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急速に需要回復する産業用トランス市場ロボット・工作機械、医療、IT、新エネルギー関連で堅調な動き 500VAクラスの大型品に活発な動き原材料価格の動向を注視 注目される金型レス式製品ノイズや耐雷対策でも用途拡大 新興国中心に海外市場の開拓へ規格取得を推進

産業用トランス市場は、FA分野、ロボット・工作機械分野、医療機器分野、防災機器分野、IT分野、発電関係、アミューズメントなど幅広い市場に支えられ、堅調な動きを見せている。特に最近では、電力関連を中心に高容量の大型トランスの需要が伸びているほか、特注品の比率が高まっている。機能面では軽量・コンパクト化が進むほか、ねじアップ式端子台タイプ、通電時LED表示タイプ、事故再発防止トランスなど新しい機能を持つ新製品が伸長している。また、金型レスのプリプレグ方式のモールドトランスも伸長している。銅相場は、今年春頃にはキロ当たり800円近くまで上昇したが、このところ720円まで下落している。しかし他の材料で値上がりしているものもあり、ユーザーのコストダウン要求もあり対応が難しい局面も目立つ。海外規格を取得することで外需に対応する取り組みも目立っており、円高など市場を取り巻く要因を見ながら展開している。トランスは、電源電圧を安定させたり変圧させたりする役割を持っており、機器を陰から支える重要な部品として、あらゆる産業機器に使用されている。電力系統に使用される大型タイプから、電気設備、電子機器・装置に組み込まれる小型タイプまで、多種多様な製品がそろっており、安定した市場を形成している。

経済産業省の機械統計によるトランスの生産額は、2007年(1~12月)が590億円、08年は前年比12%減の519億円、09年は設備投資の大幅抑制の影響で同21・6%減の404億円と減少したが、市場は昨年後半から急速に回復しており、今年は大幅に伸長する見込みである。

産業用トランスの市場環境は、半導体製造装置関連、自動車などの工作機械関連や成型機分野など主要市場が、昨年前半までの停滞状況から一転し急速に需要が回復している。また、近年著しい成長を示している風力発電などの新エネルギー分野のほか、情報・通信分野、アミューズメント分野、券売機分野での動きが活発であり、食品・薬品・化粧品などいわゆる三品業界でも順調な動きを見せている。

民間の設備投資が活発なことに加え、電力関連の需要も旺盛で、特に500VAといった高容量の大型トランスが伸長しており、大型トランスの製造ラインを増設・新設するメーカーが出ている。また、ここ数年来、増加傾向にある特注品やカスタムメイドトランスの伸びが依然として高い。例えば、ユーザーから、同じ大きさで容量の違うトランスをシリーズで設計・製作して欲しいという要望が多数舞い込むなど、各種のニーズに合わせた改良・工夫が進み、新たなアプリケーションの拡大に繋がっている。

原材料価格は、銅相場が08年の夏にキロ当たり1000円を越えたが、同年秋口から急激に下落、昨年初め頃は一時期350円前後まで下落した。今年に入り春頃に800円近くまで上昇したが、その後下落しており10月現在では720円前後で落ち着いている。鉄の価格も今年に入り一時期高騰したが、現在は安定している。樹脂の価格も落ち着いており、今のところ製品値上げなどの動きは見られない。

一方、トランスは本体の原材料の約80%を鉄や銅で占めており、製造原価に対する材料費が30~45%と高い。例えば容量30VAでは材料費が約30%となっており、容量が大きくなるほど材料費の比率が高くなるので、専業メーカーでは原材料価格の動向が非常に重要となっており、各メーカーとも原材料価格の動向に注視する方向に変わりはない。さらにメーカーでは、継続してコスト低減のため材料のムダを省くとともに、細かいチェックや在庫の見直し・削減などの徹底に努めている。

トランスメーカー各社は、以前にも増して積極的な営業展開を行っているメーカーが多く、新規販売代理店の獲得など販売ルートの拡大を図っている。特に首都圏の営業拡充や地方の主要都市での拡販を積極的に推進しており、大手の新規顧客開拓などに繋がっている。

さらに、物流体制の整備、ネット販売の進展などの観点からも、全国的な販路展開に取り組むメーカーが増えている。特に、市場の大きい首都圏は関東以外のトランスメーカーにとっても重要な地域で、地域に強い商社と販売提携し、営業活動を活発化させ浸透を図っている。

ここ数年の産業用トランスに対するユーザー志向では、特注品、カスタムメイドに対する要求が年々強まっている。トランスは以前からユーザーの特注品志向が強かったが、最近、この傾向がさらに強まっている。十数年前から専業メーカーでは、標準品・準標準品という形でカタログから選べる型番営業を強化してきたが、標準品販売と別の形で特注に対応する姿勢も強化している。

特注品は、組み込む機器・装置、設備に合わせて容量、サイズまで特別に製作するため、トランスメーカーにとってコスト、納期面での負担が大きいと言える。また、標準品の価格がリーズナブルになっているものの、市場を取り巻く厳しい環境から、特注品と標準品の価格差が縮まりつつある。

一般的にトランスの小型タイプは、家電を中心とする民生機器での需要が多く、そのほとんどは少品種大量生産で供給されている。このため、小型タイプは民生機器専用の専業メーカーによって生産されることが多い。大型タイプは産業用途での採用が多く、使用分野・製品ごとに仕様が異なるため、多品種少量生産対応が可能な専業メーカーによって供給されている。また、大型タイプを中心とする産業用トランスは重量が重い。このため輸送コストなどの面から、ユーザーに近いところで生産する地域密着型での製造・販売が主流となっている。

一方、UL、CSA、TUV、CEマーキングなどの海外規格取得が進んでおり、ほとんどのメーカーが海外規格対応品をラインアップしている。また、RoHS規格などの鉛フリー化は各社が独自の取り組みを行っており、ほとんどが対応を終えている。リード線や銅線関係も、ケーブルメーカーが環境対応を図っており、トランスメーカー自身はそれを証明するだけで環境への説明が済む状況となっている。

機能面では、トランスの軽量・コンパクト化に加え、接続方法の簡易化など作業性の向上、マルチタップ化、LEDによる通電表示などの工夫・改良が進んでいる。作業性の向上へ、結線の作業性・信頼性の向上、デザイン面などの観点から結線部への端子台の採用が一般化している。さらに、タブ端子台を採用しねじを使わず、リセプタクル端子をタブに差し込むだけで結線が完了するタイプのほか、最近では、アップネジの採用でねじを緩めることなく丸型圧着端子の接続ができるタイプがシェアを伸ばしている。ねじが脱落しないため、結線作業の効率が大幅にアップすることに加え、従来のネジ式と比較すると作業時間が80%以上短縮できる。また、保護カバー付きアップねじ式端子台にLEDを取り付け、通電中はLEDが点灯し通電状態が一目で確認できるタイプが好評を得ている。

このタイプは、1次側(入力)とともに、2次側(出力)にマルチタップを採用して、1台のトランスで12種類の電圧に対応することができ、入出力の電圧変更が簡単にできるなどの特徴を持つ。

軽量・コンパクト化への取り組みとしては、絶縁紙の使用枚数削減がある。これは環境対策面でも効果的で、今後も様々な工夫が施され改良が進むものとみられる。また、最近発売されたタイプは、絶縁種別をB種、巻線仕様をノーレア方式にすることで、従来品と比べ20%~40%の軽量化を実現した。これにより、1kVAクラスの場合、約3キログラムの減量となる。サイズも10%~20%コンパクト化が図られている。そのほか、用途ごとに変わる電流容量に容易に対応できるように、数個を並列に接続できるモジュールタイプが一般化している。

製品仕様の改良では、コイル巻線の工夫、鉄心の改良などがある。巻線では、複数巻線シングルコアに対して、複数コアのシングル巻線にすることで大幅に薄型化できる。近年では、巻線の自動化技術も進み、独自の自動巻線装置を使うトランスメーカーもある。民生用途の小型タイプなどでは、既に巻線の自動化がなされているが、大型タイプが中心となる産業用トランスでは、まだ手作業で行っているところが多い。自動化は、同じ巻線数でも手作業などの従来方法よりコンパクトに巻け、小型軽量化につながっている。

トランスの巻線作業は、ある程度熟練が必要でベテラン職人の減少や人件費対策などのコスト面からも、巻線の自動化が注目されている。コイルボビンにノーカットの鉄心を巻き込んだタイプもあり、鉄心の有効断面を均一にすることができ、磁路の短縮が図れる。さらに、コイルボビンと鉄心の一体化構造で、高い絶縁性と正確な形状を実現。しかも自動巻線も使えるといった特徴を持つ。

一方、トランスにノイズ対策機能を付加する製品が増加している。ノイズ対策には一般的にノイズ対策専用トランスを採用するが、トランスがノイズ対策機能を持つことにより、ノイズ対策専用トランスが不要となり、コスト、スペースなどでメリットが生まれる。あるメーカーではノイズ対策トランスのサンプルを無料で貸し出しており、同トランスの普及を図っている。

また、日本は山間部や日本海沿岸など、地域によって雷被害を受けるところが多く、そのような地域で使用するトランスには、雷対策を施した耐雷トランスの需要が急速に伸びている。このように高付加価値による需要の喚起も、トランス市場を盛り上げている。

安全重視の観点では、焼損事故の再発を防止するため、自己保持型サーマルプロテクタを内蔵し、所定の動作温度に達すると、トランスや電源機器の電源を切るまで接点を開放し続ける事故再発防止トランスなども伸長している。

また、最近では金型レスのプリプレグ方式のモールドトランスの受注も増えている。利点は通常の乾式トランスに比べ、導電部の絶縁や保護に効果を発揮し、難燃性や耐湿性に優れる。さらに、金型レスのため、ユーザーが求める様々な容量・電圧に対応するトランスの製作も可能である。

産業用トランスは、電気的安全性確保の重要な役割を担っており、今後とも安定した需要が見込まれる。専業メーカーでは、さらなるコスト低減などで原材料高の課題を乗り越えると同時に、新規販売ルート、新規顧客の開拓に積極的に取り組んでいる。新規分野では、新エネルギー分野での成長が見込めるほか、新興国を中心に海外市場に目を向けるメーカーもあり、トランス業界も新たな展開へ踏み出そうとしている。

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