堅調な動き示す産業用トランス市場 主力用途中心に旺盛な引き合い 震災復旧・復興関連の需要も活発化 再生可能エネルギーなど新分野に注目接続方法の簡易化で作業性向上

産業用トランス市場は、FA分野、ロボット・工作機械分野、医療機器分野、防災機器分野、IT分野、発電関係、アミューズメントなど幅広い市場に支えられ、堅調な動きを見せている。東日本大震災後の復旧・復興需要も徐々に出はじめており、今後、さらに拡大する可能性もある。製品面では軽量・コンパクト化が進み、ねじアップ式端子台タイプ、通電時LED表示タイプ、事故再発防止トランスなど新しい機能を持つ製品が伸長しており、金型レスのプリプレグ方式モールドトランスの需要も増えている。また、特注品の比率が高まっているほか、電力関連を中心に大容量大型トランスの需要も高まっている。一方、トランスの主原材料である銅や鉄、樹脂の価格が高騰、トランス製品値上げの動きも、大震災前後から、銅や鉄の相場、樹脂製品の価格上昇が一服したことで、製品の値上げは見送りの状況となっている。市場の動きでは、大震災後、風力発電や太陽光発電など安全でクリーンな新エネルギーが改めて注目されており、新市場に向けた製品開発にも期待がかかっている。
トランスは、電源電圧を安定させたり変圧させたりする役割を持っており、機器を陰から支える重要な部品として、あらゆる産業機器に使用されている。電力系統に使用される大型タイプから、電気設備、電子機器・装置に組み込まれる小型タイプまで、多種多様な製品がそろっており安定した市場を形成している。

産業用トランス市場は、リーマンショック以後、産業全体の停滞で出荷が減少したが、一昨年以降、半導体関連を中心に電子部品分野など市場の回復とともに需要が急速に回復、リーマンショック前の約90%の水準まで戻っている。さらに電力関連の需要も旺盛で、高容量・大型のトランスが伸長しており、大型・高容量トランスの製造ラインを増設するメーカーもある。

経済産業省の機械統計によるトランス(インダクタを除く)の生産金額は、2008年153億円、09年はリーマンショックによる市場の落ち込みで140億円と減少したが、10年はリーマンショックからの回復で162億円と前年比15・7%増加している。

さらに、ロボット・工作機械分野やIT分野、情報・通信分野、アミューズメント分野、医療機器分野などでも大きく需要が伸びている。また、再生可能エネルギーへの関心の高さから、風力発電向け製品は以前から需要が伸びていたが、東日本大震災の影響で改めて安全・クリーンな風力発電に注目が集まっており、太陽光発電関連とともに、さらなる市場の拡大が予想される。

また、特注品やカスタムメイドトランスの比率も高まっている。ユーザーからは「同じ大きさで容量の違うトランスをシリーズで設計・製作して欲しい」といった様々な要望が多く、専業メーカーでは各種のニーズに合わせた改良・工夫を進めており、新たなアプリケーションの拡大に繋がっている。

一方、原材料価格は、銅相場が08年の夏にキロ当たり1000円を超えたが、同年秋口から急落、一昨年初め頃は350円前後まで下落した。昨年からまた上昇に転じ、今年に入ってから800円を超えている。震災前後から相場価格は落ち着きを見せ、現在は800円から830円の範囲で推移している。鉄の価格も昨年はトン当たり6万円を超え8万円まで上昇したが、今年に入って8万円台で落ち着いており、急上昇の動きは見られない。

石油化学製品も原油価格が値上がりしていることから、今年に入り樹脂類が約10%から20%ほど値上げされたが、現在は値上げの動きはない。

トランスの材料に使用される石油系製品では樹脂のほかにワニス、テープ類などがあり、ワニス価格は昨年の倍弱、テープ価格は昨年の約2・5倍とそれぞれ値上げしている。

トランスは本体の原材料の約80%が鉄や銅で占められており、製造原価に対する原材料費比率が30~45%と高い。例えば容量30VAでは材料費が約30%で、容量が大きくなるほど材料費の比率が高くなる。

トランスメーカーでは、原材料の高騰から昨年後半から大震災前にかけ、製品値上げを画策する動きもあったが、現在は主材料の銅、鉄の価格が落ち着いていること、震災の復旧・復興需要が徐々に出てきており、こうした震災への対応を優先的に考えていることから、早急な製品値上げは行わない状況になっている。

トランスメーカー各社は、リーマンショックが落ち着いてきた一昨年以降、積極的な営業展開を行っているところが多く、新規に販売代理店の獲得など販売ルートの拡大を図っている。特に首都圏の営業拡充や地方の主要都市での拡販を積極的に推進しており、大手の新規顧客開拓に繋がっている。

さらに、物流体制の整備、ネット販売の進展などの観点からも、全国的な販路展開に取り組むメーカーが増えている。特に、市場の大きい首都圏は関東以外のトランスメーカーにとっても重要な地域で、地域に強い商社と販売提携し、営業活動を活発化させ浸透を図っている。

ここ数年、産業用トランスに関してユーザーから特注品、カスタムメイドに対する要求が強まっている。メーカーでは標準品販売と別の形で特注に対応する姿勢も強化している。特注品は、組み込む機器・装置、設備に合わせて容量、サイズまで特別に製作するため、トランスメーカーにとってコスト、納期面での負担が大きいと言えるが、あるメーカーでは、小型から大型のトランスまで一貫生産ができる最新鋭の機器を導入し、コストの低減と納期の短縮化を図っている。

一般的に大型トランスは産業用途での採用が多く、使用分野・製品ごとに仕様が異なるため、多品種少量生産対応が可能な専業メーカーによって供給されている。また、大型を中心とする産業用トランスは重量が重いので、輸送コスト面から、ユーザーに近いところで生産する地域密着型での製造・販売が主流となっている。海外規格の取得も進んでおり、ほとんどのメーカーが海外規格対応品をラインアップしている。

機能面では、トランスの軽量・コンパクト化に加え、接続方法の簡易化など作業性の向上、マルチタップ化、LEDによる通電表示などの工夫・改良が進んでいる。

作業性の向上では、結線の作業性・信頼性の向上、デザイン面などの観点から結線部への端子台の採用が一般化している。さらに、タブ端子台を採用しねじを使わず、リセプタクル端子をタブに差し込むだけで結線が完了するタイプのほか、最近では、アップネジの採用でねじを緩めることなく丸型圧着端子の接続ができるタイプがシェアを伸ばしている。ねじが脱落しないため、結線作業の効率化が大幅にアップすることに加え、従来のねじ式と比較すると作業時間が80%以上短縮できる。また、保護カバー付きアップねじ式端子台にLEDを取り付け、通電中はLEDが点灯し通電状態が一目で確認できるタイプが好評を得ている。

さらに、1次側(入力)とともに、2次側(出力)にマルチタップを採用することで、1台のトランスで12種類の電圧に対応することができ、入出力の電圧変更が簡単にできる特徴を持つ。

軽量・コンパクト化への取り組みとしては、絶縁紙の使用枚数削減がある。これは環境対策面でも効果的で、今後も様々な工夫が施され改良が進むものとみられる。

また、最近発売されたタイプは、絶縁種別をB種、巻線仕様をノーレア方式にすることで、従来品と比べ20%~40%の軽量化を実現した。これにより、1kVAクラスの場合、約3キログラムの減量となる。サイズも10%~20%コンパクト化が図られている。そのほか、用途ごとに変わる電流容量に容易に対応できるように、数個を並列に接続できるモジュールタイプが一般化している。

製品仕様の改良では、コイル巻線の工夫、鉄心の改良などがある。巻線では、複数巻線シングルコアに対して、複数コアのシングル巻線にすることで大幅に薄型化できる。近年では、巻線の自動化技術も進み、独自の自動巻線装置を使うトランスメーカーもある。

民生用途の小型タイプなどでは、既に巻線の自動化がなされているが、大型タイプが中心となる産業用トランスでは、まだ手作業で行っているところが多い。自動化は、同じ巻線数でも手作業などの従来方法よりコンパクトに巻け、小型軽量化につながっている。

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