日本の製造業における生産計画の実態 (11)

今回の取材を通じて、「日本の製造業」の現場力がまだまだ通用することを感じた。「すり合わせ」という言葉に代表される技術は、簡単には真似できないことも痛感した。半面、どんどん新しい取り組みをしていく諸外国の動きに、抜かれていくのではという危機感も、現場からの声として聞こえた。

日本から「製造現場」がなくなり、「製造技術」が廃れていくことはないと信じたいが、「インダストリー4・0」に代表されるテクノロジーは、今後20年間で400兆円もの潜在的利益を生み出すとも言われている。残念ながら日本は諸外国に遅れており、先頭を走っているとは言い難い状況にある。

3DCADが出始めた頃、多くの企業では「工数がかかりすぎる」「2Dで十分」「自社で採用するメリットはない」などと、初期投資を惜しんで導入がなかなか進まなかった。特に現場の技術者にとっては、新しい技術を覚える必要があり、既存の与えられた環境でベストを尽くす方を優先してしまう傾向があり、3D
CAD黎明期に導入に踏み切った企業は、トップの英断による投資が多かったと聞いている。ところが、現在ではどうだろう。製品、設備の設計は3Dで行うことが当たり前になった。金型へのデータ流用、モデルを作成する前の形状検証、製品を組み合わせた状態での図面展開などの設計図としての流用はもちろん、カタログ掲載写真の代用など、設計図の範囲を超えて活用されており、費用対効果は論ずるまでもない。

取材を通じて、生産管理シミュレータに代表される各種ソフトウェアも、3D
CADと同じ歴史をたどると強く感じた。現場の技術者にとっては、現状の仕組みでも生産自体に支障はなく、ソフトウェアの導入により、新しい技術を覚える必要が出てくる。ソフトウェア導入のメリットを感じていたとしても、日々の仕事に忙殺され、稟議を上げるための工数を惜しんでいるのが現状である。

日本企業では、まだ一部トップの英断により導入している企業が効果を実感している段階にあり、これから普及段階に差し掛かろうとしている(欧米ではすでに普及し始めている)。

取材で訪問したほとんどの企業では、数百万円の投資で、在庫削減や残業の削減により数千万円の回収が早期に見込めることから、普及も時間の問題であると考える。

今後、生産拠点の海外展開はもちろん、製品や装置に使用される部品もよりグローバルに調達されていくことは明白だ。生産人口が減少していくことがわかっている日本においては、労働力についてもグローバルな人材受け入れや、女性・熟年層の労働力活用などが必要になってくる。その時に現在以上の生産性を担保するためには、従来とは異なる仕組みづくりが必要な時に来ていると考える。次代の日本の製造業をさらに強いものにするために、経営層の人には資本主義の基本に立ち返って、シミュレーションソフトに限らず、多くの見返りを得るための新たな投資を期待したい。

最後に本連載執筆にあたり、ご協力いただいた皆様に心から感謝申し上げる。特にアンケート、取材にご協力いただいた各位には、貴重な時間を割いていただいたことを深くお礼申し上げる。

この連載は以下のHPから、PDFをダウンロードすることが可能。(http://www.automation‐news.jp/2014/10/1653/)

▼企画‥株式会社FAナビ、オートメ新聞株式会社▼協賛‥株式会社FAプロダクツ▼取材協力‥株式会社構造計画研究所、他ヒアリング企業各社。
(おわり)

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