弱いため、大型照明の場合は放熱対策が必要になることが挙げられる。大型の放熱フィンや、放熱用のファンの機構が必要になり、機器の重量増加、灯具のメンテナンスの発生などが問題になっているが、今後の技術革新による改善が期待される。

また、点光源のため直視するとまぶしく感じてしまう問題もあり、各社面発光技術や配光技術など、蛍光灯に類似した自然な光になるよう開発を強化している。物が自然に見える「演色性」も課題だったが、年々改良が加えられている。

■高天井に設置されたLED照明
爆発の危険性が高い場所では、防爆タイプのLED照明の採用が進んでいる

■植物工場など活用拡大
今後の用途として、植物工場、集魚灯など新分野での活用も広がっている。

植物工場では、育成している植物に最適な波長の光を当てることで、収穫期間の短縮を可能にしている。

集魚灯では省エネによる燃料費用の軽減はもちろん、光が水中の奥まで届き、調光・瞬時点灯消灯ができる特性を用いて魚群の誘導を行い、魚が暴れることなく、傷が付かない状態で水揚げすることに貢献している。

LEDを含めて照明制御の方法も注目されている。センサと組み合わせて太陽光や在席などに応じた明るさ調整を行うことで電力消費を抑えられる。また、ビル管理システム(BEMS)と連動して、ビル全体の消費電力が目標値を超えた場合、照度センサの基準値を下げたり、 天空照度を測定し、ブラインド角度、照明器具調光率制御といった使い方が可能になる。この制御方法では、デファクトスタンダードを目指した取り組みも進んでいるが、地域、メーカーよって対応が異なり、今後の動向が注目されている。

産業用LEDの市場開拓はまだこれからであることから、各メーカーは用途ごとにきめ細かな特徴をアピールして採用に取り組んでいる。産業用は、使用環境が厳しいこともあり、価格より機能を重視する傾向にあり、今後も拡大基調で進展するものと予想される。

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