混沌時代の販売情報力黒川想介 必要に気づいてもらう質問とは

18世紀の後半から始まったとされる産業革命は、西洋から始まり「燎原(りょうげん)の火の如く」広まり、それまでの社会構造を世界的規模で変えていった。革命的変化を引き起こしたものは、新たな動力の発明と機械技術であった。更に電気の発明・発見により電気技術が発達して、19世紀から20世紀にかけて急速に工業化社会を築いてきた。

20世紀も80年代頃になると脱工業化社会という言葉が散見されて、ポストインダストリアル社会は情報化社会と言われるような認識が一般化されてきた。

工業化社会から、情報化社会に移行させてきた主役は技術である。新しい技術の誕生によって、世の中はどんどん便利になっていく。便利になればなるほど、人は身体の各部を動かさないで済んでしまう。楽をする人の身体的機能は衰える。

そのことに気付いて、スポーツジムが盛んになり、公園や路上でウォーキングやジョギングをする人達が増えてくる。また、文章を作るのにパソコンを使いだすと、とても便利であるから文章をペンで書かなくなる。パソコンには漢字変換があるため、ペンで字を書かなくなったとたん、漢字を読めるが書けなくなっていく。そのことが寂しいと感じる人達が増えてくると、漢字検定が流行し検定機関は大儲けする。

便利になると失っていくものは増えてくるが、それに気付いて人は一応の手当てを試みている。便利を作ってきた技術は、更に便利を追求して新しい技術を生んでいく。便利になって失ったものをカバーするためにも、新しい技術は生まれていく。

一方、事によっては人にやさしく、社会に適合するために通過してきた技術の適用を視野に入れなければならない場面も増えつつある。

便利になった世の中を作ってきた工業化技術や情報化技術に、電気部品や制御コンポーネント業界は大きくかかわってきた。
60年代前半には、動力を人手でコントロールする機械が隆盛を極めていた。後半に入ると自動制御付きの機械が多くなり、70年代に入ると機械単独の動きで生産するのでなく、機械と装置のシステムで生産するようになった。このまま進んで行くと、いつか技術は技術と呼び製造工程がオール自動化になる。そして人手のいらない無人の工場になるのではないかと、制御部品やコンポーネントの販売員は感じていた時代もあった。

そのくらい、FA分野の自動化技術の進みは速かった。これから先も生産効率をあげる技術の開拓は、とどまるところを知らずに進んでいくのであろう。また、その進行に待ったをかける諸条件も現れ、技術はそれらの諸条件を乗り越えるための技術開発も行われるのであろう。混沌とした時代の中にいても、前記のように大筋の流れは予測できている。

しかし、実際にはどこから、どのように変わって抜け出していくかは自分達が領域としている市場の変化を、現場の目をもって見逃さないようにしないとわからない。そのために現場の販売員の情報収集能力を鍛えておく必要がある。顧客に何を求めるかによって、質問の種類が分けられる。

前回までに(1)具体的情報を求める(2)具体的情報を求めずコミュニケーションを求める―の2点を詳述してきた。3つ目は、必要に気づいてもらうことを目的とした質問である。

技術者は、技術として壷つぼにはまって複雑さに巻き込まれる場合がある。そこで技術に素人の販売員が単純に示唆できる場合がある。一例を挙げると「全てを自動化や電子化せず、一部を人手にしたりメカでやればどうなるんでしょうか」などのような質問をすることである。
(次回は12月8日掲載)

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