再びの回復基調の安全対策機器市場 設備投資回復で安全対策への取り組みが大きく進展 施行延期の改定欧州機械指令が来年スタート 7月から労働安全衛生規則が改正

産業の安全対策が年々進み、関連機器需要も増加している。とりわけ製造業では企業の社会的責任(CSR)の一環として、事故を起こさない企業風土の創出を求められる社会的変化も大きく影響し、取り組みが進んでいる。製造業では、電子的な機械安全対策機器の普及が顕著に進んでいることもあり、電機機器メーカーの安全対策機器市場への参入が目立つ。グローバルな安全意識の向上もあり、安全意識を生産現場だけでなく、営業や開発、管理部門などでも共有しようとする取り組みも進んでおり、そのための資格制度もスタートしている。2012年からは、施行が延期されていた欧州機械指令の改定がスタートすることになっており、安全対策も新たな段階に入ろうとしている。リーマンショックで低迷していた安全対策機器市場も、再び回復基調になっており、12年にかけて市場拡大が継続することが見込まれている。
厚生労働省がまとめた、10年1~12月までの国内の休業4日以上の労働災害死傷者数は、全産業で10万7759人と、10年比で2041人(1・9%増)増加している。製造業は2万3028人(構成比21・4%)で、18人(0・1%減)とわずかであるが減少している。それでもその他(構成比42・3%)を除くと、建設業の2万1398人(同19・9%)よりも多く、産業別のトップとなっている。このうち死亡事故は、全産業で1195人と同120人(11・2%増)増加している。製造業は211人で、建設業の365人に比べると少ないものの、09年と比べると25人(13・4%増)の増加となっている。

10年の製造業での死亡災害の発生要因は、はさまれ・巻き込まれが68人と最も多く、続いて墜落・転落の40人で、この2つが原因で約半分が死亡している。

日本の機械安全対策は欧米に比べ大きく遅れていたが、01年6月1日に厚生労働省から出された「機械の包括的な安全基準に関する指針」で安全対策を取り巻く状況は大きく変わった。罰則規定こそないものの、工場など製造業での安全対策推進を明記したことで製造現場を変える大きなきっかけをつくった。

さらに、06年4月には労働安全衛生法が改正され、安全対策に関する記述が追加された。この追加の中では「危険性・有害性等の調査及び必要な措置の実施」として、リスクアセスメントと必要な安全対策措置が努力義務と定義付けされた。

同時に、「安全衛生管理体制の強化」として、各企業に安全衛生管理員の配置が義務付けられ、危険性・有害性などの調査や安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善などの有効性を議事録に残すことも義務付けられた。

07年7月には厚生労働省から、機械のリスクアセスメントの具体的な指針が改正され、この実施を求める通達が関連団体に出されている。この動きと前後して、03年11月に国際安全規格ISO12100が発効。これをベースにしたJISB9700が制定されたことで、安全規格の国際整合化が実現した。

これまで、日本の生産現場では事故を減らすためには、それぞれの工場で安全に作業を行うための訓練や教育を徹底するという考えが主流で、いわば、事故があった時の責任は主に機械や装置利用者にあったといえる。しかし、欧米の考え方は「人は間違える、機械は壊れる」というのが根底にあり、従って日本が「災害ゼロ」を目指しているのに対して、欧米では「危険ゼロ」を目指すというところに大きな考え方の違いがある。

欧米の安全対策が進んでいるのは、前述の安全に対する考え方の違いに加え、日本に比べ多民族国家で言語なども異なることから、意思や言葉が通じなくても危険な作業が安全に行われるように機械や法律的な整備が行われていることも大きい。最近は日本でも、熟練作業者の減少やパートタイマーや派遣労働者、言語・文化の異なる外国人作業者の増加など従来の生産現場とは変わりつつあり、そういった意味で世界共通の誰でもわかる安全ルール・対策の導入が必要となっている。

安全対策機器市場は、リーマンショックによる設備投資減少の影響を受け大きく減少していた。日本電気制御機器工業会(NECA)の会員を中心にした安全機器の自主統計では、08年度の135億円から09年度は約90億円まで減少していたが、10年度は約150億円(71・8%増)と過去最高の出荷額となっている。

月ベースでは13億円弱の出荷額と言える。この傾向は世界的に見ても同様で、世界の市場規模は1500億円ぐらいまで回復しているものと推定される。

こうした中で欧州の機械指令が改定され、09年に施行の予定が今年12月31日まで先送りされた。EN954―1からEN
ISO13849―1への移行で、欧州に輸出する機械・装置の安全制御回路は、ISO13849―1〓2006への対応が求められることになっていた。従来のISO13849―1〓1999は、「カテゴリー」で安全制御システムを評価していたが、改定後は「PL(パフォーマンスレベル)」で評価することになる。この背景には、安全関連の制御システムを構成する部品がメカニカル部品から半導体などの電子部品に移行し、制御の方法もハードワイヤからソフトウェアによるロジックに変わりつつあることがある。

今回の改定では、カテゴリーの概念を基本に残しながらも、IEC61508の「機能安全」の概念である信頼性や品質も取り入れることで、リスクの見積もり方法も変化することになるが、リスクアセスメントを実施するうえでは分かり易くなっている。

07年7月の厚生労働省からの機械のリスクアセスメント指針改正では、きちんとしたリスクアセスメントを行うことを求めている。リスクアセスメントは、機械、作業の危険源はどこなのか、それを安全にするためには何をするべきなのかを探すことで、それに基づいて危険源を一つひとつなくしていくことで、安全な機械、安全な作業を確保できることに繋がる。

また、厚生労働省では今年7月から労働安全衛生規則を改正、工作機械以外の機械に対してもストローク端による危険を防止する措置を義務付けるとともに、制御機能付き光線式安全装置(PSID式安全装置)、プレスブレーキ用レーザ式安全装置を新たな安全装置として追加するなど関連規格を改正施行した。

機械のストローク端については、これまでも工作機械についてその危険を防止するための覆いなどを設けることが規定されていたが、移動するテーブルを有するタレットパンチプレスのテーブルと建物設備などの間に挟まれ作業者が死亡する災害が発生していることから、今回の改正で工作機械以外の機械に対してもストローク端による危険を防止することを義務付けたもの。そのため、従来の金属工作機械だけでなく、NCルータなどテーブルが移動する木材加工、樹脂加工用機械など適用範囲が広がった。

また、改正動力プレス機械構造規格は、ポジティブクラッチプレスを原則製造禁止にし、液圧プレスでのスライドの落下防止措置を充実させている。安全プレスにおいても、両手操作式安全プレスのスライド等の操作部は左右の操作の時間差が0・5秒以内を要件化し、光線式安全プレスは改正前の防護高さを最大400ミリから危険を防止するための必要な長さに変更、さらに光軸間隔を70ミリから20ミリへ、安全距離に400ミリ以上を追加した。このほか、サーボモータを使用したプレスのブレーキ性能・故障対策等を規定、非常用停止装置の操作部として押しボタンスイッチ以外のコード式やレバー式も認める、両手操作式安全プレスのスライド等の操作部を直線距離で300ミリ以上離す以外の方法も認めるなどとなっている。

プレス機械またはシャーの安全装置構造規格改正は、手払い式安全装置を原則製造禁止し、一定のものに限り当分の間は製造を許容、安全装置として新たにプレスブレーキ用レーザ式安全装置を追加している。

機械安全対策機器を取り付けることで、生産現場で作業中に事故の危険性が生じるたびに作業が中断すると生産効率が下がるとして、多少の危険性があっても機械を止めないで作業を行えるように安全機器を外したり、無効にしたりすることが良く行われている。安全思想で先進している欧州では、安全性と生産性を両立させるための例として、ライトカーテンを使った安全システムで、人が通った時は機械が停止し、ワークが通った時は安全機能が働かないミューティング技法によって、無駄な生産ラインの停止を防ぐ安全対策を行っている。このようなリスクアセスメントをきちんと行うことで、頻繁に機械や作業が中断することがなくなり、生産性の向上という課題解決にもなってくる。

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