表示関連機器 採用分野広がる “復興需要”本格化へ PD(プログラマブル表示器)

PDはFA分野において、各種コントローラの稼働監視やモニタリング、エネルギー使用量の表示、さらに制御指示などを行うタッチパネルディスプレイとして急速に需要が拡大している。最近では各制御機器と直接通信接続することで、各制御機器の情報を「見える・活かせる化」し、有益な情報を膨大に伝達することも可能となり、機器の有効情報を最大限に生かすソリューション・システムとして市場を拡大させている。

さらに、自動車やFPD、半導体製造分野で使用される大型装置での作業効率化を図るため、表示器にEtherNetを搭載し、大型装置のネットワークに接続することで、手間やコストがかからない副操作盤としての機能も持ち、用途を拡大させている。

また、最近では外食産業分野において、顧客のオーダー装置用として小型、中型のPDが伸長している。

500億円規模の市場形成

このように着実に成長を続ける表示器市場は、日本電気制御機器工業会(NECA)がまとめたグラフィック表示器の出荷統計によると、2009年度はリーマンショックの影響で前年比26%減の300億円と落ち込んだが、10年度はV字回復し同50%増の450億円となった。11年度は震災の復旧需要などの伸びが予想される。なお、この金額はNECAの非会員メーカーの金額が含まれておらず、非会員メーカーの出荷金額を加えると約500億円規模の市場を形成しているとみられる。東日本大震災による表示機器市場への大きな影響はなかった。

自動車分野で

設備投資活発

表示機器を取り巻く市場環境は、昨年後半から半導体関連、電子部品関連での設備投資が一服状態だが、自動車分野での設備投資が活発になっている。EV(電気自動車)やEHV(ハイブリッドカー)などのエコカーの普及で、自動車本体はもちろん、バッテリーや充電スタンドなどで需要が出て、市場を拡大している。

東日本大震災の復興需要は社会インフラ関係が先行しているが、タイの洪水からの復興需要は、工場建物は残っていることから、一挙に設備需要が発生して、関連機器の納期がひっ迫する状況。半導体製造装置関連も今年は厳しい見通しと言われているが、復興需要の規模が予想以上に大きく、春頃から上昇基調になるのではという予想も一部で聞かれる。

食品・医薬・化粧品の3品業界も、トレーサビリティの徹底化や、安全な製品を提供するための工場の「見える化」が進んでおり、表示機器の大きなアプリケーションに成長している。食品向けトレーサビリティ対応生産時点情報管理タイプは、タッチパネル付き表示器でポカミスを軽減し、工程ごとへの部分導入ができることが特徴となっている。

最近では省エネ・コストダウンの観点から、工場やビルでのエネルギー管理システムの導入が加速している。エネルギーの使用量を「見える化」し、無駄な電力の使用をカットするなど、効果的な省エネ・節電が実施されている。この分野では、無線型電力監視表示器も開発され、持ち運びでき、計測したい箇所へ簡単に設置するという特徴で注目されている。

エネルギー監視や管理などのテーマでは、スマートハウスなどスマート分野での市場拡大が予想され、表示機器活躍の可能性を高めている。

太陽光発電や風力発電などの新エネルギー分野は、数年前から具体的な案件が動き出してきたが、東日本大震災による原発事故などでより一層新エネルギーに対する需要が高まっており、今後の設備投資に期待がかかる。

新興国向け専用PDも

一方、海外市場では中国を中心とした新興国での表示機器需要が依然として拡大している。新興国向けの専用PDも投資が進んでおり、今年も市場の堅調な拡大が予想される。PDの地域別売り上げ構成比は、金額では国内向けと海外向けがほぼ同額だが、台数では外需の増加で海外向けで60%まで上がってきている。地域別の輸出台数ではアジア向けがトップで次が欧州向けとなっており、アジア市場の活況を裏付けている。また、北米地域は横ばいで推移している。

国内の産業分野別出荷割合では、セット機器向けで工作加工機械がトップで以下、食品・包装機械、半導体・液晶製造装置、ロボット・組立機械、搬送機械、その他となっている。エンドユーザー向けでは、電機・電子がトップで以下、食品・薬品・化学、自動車関連、機械・精密部品、鉄鋼・非鉄金属、その他となっている。

小型機種の需要増える

PDのサイズ別では、半導体・液晶製造装置関連を中心に、中・大型機種のウエイトが大きいが、最近では3・7~5インチサイズの小型機種の需要が増えている。押しボタンスイッチや表示灯などからの置き換え需要によるもので、特に食品機械や包装機械などの中・小型機械・装置向けで伸長している。ユーザー側もPDを搭載することで、省配線や機械・装置の付加価値アップという効果に繋がっており、特に小型タイプの数量は全体の20%を突破している。

機能的には、バックライトにLEDを採用し、消費電力の低減化や水銀レス化が進んでいる。特に欧州は環境に敏感な地域で水銀規制が進んでおり、LED化を加速させる要因となっている。

情報端末としての役割

PDは、初期の頃の単なるスイッチや表示灯を代替する表示的機能から、最近では情報端末として、さらにPLCや温度調節器など各種の制御機器の機能分担的な役割を果たしている。

従来、PDはPLCとコミュニケーションすることがメインで、PLCの先にある各制御機器からの伝達量が少なかったが、最近ではPDと各制御機器をI/O制御で通信接続し、各制御機器と直接コミュニケーションを図ることで、各制御機器の情報をより多く見える化、活かせる化し、「エラー・ステータス・位置情報」などの有益な情報を膨大に伝達することが可能になっている。

これにより「PLCを使わないと位置合わせや機器調整時の連続運転ができない」、「トラブル時の内容把握に時間がかかる」、「簡単な現地調整でも、情報一つ一つをPCを使いながらコントローラへ書き込みするので効率が悪い」、「システム全体の稼働状況の把握が難しい」といった様々な課題が解決されるという。(5面につづく)

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