不連続線線に異状なし 黒川想介 (11)

営業マンが苦労の末に売り上げという果実をもぎ取るまでには、数々のプロセスがある。見込み客の場合は、相手との関係づくりから入らなければならないからやっかいだ。相手が必要としているものにたまたま当たれば、必要な事物を介して関係づくりまでもっていける。必要と感じてもらえなければ立ち往生してしまうだろう。良好な関係づくりができている顧客であっても、部品やコンポ商品を受注するまでには手順を踏んだ情報収集が必要だ。

製造現場なら、設備投資はどこに向かうのか。製品設計なら現在構想中の開発設計商品はどんなものなのかを探り出し、最終的に営業マンが扱う部品や機器商品はどこに使われるのかを見つけるために、いろいろな手順がいる。手順を踏んだ上で適切な商品の紹介売り込みをし、受注に持ち込むのが営業プロセスの王道である。遠回りしているように見えるが、実は先手を取っているし、営業能力向上にもつながっている。

昨今の営業マンは諸々のプロセスを飛び越えて、見込み客に対しても一律に部品や機器商品の紹介売り込みをやってしまう。その結果、関係がうまくいっている顧客からは同じような競合商品を使っている、あるいは使ったことがあるという話が出てくる。それが商談テーマ発見の主なやり方になっている。

なぜ、そのように営業の王道から外れ、諸々のプロセスを飛び越える営業になっているのか。理由はいくつかある。その一つ目は、成長期の営業は回りくどいことをしなくても、直接的に部品や機器商品の紹介兼売り込みでよかった。つまり忙しさで騒然としていた技術者の現場では、そのやり方を歓迎していた。二つ目は、現在の営業の指導層にいるベテランは、そのやり方で育ってきた。三つ目は営業を経験すると、まず相手と話ができる関係づくりをしなければならないことを知る。そして、その相手と心理的な距離を詰めるやり方は商品PRだと思っている。四つ目は、相手の事業内容はどの業態区分にある客先かをよく理解しないで、一律的に商品やアプリケーションの紹介から入る。以上のことがプロセス無視の理由である。

現在の日本の産業は新興国のような騒然とした成長段階にない。だから物づくりの設備が成長期のように日々、新たになることはない。それでも企業は成長を止めれば失速してしまうので、物づくりのための設備投資は欠かせない。

ただ成長期と成熟期では社会環境が違うから、物づくりにおいて製品や製品をつくる現場は成長期の延長ではないことは確かである。

そんな不連続の時代に入って十数年が経過している。製造の現場では、海外での生産拡大の路線は決まっていても、国内の路線をどうするかは明確ではなかったように思える。しかし近年になり、それぞれの業態別や企業規模別で国内路線の方向を固めた挑戦が始まっている。

それでも、まだまだ従来の延長線でやってきたことをさらに強化すればいいと考えている企業や技術者も多いので、営業側も従来の営業を強化すればいいと考えがちになる。それは大勢的には間違いである。

近年、物づくりの中核を担う技術者を取り巻く環境は大きく変わってきている。製品設計者の工数はますます短くなり、新技術の習得や新製品の構想に追われている。ありきたりの部品やコンポ品をもって一律的にアプローチしても、会ってくれないだろう。製造現場では省力・自動化は一巡してしまい、設備投資の方向もそれぞれ違うし、生産技術の役割も変わっているので、同じ調子でのアプローチは無意味のことが多い。
(次回は12月17日付掲載)

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