産業用トランス 応用分野拡大堅調な動き震災の復旧・復興にも大きな役割 新エネルギー分野で新市場 耐雷トランスが急伸 特注品の比率高まる メガソーラーへの採用進む

産業用トランス市場は、FA、ロボット・工作機械、医療機器、防災機器、IT関連、再生可能エネルギー関連、アミューズメントなど、幅広い分野に支えられ、堅調な動きを見せている。東日本大震災以降は、電源装置などとともに被災地の復旧・復興を支える機器として大きな役割を果たしている。機能面では軽量・コンパクトのほか、ねじアップ式端子台タイプ、通電時LED表示タイプ、事故再発防止トランスなどの機能を持つ製品が伸長している。最近では中型トランスにおいて新形状の成形ボビンを採用することで、コイルのレヤーレス巻きを実現し、放熱効果の向上などが図られている。市場の動向では、特注品の比率が高まっているほか、電力関連やインフラに絡むエンジニアリング関係を中心に高容量大型トランスの需要が高まっている。特に海外を中心にメガソーラー向けの需要が伸長しており、こうした新エネルギー分野への新しい市場も形成されつつある。
電源電圧を安定させ、変圧させる役割を持つトランスは、機械・装置を陰から支える重要な機器として、あらゆる産業分野に使用されている。電力系統に使用される大型タイプから、電気設備、電子機器・装置に組み込まれる小型タイプまで、多種多様な製品がそろっており、安定した市場を形成している。
製造ライン増設の動きも

産業用トランス需要はリーマンショック以降、FA、工作機械、電子部品など市場の上昇とともに回復基調を示し、堅調な動きとなっている。最近では電力関連や社会インフラに絡むエンジニアリング関連の需要も旺盛で、大容量・大型のトランスが伸長、製造ラインを増設するメーカーもある。

経済産業省の機械統計によるトランス(インダクタを除く)の生産金額は、2009年(1~12月)はリーマンショックの影響で140億円と減少したが、10年は前年比15・7%増の162億円、11年は同4・3%減の155億円となっている。

産業情報調査会の調査による世界のコイル・トランス出荷金額は、11年は前年比2・6%増の1兆1717億円となっている。10年も15%強の増加を見せていたが、11年は国内では東日本大震災、世界ではタイの洪水や欧州の金融不安などの要因で伸び率が鈍化した。特に、液晶テレビやパソコン、ゲーム機、一般携帯電話、自動車などが足踏み状態になり、コイル・トランス需要も停滞した。12年は、民生分野は全般的に低調と見られており、欧州経済も依然として不透明な状況にある。こうした中で、スマートフォンやタブレット端末向け需要は旺盛で、自動車やエネルギー関連での需要も拡大している。

国内のトランス市場も比較的堅調に推移しており、FAやロボット工作機械分野以外にも、IT、情報・通信、アミューズメント、医療機器などの分野でも需要が安定している。さらに、新エネルギー活用に向けて、ソーラーや風力発電向けの需要も伸びている。東日本大震災に伴う原発事故発生で、改めて安全・クリーンな風力発電に注目が集まっており、太陽光発電関連とともに、さらなる市場の拡大が予想される。特に太陽光発電に関しては、海外においてメガソーラー向けの大型トランスの需要が急速に拡大している。

特注品やカスタムメードトランスの比率も高まっている。例えば、同じ大きさで容量の違うトランスや、同じ容量でサイズが半分のトランスの製作依頼など、顧客から様々な要望があり、専業メーカーでは各種のニーズに合わせた改良・工夫を進めており、こうしたことが新たなアプリケーションの拡大につながっている。
最新鋭設備でコスト対応

特注品は、組み込む機器・装置、設備に合わせて容量、サイズまで特別に製作するため、トランスメーカーにとってコスト、納期面での負担が大きくなるが、トランスメーカーの中には、小型から大型のトランスまで一貫生産ができる最新鋭の設備を整えることでコストの低減と納期の短縮を図り、競争力を高めているところもある。

また、トランスメーカーの多くはリーマンショック以降、積極的な営業展開を行っており、新たな販売代理店を設けるなど強化をしている。特に首都圏と地方の主要都市での拡販強化が目立つ。

さらに、物流体制の整備、ネット販売の拡充などで、全国的な販路開拓に取り組むトランスメーカーも増えている。

大型トランスは産業用途での採用が多く、使用分野・製品ごとに仕様が異なるため、多品種少量生産対応が可能な専業メーカーによって供給されている。大型を中心とする産業用トランスは重量が重いので、輸送コスト面から、ユーザーに近いところで生産する地域密着型での製造・販売が主流となっている。

環境対策への取り組みでは、各メーカーともRoHS指令対応製品の投入をほぼ完了しているほか、UL、CAS、TUV、CEマーキングなどの海外規格取得が進んでおり、ほとんどのメーカーが海外規格対応品をラインアップしている。

このほかリード線、銅線、梱包材などでも求められている。リード線や銅線関係は、ケーブルメーカーが環境対応を図っており、トランスメーカー自身はそれを証明するだけで済む状況となっている。

一方、原材料価格は、銅相場が今年に入ってからはキロ600~700円の間で推移しており、比較的落ち着いている。鉄の価格も昨年はトン当たり8万円まで上昇したが、現在は7万円前後で推移しており、こちらも落ち着いた動きで製品値上げなどの動きは出ていない。

樹脂や石油化学製品は、一昨年の原油価格の高騰で昨年はじめに10%から20%に値上げされたが、以降は世界的な景気の不透明感から原油価格が下落、現在、値上げなどの動きはない。トランスの材料に使用される石油系製品では、樹脂のほかにワニス、テープ類などがあるが、トランスは本体の原材料の約80%が鉄や銅で占められており、製造原価に対する材料費が30~45%と高い。例えば容量30VAでは材料費が約30%で、容量が大きくなるほど材料費の比率が高くなってくる。

トランスの機能面では、軽量・コンパクト化に加え、接続方法の簡易化など作業性の向上、マルチタップ化、LEDによる通電表示などの工夫・改良が進んでいる。
結線部に端子台を採用

作業面では、結線作業と接続信頼性の向上、デザイン性などの点から結線部への端子台の採用が一般化している。タブ端子台を採用しネジを使わず、リセプタクル端子をタブに差し込むだけで結線が完了するタイプや、最近では、ねじアップの採用でねじを緩めることなく丸型圧着端子の接続ができるタイプがシェアを伸ばしている。ねじが脱落しないため、結線作業の効率化が大幅にアップし、従来のねじ式と比較すると作業時間が80%以上短縮できる。

保護カバー付きねじアップ式端子台にLEDを取り付け、通電中はLEDが点灯し通電状態が一目で確認できるタイプも好評を得ているようだ。

マルチタップを採用した製品は、1次側(入力)とともに、2次側(出力)にもマルチタップを採用することで、1台のトランスで12種類の電圧に対応することができ、入出力の電圧変更が簡単にできる。
絶縁紙の使用枚数を削減

軽量・コンパクト化への取り組みとしては、絶縁紙の使用枚数削減がある。これは環境対策面でも効果的で、絶縁種別をB種、巻線仕様をノーレア方式にすることで、従来品と比べ20~40%の軽量化を実現。これにより、1kVAクラスの場合、約3キログラムの減量となる。サイズも10~20%のコンパクト化を図ることにつながる。

最近発売の新製品では、中型単相、三相トランスにおいて、新しい形状の成形ボビンを採用することで、コイルをレヤー紙巻からレヤーレス巻きにすることに成功。層間紙を入れずに完全整列巻線を行うことができ、導体熱が直接伝わり放熱効果が向上するとともに、大幅な小型・軽量化につながっている。

コイル巻線の工夫、鉄心の改良については、複数巻線シングルコアに対して、複数コアのシングル巻線にすることで大幅に薄型化することができる。近年では、巻線の自動化技術も進み、独自の自動巻線装置を使うトランスメーカーが増えている。

民生用途の小型タイプなどでは、既に巻線の自動化がなされているが、大型タイプが中心となる産業用トランスでは、まだ手作業で行っているところが多い。自動化は、同じ巻線数でも手作業などの従来方法よりコンパクトに巻け、小型軽量化につながっている。
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トランスの巻線作業はある程度熟練が必要で、ベテラン職人の減少や人件費対策などのコスト面からも、巻線の自動化が進んでいる。コイルボビンにノーカットの鉄心を巻き込んだタイプもあり、鉄心の有効断面を均一にすることができ、磁路の短縮が図れる。コイルボビンと鉄心の一体化構造で、高い絶縁性と正確な形状を実現し、しかも自動巻線も使えるといった特徴がある。さらに、用途ごとに変わる電流容量に容易に対応できるように、数個を並列に接続できるモジュールタイプが一般化している。
ノイズ対策機能を付加

トランスにノイズ対策機能を付加する製品も伸長している。ノイズ対策には一般的にノイズ対策専用トランスを採用するが、トランス自体がノイズ対策機能を持つことにより、ノイズ対策専用トランスが不要となり、コスト、スペースなどでメリットが生まれる。

日本は山間部や日本海沿岸など雷被害を受けるところが多く、最近では温暖化現象の影響などで都心部でも落雷による被害が急増している。そのような背景から、雷対策用として耐雷トランスの需要が急速に伸びている。加えて太陽光発電システムの普及に伴い、太陽光発電用のパワーコンディショナが落雷により被害を受けるケースが増えており、今後、こうした分野でも耐雷トランスの需要の拡大が確実視されている。

安全重視の観点では、焼損事故の再発を防止するため、自己保持型サーマルプロテクタを内蔵し、所定の動作温度に達すると、トランスや電源機器の電源を切るまで接点を開放し続ける事故再発防止トランスなども伸長している。

そのほか、金型レスでプリプレグ方式のモールドトランスの需要も高まっている。特徴は、通常の乾式トランスに比べ、導電部の絶縁や保護に効果を発揮し、難燃性や耐湿性に優れること。さらに金型レスのため、ユーザーが求める様々な容量・電圧に対応するトランスの製作も可能である。
新規販売ルートを開拓

産業用トランスは、電気的安全性確保の重要な役割を担っており、今後も安定した需要が見込まれる。専業メーカーでは、さらなるコスト低減などで原材料高の課題を乗り越えると同時に、新規販売ルート、新規顧客の開拓に積極的に取り組んでいる。開発面では、トランスの技術を応用した給電システムやリアクトル、正弦波インバータなどが開発されており、トランス技術の応用・拡大が進んでいる。

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