課題と対策2011年版 重電産業編 現地化の推進、ニーズへの適合

【現状】

重電産業は、国内外の電力産業などに用いられる発電・送変電設備及び産業用電気機器を供給する我が国の基幹産業である。

1990年代中頃までは、国内電力産業の定期的な設備投資や公共投資などにより一定規模の発注量があったが、電力自由化の下での設備投資効率向上への取り組みや公共投資の削減などにより電力産業及び官公庁の需要は減少傾向で推移している。特に、国内の主要電力会社の2007年度の設備投資は約1・9兆円であったが、これは1993年の設備投資額(ピーク時)の半分以下の水準であり、全体としての生産規模は大きく減少してきた。一方、近年、経済活動が活発化するアジア諸国での電力需要の高まりの中で、輸出額は2004年度以降2007年度まで順調に増加している。

特に中国、韓国、台湾、タイなどのアジア諸国向けに輸出額は急激に伸びてきており、2001年度以降6年間でアジア向けの輸出額は、約0・7兆円(2001年度)から、約1・4兆円(2007年度)とほぼ倍増している。

なお、2009年については、世界的な経済危機により国内外の経済が縮小し、産業用電気機器を中心に国内の設備投資の抑制に加えて輸出にも勢いがなくなり、生産は大幅に落ち込み、生産額は3兆809億円、輸出額は1兆8269億円となった。

2010年は、世界的に景気後退した2009年から反転し、生産額は3兆2852億円、輸出額は2兆1205億円となった。生産額は、国内の景気が徐々に回復傾向に戻ったことにより、僅かながらではあるがプラスに転じた。輸出額の伸びは、全体としては20%弱の伸びを示しており、2009年には大幅なマイナスであったアジア向けで増加に転じたことが、プラス要因となっている。

なお、東日本大震災によるサプライチェーンへの影響は、一部の部素材では入手しにくいなどの状況はあったが、流通在庫等での対応などで、予想より影響が少なかった。
【我が国重電産業の
強みと弱み】

(1)強み

我が国には、高度な技術ニーズに応えられる高い技術力・製品開発力を有した企業が多い。具体的には、発電分野では、超々臨界発電や石炭ガス化複合発電(IGCC)、CO〓分離技術など、世界最高レベルの発電効率と低炭素化が強みであり、また予防保全等の運転・管理ノウハウにより、こうした高効率・高稼働プラントを長期にわたって維持できるところに強みを有している。また、送配電分野では、世界最高品質の系統制御技術による高い系統信頼度、高効率・大容量の超高圧送電技術や変圧器のコンパクト化などに強みを有している。
(2)弱み

我が国重電産業は、欧米企業に比べて海外展開が遅れており、海外シェアの獲得に苦戦している。特に、欧米企業が現地企業へのライセンスや合弁等の協業や、現地調達、現地雇用等のローカライゼーションを先行して推進しコスト競争力を高めており、一方、中韓企業は安価な人件費等を背景とした圧倒的な価格競争力を有しており、相対的に日本企業は高い品質と技術力を有しているもののコスト競争力が弱く、十分に強みを発揮できていないというのが現状である。

このため、例えば発電分野では、発電ボイラーや蒸気タービンの世界シェアの半分以上を中国企業が、ガスタービンの世界シェアも80%以上を欧米企業が有しており、送配電分野でも、欧州企業が世界シェアの半分を占めるなど、日本企業のグローバル化は、発電、送配電ともに苦戦を強いられている状況にある。
【世界市場の展望】

国内市場は、電力需要の将来的な伸びの鈍化や公共事業への投資抑制などにより設備需要の拡大は期待できない状況にある。

一方で、世界の発電電力量は2007年の20兆kWhから2030年には34兆kWhに7割増加する見通しであり、このうち石炭火力は8兆kWhから15兆kWhと9割近く増加。これに伴って、石炭火力の発電設備容量も2030年までに現在から倍増すると見込まれている。また、発電・送配電分野における市場規模を見ると、現在から2030年までの間に、全世界の電力セクターで約14兆ドルの投資が必要とされ、中国市場で約3兆ドル、インド市場で1・3兆ドル、ASEANも6千億ドルと、日本の5千億ドルを大きく上回ることが見込まれている(出典〓IEA
World
Energy
Outlook
2009)。
【我が国重電産業の
展望と課題】

(1)今後の競争力強化に向けた対応

地球規模での環境配慮が国際的にも求められているなか、近年、途上国においても、資源制約や環境問題から高効率等の技術を評価する動きがあり、我が国重電産業が持つ省エネルギー、環境対策に関する高い技術の活用が期待される。このため、例えば発電分野では高い製造技術力や優れた運転・管理ノウハウを生かした事業に重点を置いて、海外展開することが重要であり、日本の強みを顕在化させるための相手国への働きかけや公的金融支援の強化などを通じた日本企業の海外展開を支援する取り組みが必要。
(2)アジアを中心としたグローバル戦略

成長するアジア市場に参入していくためには、現地ユーザーのニーズに的確に対応したものづくりを行っていくことが重要である。そのためには、我が国メーカーにおいてもさらなる現地化を進め、現地ニーズへの適合とコスト競争力の強化を戦略的に図っていくとともに、知的財産権の保護、技術流出防止対策などに配慮することが必要と考えられる。

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