総合力を研ぎ澄ませ功勢へ中部地区 強まるFA技術活用した新市場開拓 関西地区 コラボによるシステム提案推進

中部地区の産業の中心と言えば、自動車関連と工作機械だが、2010年10月中部経済産業局発表の最近の管内総合経済動向によると、自動車は新興国向けが順調であることや、国内向け低燃費車が好調であるものの、エコカー補助金終了により、増産に慎重な動きもあり、横ばいとなっている。自動車部品は、国内完成車向け、国内メーカーの海外現地工場向けが堅調なほか、アジア向けが好調に推移しているがエコカー補助金終了により、こちらも横ばい。

金属工作機械は、国内向けは低水準で推移しているが、海外向けに持ち直しの動きが見られ、全体としても回復基調にあるとしているが、最近の急激な円高により、再び厳しい状況にある。一方、半導体素子・集積回路は、記憶素子(メモリなど)で一部情報通信機器向けが好調なことなどから、高水準で推移している。

こうした背景の下、中部地区のFA商社を取り巻く環境も厳しいが、売り上げの増減は企業によって差が見られる。自動車関連の取り扱いが多い商社は苦戦している。エコカー補助金で多少持ち直してきたものの、補助金制度が終わった反動で、完成車メーカーの売上げは11~12月にかなり落ち込むと見ている商社もある。ただし、軽自動車はそれほど落ち込まないので、自動車部品メーカーの方は影響が少ないようだ。

自動車を始め、日本国内の工場設備が過剰であるのは言うまでもなく、長期的には制御、設備関連の投資に大きな期待は出来ないという見方は各社とも一致している。さらに市場が縮小することはあっても、拡大することはないと考えられる。好景気時のように全ての商社の売上げが伸びていける時代ではなく、大幅な業界再編が必要であるという厳しい予測も出ている。こうした状況になると、海外に目が向くのは当然で、現在は尖閣諸島問題で関係がギクシャクしているが、各社とも中国での事業に力を入れている。

現地に拠点を設けて、情報収集を行い、国内メーカーの海外進出にも対応できるようにしている。中国の現地子会社のサポートを行い、日本の親会社での仕事に結び付けるといった形で気配りしているところもあるようだ。ただし中国にも現地の商社が多数あるため、それらとの競争になりそうだ。

また、中国の地元企業の製品品質も向上してきているため、中国から日本に持ってくる製品を探している商社も見られる。

このような厳しい環境下では、価格や納期が受注の大きなポイントを占めるのは間違いないが、素早い対応も求められる。商社の営業マンが毎日のように顧客を訪れていれば、即座に資材などの発注に応えられる。もちろん、商社は取扱いメーカーが多く、品ぞろえが豊富であることだけでなく、会社の規模が小さくても担当者がすぐに来てくれるというのは一歩のリードにつながる。

さらに単に顧客にカタログを持っていくだけでは売れないので、営業マンには提案力を持ってシステム販売を行ったり、電子、電機、制御、計測など幅広い知識を持つことが求められる。

変革の時代の商社には、メーカーと顧客の要望に合うように、総合力を研ぎ澄ませ高めていくことが必要なようだ。関西地区の動向は、昨年後半から今年7月辺りにかけV字回復を見せたが、8月以降はその勢いが失速気味となり、落ち着いた状況となっている。

あまりに急激な回復を見せたため、その反動による一服状態ということもあるが、制御機器業界にとって大きな市場である半導体関連市場での設備投資が、下期から若干翳りを見せていることもひとつの要因となっている。

各商社は、それでも何とか年内までは受注案件を抱えているところが多いが、3月期決算の第4四半期(来年1月から3月)は、「見通しがつきにくい」というのが大方の見方である。これは、商社筋の話だけでなく、制御機器メーカーも同様の捉え方をしている。

加えて円高傾向や、尖閣諸島沖における中国漁船と日本の巡視船との衝突事件に端を発した中国との軋轢なども、不安要素の一因になっている。

このような厳しい状況にもかかわらず、日本政府は未だ経済立て直しのための効果的な施策を打ち出していないこともあり、失望感が表れている。

こうした状況下、各流通商社では難局を乗り切るため、独自の戦略を打ち出している。

各商社に通じる共通のテーマでは「さらなる顧客満足の徹底」、「省エネ・コスト削減」、「安全・安心」、「環境対策」、さらに「見える化の推進」などが挙げられる。

顧客満足の徹底では、従来の単品売りだけでは顧客が満足できないケースが増えている。例えば「省エネ・安全などのテーマを絡めたシステム提案でソリューション解決を図る」というように、システム提案が主流になりつつある。

特に、省エネや見える化では、製品単品売りだけではトータル的な見える化に繋がらないケースが多い。例えば、電気使用量の見える化では小規模のユーザーの場合、電力計だけでは電気の使用量を確認するために、電力計が設置されているところまで行くことになり、集中管理がしにくい。

そこで、ある表示器メーカーでは、場所を選ばず携帯可能な無線型の電力監視プログラマブル表示器を発売し注目を集めている。無線で飛ばされた電力計のデータを持ち運びできる表示器で受信し、画面で電力の使用を監視するというものである。

携帯可能なので表示器は1台で済み、電力使用量の見える化が図られる上、設備導入費の節約が可能となる。メーカーによると20%以上のコスト減が図られるという。

一方、システム提案が加速していることから、商社側も積極的に関連する制御機器メーカー同士の協業やコラボレーションを提案推進している。最近では、モーションコントロールなど制御系以外に、機械系・メカトロ系のメーカーが絡んでくることも多く、取引するメーカーの業種・業態の幅が広がっている。

さらに顧客先の業種・業態も広がりを見せており、各制御機器商社では、長年FA制御の分野で培った制御技術を、FA以外の分野に応用するケースが増えている。太陽光発電関連やハイブリッド車・電気自動車の充電スタンド、外食産業やコンビニエンスストア関連、医療関係、電力関係、さらに植物工場などの分野などが挙げられる。

こうした、幅広い顧客層に対応するためには、技術面にも強い営業担当者が必要で、商社でもこうした営業担当者の育成を加速させている。

「省エネ・コスト削減」、「安全・安心」、「環境対策」といった旬のテーマを基本に、さらなる顧客満足の徹底と、拡大する顧客層に的確に対応する体制を整えつつある。

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