“ものづくり”に変革 金型製作や人工骨研究にも 広がる3Dプリンタ市場

製造業を中心に、建築分野、医療分野、教育分野、先端研究などの分野で、3Dプリンタの市場が拡大している。世界の市場規模も2020年には、12年の約5倍の100億ドル(約1兆円)に拡大するという調査も出ている。3Dプリンタはこれまで、製品の試作や建築物のモデル製作などで利用されてきたが、最近は金属粉末を使用した金型製作や、カルシウムを使用した人工骨の研究などにも広がっている。教育や先端技術の研究開発分野でも使用されており、ものづくりに変革をもたらす技術として注目される。
3Dプリンタは、3DCADや3DCGデータを元に、3次元の立体オブジェクトを造形するシステム。造形する方法は積層造形製法が中心で、3DCADや3DCGデータを元にした設計図に従って、断面形状を樹脂や木材粉、カルシウム、金属粉末、石膏粉末などで積層して立体物を作成する。

積層造形製法で使用される樹脂は、熱溶解積層方式(FDM方式)がABS樹脂やポリカーボネート樹脂、液状の樹脂に紫外線などを照射し、少しずつ硬化させる光造形方式はエポキシ樹脂、同じく紫外線硬化によるインクジェット方式にはアクリル系樹脂、さらに粉末焼結方式にはナイロン粉末樹脂のほか、粉末の金属などが使用される。

3Dプリンタの使用例では、実際に製品を作る前に、それぞれの部品を3Dプリンタで縮小して出力し、デザインや機能の検証用など試作品として使われることが多い。

短期間で試作

建設分野では、新築される建物の模型を3Dプリンタで出力し、顧客への説明や、組み付けやアセンブリの確認などに使用されている。製品の試作では、実際に型を起こすと相当な費用がかかるが、3Dプリンタを利用すれば、安価に試作品が作れる。

これまで、パソコンの画面上でしか見ることができなかった試作品が、実際に手に取って感触などが確認できることから、完成したときのイメージがよりリアルに伝わり、理解しやすい。さらに、実際の試作より短期間で試作でき、制作時間の短縮や作業効率の向上にも繋がる。

低価格化進む

3Dプリンタシステムの価格も数年前までは数百万円単位の投資が必要だったが、最近は数万円~数十万円でシステム構築が可能となってきており、企業のほか、家庭や個人で導入するケースも増えてきた。

3Dプリンタでの制作費用も、プリンタの機種によってばらつきがあるが、1平方センチ当たり20円ぐらいも可能だという。

3Dプリンタの主な活用例は、部品などの試作品や鋳造型、組み付け・アセンブル確認、外観(形状)確認、プレゼンテーション用モデルなどのほか、試作ではなく最終製品を目指すDDM(ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング)や、ダイレクト部品生産までアプリケーションが拡大している。

さらに、金属粉末を利用した金属光造形複合加工機を開発したメーカーでは、深リブや中空、密度可変焼結、3Dメッシュ、さらに3Dによる自由な曲面造形や難しい加工形状の造形などといった技術も可能にしており、金型設計などの分野に事業展開している。

教育分野ではものづくり教育のツールとして、医療分野ではコンピュータ断層撮影などのデータを元に、手術前の検討用モデル作成などで利用されている。

3Dプリンタでカルシウムの人工骨を作り、患者に移植する臨床試験が東大医学部附属病院などで行われている。CTスキャンで骨のデータを取り、カルシウムで人工骨を作り接着剤で固めるもので、移植の境目がわからないほど、人間の骨に同化するという。

製造業では現在、試作としての使用が中心で、今後は多品種少量生産品領域での応用がどこまで進むか注目される。

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