アジア中心に好調の温度調節器(計)市場 半導体・液晶・食品分野で旺盛な需要 コスト、スペース盤内蔵化の動き活発各社独自のアルゴリズムで差異化

温度調節器(計)市場は、中国を中心としたアジア市場を中心に好調に推移している。国内では3月に東日本大震災が発生し、温度調節器市場も少なからぬ影響を受けたが、主要市場である半導体・液晶製造装置関連がリーマンショック以後、急速に回復、さらに新規市場であるソーラーパネル関連向けも拡大を続けている。また、安定市場である食品や成型機関係も拡大基調で推移しており、依然として需要は旺盛である。一方、大震災の影響で部品不足が懸念されるが、専用メーカーでは部品の手当てを順調に進めており、製品の生産には支障がない模様だが、震災の復旧・復興需要が優先されることから、これにかかわる供給不足を懸念する声も一部で出ている。製品的には、小型・薄型、高速処理化を基調に操作性や視認性の向上、設定作業性の改良などが進んでおり、市場ボリュームが大きい成型機分野やFPD分野、半導体分野では盤内化が進んでいる。また、最近の傾向として温調機能をPLC(プログラマブル・コントローラ)で実現するケースが増えている。
温度調節器(計)は、温度、湿度、圧力などの各種センサーから取り込んだ測定値を必要とする設定値と比較して、その差を修正するための調節信号をリレーやアクチュエータなどへ出力し、対象物の温度や湿度を調節する役割を果たしている。

温度調節に関して、昨今の電子機器が高密度で小型化が進んでいることから、成型品などでは微妙な調整が重要性を増している。特に、半導体やFPDなどでは、歩留まり率に関係してくるので高精度な温度調整が必要となってくる。

食品分野では、味覚や品質管理上から温度調整を頻繁に行うことで、消費者の嗜好と食品の安全に応える取り組みを続けている。

現在の温度調節器(計)は、サーモスタットなどを使ったメカニカル式から、半導体技術を利用した電子式へ大きく変わっている。電子化によって温度精度が格段に向上することで、より緻密なものづくりが可能になった。半導体の搭載で価格面でも大きく下がり、需要裾野も拡大した。

市場規模は、汎用電子温度調節器(計)で約200億円、それにボード・ユニットタイプやPLCなどの組み込みモジュールタイプなどを合わせると250億円から300億円と推定される。しかし、単価の下落が続いていることから、あるメーカーでは年率0・7%ほど下がると見通している。市場をグローバルに見ると、中国エリアでの売り上げが前年比約20%アップしている。

リーマンショックの影響から温度調節器(計)メーカーは大幅に売り上げを落としていたが、一昨年秋以降、上昇基調に転じている。3月に起こった東日本大震災により、温調器市場も多少影響を受けたが、半導体・液晶製造装置関連が順調に回復、さらに食品、電子部品成型、コンビナートなど、従来から安定している分野も堅調に推移しており、需要面では旺盛である。

ただ、温度調節器(計)のユーザーの多くは中国を始めとした外需向けが全体売り上げを牽引しており、このところの急ピッチな円高傾向もあって、温度調節器(計)などの電子機器・部品も現地調達志向を強めつつある。特に、装置ベンダーにとり中国などグローバル市場での市場拡大が至上命題であるが、中国企業の競争力アップにより、日本企業の優位性が小さくなっている。

最近の傾向では、市場ボリュームが大きい成型機、FPD、半導体分野などでは年率10%ほどで盤内化が進んでいる。中でも温調機能をPLCで実現するケースが増えており、特に成型機、精密空調、包装機などの分野で採用が拡大している。

盤内化が進む背景として、次の要素が挙げられる。装置ベンダー間の競争激化により、コストダウンが進んでいる。例えばタッチパネルを採用する場合、温調器1個ずつに表示は不要となる。また、FPD、太陽電池、半導体など温調点数が多い市場での加工物の拡大により、制御コンポの設置スペースが小さくなり、設置の自由度が必要になっており、制御点数が多いアプリケーション(6点以上)ではさらなるインパネ化が加速するものと見られる。温調機能を、PLCで実現するケースも増えている。その理由としては、ハードウェア、ソフトウェア両面でPLCのコストダウン、温調機能の充実による信頼性と機能のアップ、設計自由度の高さ(部分最適から全体最適へ)、グローバルでの調達性、さらに専業メーカーへの依存体質からの脱却などが挙げられる。

最近の温度調節器(計)製品傾向は、軽薄短小化、高速・高機能化、視認性や操作性の向上、ネットワーク化対応、入力種別のマルチ化などが進んでいる。

外形寸法は、DINサイズの96ミリ角から48ミリ×24ミリまで各種あるが、搭載機器・装置の小型化傾向に合わせ小型・薄型化傾向が強まっており、特に薄型(短胴)化が著しい。従来は奥行き100ミリ前後が多かったが、最近は60ミリを切る製品も増えており、機器の省スペース化に繋がっている。

視認性では、遠くからでも確認できるように数字表示部の大型化傾向が目立つ。表示素子はLED表示が多いが、LCDとバックライトを組み合わせた表示も増えている。LEDと同等の見易さに加え、グラフやメッセージなどの表示もできるのが評価されている。フルドットのLCD表示器を搭載することで、11セグメントのアルファベット表示機能、制御設定値やパラメータ設定、出力値アナログバーをはじめ偏差値トレンド記録表示、偏差値アナログバー表示などが可能になる。視認性の高いLCDにより、5桁3段の表示も可能で、表示の情報量が増大するメリットがある。

表示色も赤、緑、黄などカラフルになっており、状況判断をしやすくしている。この表示色を変化させることで、安全性向上を図っているタイプもある。例えば、警報動作や制御の状態に応じて測定値表示部の色を緑色や赤色に自動で切り替える。色の変化は緑から赤、または赤から緑を選択できるもので、制御の状態が一目でわかる。

高速処理化は、各メーカーとも特徴を出した独自のアルゴリズムで制御技術をアピールしている。

例えば「RSS(ランプ・ソーク・スタビライザー)機能」では、ランプ制御開始時の追従性向上とソーク制御移行時のオーバーシュート抑制を同時に行うことで、プログラムの制御性を一段と向上させている。また、植物のザゼンソウを有するフィードバック形発熱制御の特性などを応用して、省エネ化などに繋がる制御アルゴリズムも開発されている。

操作性ではダイレクト操作が可能なキーの搭載や、サポートソフトウェアの充実を図り、保守性の簡単化では長寿命のリレー出力により、メンテナンスサイクルの長期化や、予防保全をサポートする制御出力のON/OFF回数のカウント機能などを備えている。

選定の簡単化では、アプリケーションの違いで入力センサーが異なる場合でも対応が容易なマルチ入力機能や、各国の船舶規格に対応するなどグローバルなサポートサービス体制の強化などが挙げられる。

製造現場の熱処理工程は、工業炉をはじめ、多様な分野での高度な温度制御が製品の品質を高める重要な要素と位置付けられ、温度調節器や周辺機器の用途拡大につながっている。半導体やFPDの製造工程では、ステッパー、コータ・デベロッパーの高安定温度制御、チャンバーの高応答温度制御、ワイヤボンダーの温度制御、FPD焼成炉の多点温度制御、ウェットステーション薬液の温度・レベル管理、拡散炉の温度制御などに温度調節器が使用されている。

例えば、半導体の微細化進展の中で、温度計測精度の向上など温度制御に対する高性能な温度調節器の役割が求められ、製品の歩留まりを大きく左右している。さらに、シリコンウエハの熱処理が可能な拡散炉は、多数枚のウエハを処理容器内に収納し、ヒータで加熱して1000℃前後の熱処理をする。しかも炉内の温度分布を均一にする必要から複数のゾーンに分けて、面としての温度制御が必要だ。

ステッパー、コータ・デベロッパーには、1000分の1℃の分解能を持ち、電源電圧のわずかな変動にも対応する温度調節器が使用されている。

これらのハイテク分野の製造工程だけでなく、恒温恒湿の状態を保つための温度制御は、産業界で品質を向上させながら生産性を高めるものづくりに欠かせなくなってきている。

包装機械も、原料に対するヒータによる加熱温度の調節・管理が重要だ。ファジィ制御とPID制御で温度を安定させるため、デジタル入力によりオートチューニングの開始・停止指令を行っているほか、ヒータ断線警報、温度警報機能が付いており高品位な成形が可能となる。

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