製造現場での労働災害は減少傾向にあるものの、依然年間2万5000人以上の死傷事故が起きている。安全対策につながる機器の設置や法規制などが行われているものの、ゼロには至っていない。一方で「労働安全衛生規則」での産業用ロボット80W規制に伴う安全柵設置について見直しが進み、また今後の高齢化社会などを見据えた介護ロボットなどの普及に向けて、生活支援ロボットの国際規格も制定されるなど、取り巻く環境に変化が出ている。機械安全対策機器関連市場は国内外で拡大しており、先行きへの期待が高まっている。

国内における製造業の労働災害死傷者数(死亡・休業4日以上)は、厚生労働省の統計(速報)によると、2013年(1~12月)は2万5981人であった。12年は2万7219人であったから、1238人(4・5%)減少した。全産業での13年の労働災害死傷者は11万2840人(前年比1618人減)で、製造業の死傷者は全体の23・0%を占め、商業(32・7%)に次いで2番目に多い。

製造業の死傷事故の発生状況は、機械への「はさまれ・巻き込まれ」が7356人と最も多く、続いて「転倒」が4553人、「切れ・こすれ」が2866人。

労働災害防止はこれまでも継続的に取り組まれて来ているものの、製造業では国際的に日本の対応策は遅れ気味と言われていた。しかし、ここ10年で大きく進展して、国際安全規格との整合化、セーフティアセッサ認定制度の整備などが進み、大きく進展している。

■厚労省が関連規格を改正施行
最近では、厚生労働省が10年7月に労働安全衛生規則を改正し、工作機械以外の機械に対しても、ストローク端による危険を防止する措置を義務付けるとともに、制御機能付き光線式安全装置(PSID式安全装置)、プレスブレーキ用レーザ式安全装置を新たな安全装置として追加するなど、関連規格を改正施行した。

この改正により、従来の金属工作機械だけでなく、NCルータなどテーブルが移動する木材加工や、樹脂加工用機械など適用範囲が広がった。

また、改正動力プレス機械構造規格は、ポジティブクラッチプレスを原則製造禁止にし、液圧プレスでのスライドの落下防止装置を充実させている。安全プレスでは、両手操作式安全プレスのスライドなど操作部は、左右の操作の時間差が0・5秒以内を要件化。光線式安全プレスは、改正前の防護高さを最大400ミリから危険を防止するための必要な長さに変更し、光軸間隔を70ミリから20ミリに変更、安全距離に400ミリ以上を追加した。

このほか、サーボモータを使用したプレスのブレーキ性能・故障対策などを規定。非常用停止装置の操作部として、押しボタンスイッチ以外のコード式やレバー式も認めるほか、両手操作式安全プレスのスライドなどの操作部を、直接距離で300ミリ以上離す以外の方法も認めている。

■改正安衛則の施行で新市場
13年10月からは、食品加工用機械の規定を追加した改正「労働安全衛生規則」(安衛則)で食品加工用機械による作業事故を防ぐために、機械の危険な部分への覆いの設置や、食品の原材料取り出し時の運転停止、用具の使用などが義務付けられた。食品加工用機械による12年の死傷災害は、2000件近く発生しており、ほかの産業機械による災害数の2倍~3倍と特に多い状況になっており、改正安衛則の施行により機械安全対策機器の新たな市場拡大につながるものとして期待されている。

さらに、昨年12月には安衛則のロボット使用時の柵囲いについての解釈が見直され、従来80W超の産業用ロボット使用時については柵囲いが義務付けられていたが、80Wであるかどうかに関係なく、リスクアセスメントを行って安全確保が確認できていれば柵囲いは不要ということになった。使用者にとっては安全対策が軽減できることになるが、一部には事故対策に懸念が生じるという声もある。

ロボット規制では、生活支援ロボットの国際規格が今年2月に発効し、日本からの提案が採用された。生活支援ロボットについても、安全対策の不明確さが普及のネックの一つと言われていたことから、今後の普及に向けて弾みがつくことが期待されている。

欧州でも11年12月に機械指令が改定され、EN954―1からEN
 ISO13849―1に移行した。欧州に輸出する機械・装置の安全制御回路は、ISO13849―1‥2006への対応が求められることになった。従来のISO13849―1‥1999は、「カテゴリー」で安全制御システムを評価していたが、改定後は「PL(パフォーマンスレベル)」で評価することになった。改定の背景には、安全関連の制御システムを構成する部品が、メカニカル部品から半導体などの電子部品に移行し、制御の方法もハードウェアからソフトウェアへロジックに変わりつつあることがある。

新しい規格は、カテゴリーの概念を基本に残しながら、IEC61508の「機能安全」の概念である信頼性や品質も取り入れることで、リスクの見積方法も変化することになるが、リスクアセスメントを実施するうえでは、分かりやすくなっている。最近はPLを計算するソフトも提供されており、比較的容易に対応可能になった。
国内市場は2桁成長

安全対策機器の市場規模は、日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、12年度は前年度比5・7%増の247億円と、3年連続で過去最高額を更新。特に国内は10・6%増の188億円となって3年連続伸長し、過去最高となっている。13年度も制御機器全体の出荷額が2桁の伸びを示しており、安全対策機器も同様の伸びが継続している。

安全対策機器は多岐にわたるが、主なものとして安全リレー、安全リレーユニット、セフティドアスイッチ、セフティリミットスイッチ、非常停止用スイッチ、ソレノイド付き安全スイッチ、エリアセンサー/ラインセンサー、フットスイッチ、マットスイッチ、テープスイッチ、ロープスイッチ、プログラマブル安全コントローラ、安全プラグ、安全確認型回転停止センサ、非通電電流センサなどがある。これら各種安全対策機器を用途に合わせて、機械本体や機械周辺に装備して安全を確保する。

■増加する電子技術応用安全機器
メカニカル機構の安全機器が多かった中で、最近は電子技術を応用した安全機器が増加している。PLCやサーボモータ、インバータなども安全対策を内蔵した製品が増加してきており、制御用と安全用が分かれていたフィールドネットワークでも、混在した形で構築できるようになってきており、ユーザーの負担を軽減している。

■NECAが機械譲渡で新資格
NECAや日本認証(JC)などが中心となって展開している「セーフティアセッサ認定制度」はアジアを中心に海外でも取得者が増加しており、今年4月からは新たに、「機械譲渡における危険性等の通知作成者の要件」を満足する内容を追加する。これによって、セーフティアセッサはこの要件を証明する日本初の資格になる。NECAでは安全関連事業のさらなる展開として「制御盤設計安全分野」の資格化に向けたワーキンググループを発足させ検討を進めている。

国際的に安全対策が進む中で、日本の安全に対する取り組み意欲は着実に高まっている。しかし、依然リスクアセスメントのやり方がわからないといった声も多く聞かれ、ユーザー側の情報収集力とメーカーなどの普及PR活動のさらなる強化が求められている。

経済成長が続く中国や韓国、さらには東欧なども安全対策を強化しつつある。グローバル規模では製造業の事故は依然多いだけに、安全機器の市場はさらに広がりそうだ。

ANSYS

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