市場の拡大基調続く データセンター設置投資が後押し ますます進展する熱やセキュリティ対策

キャビネット・ボックス・ラック市場は、IT(情報通信)社会の進展、国際的に取り組まれているエネルギーの効率活用を前提としたスマートシティ社会の実現などが牽引役となって拡大基調を続けている。特に日本では、東日本大震災からの復興に向けた社会インフラ整備が続けられており、震災対策、再生可能エネルギー活用施策などを中心に意欲的な投資が継続して行われている。IT化社会の中では情報管理の重要性がますます高まっているだけに、リスク分散上からもデータセンター設置への投資も続けられ、ボックス・ラックをはじめ、熱対策、セキュリティ対策関連での需要拡大に大きな波及効果が出ている。今後、キャビネット・ボックス・ラックについても国際標準化への対応がますます求められてくるのは確実で、それとともに海外メーカーとの競合やアライアンスも予想され、新たな段階に発展するものと見られる。

多岐にわたる使用分野

ボックス・ラックは、電気・電子機器の収納を目的とし、屋内や屋外において、外部の環境から内部機器を保護するとともに、内部機器への直接接触に対する保護を行う。種類は、材質・設置場所・設置方式・形状などによって分かれる。使用される分野は、電力、石油化学、自動車、電機・電子、情報通信、データセンター、施設、ビル、セメント、環境装置、工作機械、産業機械、食品・医薬品・飲料、半導体、液晶、計測、放送設備、医療、交通など多岐にわたっている。

IT化社会の中で、コンピューターシステムは重要な役割を果たしており、特に大震災以降はデータの分散化上からも外部データセンターの活用度合いが高まっている。従来、データセンターは大型の建物内に設置する大規模なものが多かったが、最近は設置投資コストを抑えるとともに、エネルギー効率も高めようとした小型のものが増えている。その典型がコンテナ型データセンターだ。コンテナ内にサーバーや電源、空調など必要なものを収納して、それを屋外に設置するというもので、設置費用や設置期間が短縮できる。移動も簡単で、コンパクトなため冷却効率なども高めやすい。コンテナ型データセンターは、国土交通省が建築物ではないという判断をしたことで、建築申請などの手続きが不要になったことも設置を加速させている一因となっている。

従来からデータセンターの電力消費量の増大、それに伴う熱問題に対して冷却の効率化・省電力化など環境負荷低減が求められているが、コンテナ型データセンターはこの課題の解決にもつながる。

復興需要も見込まれる

また、盤による電気の安定供給は社会活動の中で必要不可欠のものとなっており、これを内蔵するボックス・ラックは、東日本大震災による復興需要なども見込まれている。

ボックス・ラックの材質には、外郭に使用する材料にスチール、ステンレス、アルミ、樹脂などがある。それぞれ機械的、電気的、熱的、化学的影響や湿度の影響に耐え得るものでないといけない。また、さまざまな場所に設置されるが、大きく屋内、屋外の二つに分けられる。製品を安全に使用するため、設置場所の環境は重要なポイントとなる。

汎用と専用仕様タイプ

設置方法により、露出形、ボディーを埋め込む構造の埋込形、床面に固定して設置する自立形、電柱などの柱に設置するポール取付形などに分けられる。また、さまざまな場所で電気・電子機器を収納する「汎用タイプ」と光接続・LAN用の情報通信用に代表される、用途に応じた「専用仕様タイプ」などがある。

構造としては、(1)上下左右の側面及び背面を覆うボディー(2)前面を覆うもののうち、ドア・カバーなどを取り付ける前面枠(3)外面にあり、蝶番などで支持され開閉するドア(4)外面にあり、ネジなどにより支持され脱着するカバー(5)上からの水や埃から保護するために、天面に取り付けられる屋根(6)人が手で操作する握りの部分を有し、そのままもしくは付属部品を装着することによりドアの開閉制御を行うハンドル(7)ハンドルに装着し、ドアを固定する止め金(8)止め金などに連動し、ドアの上下で固定するロッド棒(9)リングのバネ性を利用したドアの開閉制御を行うパチン錠(ラッチ)(10)防水・防塵などの目的で、ドア・側面板などとボディー・フレームとの間に設けるパッキン(ガスケット)(11)内部機器の発熱及び外部から受ける熱を放熱するための換気口(12)鎧戸状の換気口であるルーバー―などで構成される。

スチール、ステンレス、アルミ、樹脂などの材質には、それぞれ特徴がある。金属製は重いが、耐久性に優れており、多種多様な機器を収納できるシステムラックなどに適している。ボックス・ラックの機能としては、特に熱対策や防塵・防爆、EMC対策、耐震性の向上が求められているが、こうした機能を付加した堅牢な金属製のボックス・ラックは様々なタイプが開発されている。

樹脂製のボックスは、軽くて絶縁性に優れ、錆にも強いので、沿岸地域をはじめとする特殊環境などでも活用でき、電波を通すので無線アンテナの収納にも適しており、需要が伸びている。近年はさまざまな種類の樹脂が使用されている。

ABS樹脂は、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレンの共重合化合物で、剛性・加工性・耐衝撃性に優れた汎用性の高いプラスチックである。

AES樹脂は、エチレンプロピレンゴムにスチレンとアクリロニトリルをグラフト重合した三元共重合体。物性はABS樹脂とほぼ同じで、ブタジエンに代えてエチレンプロピレンゴムを用いることにより、ABS樹脂よりも耐候性を改善している。

ACS樹脂は、ABS樹脂のブタジエンの代わりにゴム成分として塩素化ポリエチレンを使った耐衝撃性樹脂で、塩素化ポリエチレンにアクリロニトリル、スチレンをグラフト重合してつくられる。塩素を含むため、ABS樹脂よりも耐候性のほかに難燃性、耐帯電汚染性を改善している。

設置形態にもいろいろある。露出形ボディーは、全部または一部を造営材の面から露出して施設する構造のボックスで、埋込形ボディーは、全部を造営材中に埋め込んで施設する構造のボックス。

屋内形は、屋内使用に適する性能を備えたボックスで、屋外形は、雨・雪・露・風及び直射日光に暴露される場所での使用に適した性能を備えたボックス。

壁掛形は、壁面など垂直面に取り付けることを意図したボックスで、ポール取り付け形は、直接ポールに取り付けできるボックス。仮設用途は、工事現場などである期間だけ臨時に設置して使用する用途のこと。あらかじめ通線用のノックアウトや配線孔を有した構造のボックスがそれに該当する。
(5面につづく)

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