混沌時代の販売情報力黒川想介 相手の立場に立って質問する

電気部品やコンポメーカーの商品カタログは、どのメーカーのカタログも分厚くて重い。それほどに商品の機種が多いということだろう。商品の種類の割に機種が多いのには驚く。競争に勝つために機能向上を目指した製品メーカーは製品設計や製造のやり方で努力を重ねてきた。製品は多様化し、その結果として製品設計者の要求で少しずつ部品やコンポの機種が多くなってきたのである。

かつて部品やコンポの機種がそれほど多くなかった時代に、販売員は総合カタログをカバンの中に入れて顧客や見込み客を訪問した。客先との会話がはずんで多岐にわたってくると、それならと言って総合カタログを出して、その会話にかかわる商品ページを開き説明を始めたものだ。次回の訪問時には総合カタログを届けるかたわら、客先が興味を示す商品を見つけようと顔色をうかがった。新たな需要がどんどん広がっていくという感覚が強かった時代だった。だから売り込みのみを目的にするだけでなく、客先とのコミュニケーションの広がりを大事にした。現代の営業では総合カタログを持って客先を訪問するのではなく、パソコンをカバンに忍ばせて、営業をするのであろうが、かつて総合カタログが活躍したようにパソコン上の総合カタログを使って、客先とコミュニケーションをする機会はそれほど多くない。理由の一つは、顧客が必要に応じて販売員と会うので事務的なやりとりがほとんどであるということ。二つ目は、販売員側も総合カタログを必要とする営業ではなく、特定の商品の販売が中心となっている。したがって顧客も販売員も多岐にわたるコミュニケーションに至らなくなっているのだ。以上、二つの理由から、紙ベースであれ、パソコンであれ、総合カタログによるコミュニケーションは極端に少なくなっている。

ところで、販売員にとって受注ほど嬉しいものはない。受注をするために商品を紹介し、売り込み活動をするのである。売り込みは販売活動でも重要な活動には違いないが、それ以上に重要な活動が情報収集活動である。孫子は軍争篇で迂直の計を語っている。迂直の計を簡潔に言えば、敵より遅く出発せざるを得なくなったとしても有利に戦うために、策を考えて敵より早く戦場に着いてしまうことである。直情的な直接戦略を取るのではなく、間接的な戦略を取り、勝てる道を見抜く知恵を身につけることなのである。例えば、後れて受注競争に参加するようになってしまった場合、直接的な売り込みをするより、回り道に見えるが、時には総合カタログを交えて客先とのコミュニケーションに花を咲かせ、仕事談義に興ずる活動が孫子の迂直の計に相当するのである。そのため好奇心を旺盛にして案件の背後には何があるかをじっと耳を澄まして聞けということを前回述べた。今回は販売員が『直情的に商品を売り込むことに専念するな』ということについて述べてみる。売り込みたい商品に縛られると、ついつい商品の良さをアピールし客先の関心を買うのに躍起になる。顧客が少しでも販売員の紹介した商品に関心を示すと、ますます販売員の頭からその商品が離れなくなって防戦一方になる。防戦とは顧客が質問する側になり、販売員は答える側になることだ。これでは何ひとつ相手のことが探れず、無駄な活動となる。

そこで、ここは迂直の計を意識して、売り込む商品をまず頭から消し去ることである。その上で相手の立場に立って何か役に立てることはないだろうか、学ぶことはないかなどと思いを巡らせ質問を試みることである。

(次回は1月9日付掲載)

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