中国・韓国高いコスト競争力で台頭

温度調節器(計)は、温度・湿度・圧力など各種センサから取り込んだ測定値を必要とする設定値と比較し、その差を修正する信号をリレーやアクチュエータなどへ出力し、対象物の温度や湿度を調節する制御機器・システムとして、重要性を高めている。温度管理はものづくりにおいて非常に重要な要素を占め、製品の品質や歩留まりなどに大きな影響を与える。半導体関係では、温度計測精度の向上など高性能の温度調節器が求められており、温度調節器の性能次第で製品の歩留まりが大きく左右される。食品関連では味覚や品質管理上から温度調整を頻繁に行うことで最もおいしく、安全・安心な食べものをつくりだすことにつながってくる。
現在は電子方式が主流

温度調節器(計)は、半導体技術を利用した電子方式が現在は主流になっており、メカ式などに比べ、温度精度が格段に向上し、より緻密な温度制御を可能にした。同時に半導体の量産化などで価格が大幅に安くなったことで、温度調節器(計)市場の飛躍的な拡大につながった。

温度調節器(計)の市場規模は、2012年が日本だけで300億~350億円と推定され、前年比ほぼ横ばいとみられる。このうち、海外販売比率は約40%を占め、年々増加している。海外では中国市場が景気低迷の影響を受けながらも、成形機や押し出し機などの需要が伸びていることで、温度調節器(計)市場も拡大している。中国は簡単な成型品加工などの生産が日本などから移管していることが挙げられる。ただ、中国ローカルメーカーの台頭も著しく、そこに韓国や欧州メーカーも参入して販売競争に拍車をかけている。中国ローカルメーカーには日本メーカーなどの温度調節器(計)をコピーした製品が多いが、品質レベルは年々向上しており、ユーザーでは「そこそこの温度精度が出れば問題ないので、安い中国メーカー製を採用する」ところも増えているようだ。
円安での競争力回復に期待

円高基調が続いていたこともあり、価格面のハンディによる競争力低下の影響を受けていたところが多い。日本メーカーでは、大手メーカーの一部で温度調節器(計)の海外生産を行っているが、専業メーカーを中心に国内生産を主力にしているところも多く、このところの円安基調での競争力回復に期待が高まっている。

温度調節器(計)のグローバル市場規模をまとめた確実な統計はないが、メーカー筋などの話を合わせると700億円ぐらいと推定される。従って日本メーカーのグローバルシェアは45~50%となり、欧州、中国、韓国、北米などのメーカーが残りのシェアを有しているものと見られる。

最近は、PLC(プログラマブル・コントローラ)のI/Oモジュールのひとつとして温度調節機能内蔵タイプも増加している。省スペースと省配線、設定ミスを低減する効果などが見込める。多くの場所で温度制御する場合、一つずつ設定していてはミスも発生し、コストもかかる。温度制御をPLCに統合することで、多点での制御状態が一目で確認でき、設定も簡単になる。ハードウェアとソフトウェア両面でPLCのコストダウンを図ることが可能となり、温調機能の信頼性と機能アップ、部分最適から全体最適へという設計自由度のアップも図られる。また、プログラマブル表示器などと組み合わせ使用する、表示部のないモジュールタイプやボードタイプなどは、温度制御点数が多い用途では、制御部品の削減と設置スペースを抑えることにつながる。
ソーラーパネル生産増が追い風

温度調節器(計)の主力市場である半導体・液晶製造装置向けは、昨年は低迷したものの、この先スマートフォンや小型液晶、有機ELなどでの投資や、ソーラーパネルの生産増加などが今後の追い風となって市場拡大につながってくるという見方が広がっている。このうち、ソーラーパネルの生産は、メガソーラー発電の立地増もあって、需要が逼迫(ひっぱく)している。生産増加投資に慎重な動きも見られるが、当分はソーラー発電の需要が継続する見方が強いだけに、先行きの投資増への期待も高い。そのほか太陽電池関連での需要増も見込まれている。

もうひとつの温度調節器(計)の大きな需要先である食品、包装関連は依然堅調な動きで推移している。食品は内需型産業として国内での生産を維持していることが大きい。食品機械の海外販売比率はまだ10%前後と他の業種に比べ低いことから、今後海外市場の開拓にも取り組もうとしており、温度調節器(計)メーカーにとっても、大きなプラス効果をもたらす動きとして大いに注目される。

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