日本の製造業における生産計画の実態 (5)

前回、ライン能力の検証が行われない背景として大きく3つの要因を挙げた。(1)時間の不足(設計後、検証している時間がない)(2)信頼性の低さ(シミュレーションのベースになる数値精度が低く、検証があてにならない)(3)やり直しによる工数ロス(仕様変更が入り、検証がやり直しになる)。ではどのようにすれば検証のメリットを享受することができるのであろうか。

(1)時間の不足と(2)信頼性の低さは、鶏と卵の議論になってしまうものの、「シミュレーションに時間を使うことで、逆に設計時間が短縮できる」「シミュレーションのベースとなる数値の精度を高めれば、設計品質の向上につながる」といったメリットが享受できることを社内に浸透させ、現場の機運が高まってくれば、次第に解決していくものであると考えられる。

(3)やり直しによる工数ロスは、シミュレーションソフトウェアという解決策がすでに確立されている。ソフトウェアを活用することの意義は、人間が何度も同じことをしなくて良くなることにあり、一度シミュレーションの仕組みを組み上げておけば、パラメータが変更されても再計算することにより、最新の設計を踏まえた生産能力を把握することができる。

また、一度作ったものを再利用できるようになることは、(1)時間の不足や(2)信頼性の低さに対する解決策にもつながる。生産ラインは毎回100%がオリジナルではなく、共通して使われる装置の一部や、似かよった人手の作業が必ず存在する。そういったデータを蓄積し、実態を踏まえて数値のメンテナンスを続ければ、シミュレーションの工数も徐々に下がっていくし、精度も高めていくことができる。

そして、何よりも重要なのは、全体最適を考えられる経営層の決断である。どんな時代でも、既存のやり方を大きく変える革新的な取り組みは、不退転の決意で進めるリーダーによって成し遂げられてきた。今現場で活躍している熟練技術者が退職してからでは遅すぎる。「技術」「経験」を数値化できるのはいつまでかを考えて判断する必要がある。

本レポートの後半では、シミュレーションソフトウェアの導入に成功した企業の事例も紹介する。前記のようなメリットが決して遠い未来の話ではなく、すぐにでも享受できることが理解できるはずだ。

次号では「生産計画の成立性検証」を掲載予定。

(つづく)

ANSYS

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