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東京海洋大学 世界初の急速充電対応型リチウムイオン電池搭載「電池推進船」 実証実験

海中の環境汚染に対する規制が世界で動き出した。船は停泊していても電力が必要で、重油でエンジンや発電機を回し、二酸化炭素(CO2)などを排出する。せめて、港に停泊中の船はアイドリングストップし、必要な電力を岸壁から送電してまかなう考えである。ところが、航行中も環境汚染物質を排出しない船舶の開発が日本で進み、実証実験に入っている。東京海洋大学が建造した世界初の急速充電対応型電池推進船「らいちょうⅠ」と、モーター駆動ウォータージェット推進船「らいちょうS」である。今年春にはハイブッド機能をもった第3船「らいちょうN」が進水する。いずれも小型船であるが、近未来の船の形を予測するには十分。環境技術立国を象徴するような、急速充電で運航する「らいちょうⅠ」に乗船した。

昨年11月、FAの展示会「システムコントロールフェア」が終了した後、念願の「らいちょうⅠ」に乗船した。展示会で見学した最新駆動・制御技術の活用を肌で感じたかった。「らいちょうⅠ」は見事に応えてくれた。

午後3時、晴天波穏やかのなか、東京海洋大学越中島キャンパスポートを出帆。レインボーブリッジを通り、晴海ふ頭を巡る30~40分の旅である。

■まるで事務所の中の気分
コクピットの真後ろに座り、松下邦幸船長の話を聞きながら、まずその音の静かさに感心した。12ノットの速度でも、まるで事務所の中で話しているような気分である。

外航船を退任した後、「らいちょうⅠ」の舵を握るようになった松下船長のコクピットに設置された各種スイッチ、スロットレバー、ハンドルの軽い操作で、船内にいることを時々忘れるほどだ。モニターに映し出されたバッテリー残量、モーター回転数、電圧計、電流計、GPSによる海路、海図、陸路、カメラ映像などを見入っているうち、8ノットが10ノット、12ノットへとスムーズに速度を上げる。EV車がエンジンからモーター走行に切り替わるときのような「ガック」というショックもない。エンジンを搭載しないで、リチウムイオン電池で動くスマートさである。

同乗した内藤貞夫、土屋和行両研究員の説明では「東京海洋大学は学内に急速充電器を設置し、電気自動車を使用している。船への応用を考え、横河電機に勤務していた大出剛先生を産学・地域連携推進機構電池推進船プロジェクトの客員教授に迎え、建造に取り掛かった。船舶の排ガス汚染、小型船舶の排気ガス、鉛蓄電池船の低能力、低炭素社会に対応した船舶機関技術がないなどを背景にプロジェクトが編成された。2011年に進水し、現在、実験船として国内各地の港で公開されている」。

■屋根に太陽光発電パネル
「らいちょうⅠ」は、全長10メートル、全幅2・3メートル、全深さ1・2メートル、総トン数3・5トン、定格出力45kW、最大速力12Kノット、定格電池容量26kWh、急速充電プロトコルCHAdeMO(東京電力提唱)搭載が概要である。定員は12人。太陽光発電パネルを屋根に設置し、300Wを船舶用鉛蓄電池に充電、航海灯、ワイパー、室内照明や実験用計測器用AC電源に供給している。リチウムイオン電池は推進用動力にのみ使用している。

■充電時間はたった30分
「らいちょうⅠ」の特徴は、急速充電対応型リチウムイオン電池を世界で初めて適用している点。充電時間は、30分と鉛蓄電池の12時間に比べ極端に短い。1回の充電で、6ノットで8時間、12ノットで45分の運航が可能という。

また、エンジン船は自動運転できないが、電池推進船はリモコン運転が可能であり、現在、実験中である。船舶の全自動運転の先駆けとなる技術開発に大出プロジェクトでは乗り出している。

ビルが林立する運河を走行しながら、夕日が美しい光を東京スカイツリーに投影する場所に差しかかったとき、松下船長は「綺麗でしょう。絶景です」と、科学と自然の調和の素晴らしさを、電池推進船に静かに語りかけるように記者に話した。

電池推進システムは、電子制御ユニット、電池ユニット、推進ユニットで構成されており、電池ユニットは電池パック、バッテリーマネジメント、ジャンクションボックス、急速充電インレット、オンボードチャージャーを機能ユニットとしている。リチウムイオン電池と駆動用モーターインバータをEV用にし、機器間をCAN通信でby―wireにしている。

電池推進船は「自動制御回路がもっとも難しい技術を要し、大出先生は相当苦労したようだ。建造中の『らいちょうN』は全長12メートル、全幅3・5メートルで、充電からすべてコンピュータ制御にする。『らいちょうⅠ』と比べバッテリー5・5倍、モーター2基2軸で推進する」という。客船にすぐに転用可能という。進水が待ち遠しい。午後3時40分、美しい景色の流れを見ながらの静音、快適さに感心するうちに、越中島キャンパスポートに帰港した。急速充電器のケーブルを引きコネクターで船舶に接続する。充電の開始である。コクピットのパネルは、太陽光発電だけで動作するので、表示したままで充電している。

14年は、電池船の夜明けである。

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