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インドの配電制御システム事情 欧州規格浸透日本と遜色ない技術レベル 単純に参入する余地ない再生可能エネルギー分野に活路

今年、日本との国交樹立60周年を迎える人口12億人のインド。昨年10月時点で、日系企業の進出は812社に達している。この4月30日には、閣僚級日印経済対話が開催され、インフラ開発で協力関係を加速させることに合意した。日本の産業界が注目するインドではあるが、建築や電気設備の情報は極端に少ない。こうした中で、日本配電制御システム工業会は30周年記念事業の一環としてインド、インドネシアに視察団を派遣、現況を調査した。本紙では、インド視察団団長の国分直人氏にインドの配電制御システム事情について語っていただいた。国分氏は「インドは中国よりも遅れていると思っていたが、欧州規格が浸透し、技術レベルは日本と比べ遜色がない。日本が優れているのは納期と品質面であろう。単純に参入する余地はない」と、視察前と後でインドの配電制御システムの印象が一変したという。

・人口、経済成長率から選ぶ

-インドを選ばれた理由は。

国分団長

配電制御システム業界は、国内マーケットが下降傾向にあるので、海外市場を目指さないといけないとの声が出ている。今までの海外視察は盤業界を調べるのが主目的であったが、今回は我々の出る可能性を探ることである。そのため欧州は除外し、BRICsを候補に検討した結果、人口、経済成長率からインドを選んだ。インドの配電盤市場には日本の重電メーカーも本格進出しておらず、我々一企業が進出するのは難しいが、ITが進んでおり設計のみ委託できるかもしれないとの思いも選定の理由にあった。インド視察団には15名が参加した。

-どのような企業を訪問したのですか。

国分団長

まず、我々はインドの建築や電気設備についてほとんど知らない。その実情を知るうえで、日系ゼネコンで一番早く進出した三井住友建設インド社、日系輸送機メーカーの工場建設現場、現地配電盤メーカーであるADLEC Systems、大手電気工事会社Sterling&Wilsonの発電機・盤類工場、ITビル団地を訪問した。

昨年11月4日から12日の6泊9日で、デリー市、ムンバイ市を駆け足で回った。道路事情が悪く早朝から夜遅くまでハードなスケジュールであったが、逆にインフラの状況が分かった。15名が協力し合い、今回の目的を果たすことができた。

・低価格の現地製品を使用

-日系ゼネコンの感想は。

国分団長

三井住友建設インド社を最初に訪問し、配電方式、建設ビジネス、配電盤動向などいろいろ知り得たので良かった。

同社によると、配電方式はTN―S(PE独立式)である。一般的な受電電圧は3相3線式11KV、60Hz、大型トランスで3相4線式415V/240Vに降圧し400V級配電システムを形成している。大型施設では22KVまたは66KVで一次受電し11KVに降圧している。工業団地はグリッドパワーの引き込みと自家発電が基本である。グリッドパワーの供給信頼性は低い。

インドではゼネコンからの電気設備の発注は、日本の一括と異なり分離発注が主流であるが、発注者側の労苦も多く、工期も遅れがちになるという。

配電制御システムに関しては、日系企業は機械ラインの制御盤については日本から持って来るケースもあるが、受配電盤は現地配電盤メーカーの製品を使用している。日本製の品質の良さは理解しているが、価格が安い現地製品を使用する。

もっとも、インドは英国の植民地であったので、欧州流である。欧州企業は発電機、照明、コンプレッサー、エレベータなど現地で生産している。配電盤でも欧州の規格が浸透しており、盤内の部品はシーメンス、シュナイダー、ABBなどを使用し、三井住友建設が採用したオリジナル盤でも品質や技術面で大きな問題が発生したことはないそうである。

・組立ワーカーのレベルは低い

-現地盤メーカーに良く訪問できました。

国分団長

ADLEC Systems、Sterling&Wilson盤工場は我々同業者なのに“ウエルカム"と大歓迎された。配電盤の歴史が浅いせいか、新技術に対する吸収意欲が高く、我々との提携模索にも前向きで好印象を受けた。

2009年に東京配電盤工業協同組合の視察で訪問した中国よりも遅れていると思ったが、それこそ「ガラパゴス」であった。参加者全員が「単純に盤を売る目的で進出しても勝負できない」との感想で一致した。

日本製の最新ベンダー、パンチプレスを導入し、塗装は粉体連続乾燥炉を使用し前処理も14槽で処理している。33000KVの大型配電盤も製作できるといっていた。設計はCADで行い、一部で3Dを使っていた。稼働率は低いが設備的には十分な環境が整っている。我々と売り上げが同程度であっても社屋は2倍以上の広さがある。勢いを感じた。

日本は決まっていないものを形にすること、短納期であることに優れている。また、生産性も高い。インドはエンジニアがハイレベルであるが、組み立てワーカーのレベルは低い。我々は、ワーカーがモノ造りに対して考えることを前提に生産システムを構築しているが、インドは日本に比べてワーカー一人当たりの生産性が十分の一程度であるとのことだった。

・欧州企業の影響力を実感

-インドの予想外に高い配電盤製造レベルの要因は。

国分団長

やはり、欧州の影響力が大きい。ADLEC Systemsは、カスタムメイドの低圧配電盤のほか、BLOCKSETパネルと中圧配電盤はシュナイダーとのアライアンスで製造している。盤用の部品は欧州製品である。この会社は、グループ会社Matrix

Controlsで中圧ブレーカー、低圧コンデンサー、CT、VT、バスダクトの部材や機器を製造しており、製造技術の高さも印象に残った。

Sterling&Wilsonの工場もシュナイダーと提携して製造している。ADLEC Systemsと似通った盤が多いのは、そのためであろう。

両社を視察して、欧州企業の影響力の強さを部材から完成に至るまでまざまざと見せつけられた気がする。

-IT工業団地では実際の電気設備を見学された。

国分団長

ITパークは8棟あるが、すべては完成していなかった。グリッドの電力は2系統方式と聞いたが、視察時は1系統だった。停電対策として非常用発電機が設置され、UPSは各テナントが設置している。

ITパークの電気室はかなり広い。インド製の盤類は、ケーブル、バスダクトがアルミ製である。そのため、盤の外形は当然大きくなるが、広い電気室を見てコンパクトに作らなくても良い理由が分かった。ただ、日系ゼネコンの話や現地配電盤メーカーを見た限り、シュナイダー、シーメンスなど向けOEM盤は銅バーを採用しコンパクトであった。

-視察された後の感想は。

国分団長

帰国後の反省会の意見を含めて話すと、視察する前は日本の配電盤メーカーでなければならないニーズがあると予想していた。実際は、FA制御盤は見ていないが、建築では標準盤ばかりで、日本のようなカスタムなものがない。しかも欧州仕様の世界である。技術もある程度ある。進出の日系企業でも「現地メーカーで十分」といい、我々に進出して欲しいという印象は感じられなかった。

我々が日本のビジネススタイルで進出すれば、痛手を被ることは確実である。ただ、発電機だけでなく太陽光発電など再生可能エネルギーの普及は間違いないので、この分野で我々の技術を生かせるビジネスの可能性があるかもしれない。

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