照光式スイッチ市場が急伸 半導体・LCD製造装置、工作機械などの需要が回復 受注先行で一部に納期遅れ 07年度のピーク超えに期待高まる

操作用スイッチと表示灯を一体化した照光式スイッチは、一つのスイッチで操作と状態表示を兼用できることから、スペース性・視認性に優れ、使い勝手も良いことなどからスイッチ全体の中での割合を高めている。

日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2009年度の照光式を含む操作用スイッチの出荷額は260億円で対前年度比22%減少した。08年度も338億円と同21%の大幅減少で2年連続のマイナスとなっている。08年秋のリーマンショックの後遺症が依然残っている状態であったが、09年度下期以降の回復基調が10年度に入るとさらに顕著に表れ、10年度第4四半期(10年4~6月)は同72%増と急ピッチに伸長している。まだ、07年度の実績までは回復していないものの、08年度実績を超えるのは確実なペースであり、先行きに期待が高まっている。

NECAでは10年度の操作用スイッチの需要見通しを同29%増の335億円としているが、上昇は確実で400億円台乗せも可能な勢いである。過去ピークは07年度の432億円であったが、海外生産の増加や価格の低下なども加味すると、実質的に国内出荷は10年度でピーク時に並ぶものと予想される。

NECAの出荷のうち、照光式押しボタンスイッチが約20%を占め、最も高い割合となっている。これに照光機能の付いたトグルやロッカースイッチなども含めると照光式スイッチの比率はさらに高くなる。照光式スイッチの特性を活かして用途は拡大基調であり、この傾向はさらに強まるものと見られる。
旺盛な外需拡大が
照光式にも好影響

照光式スイッチの大きな市場のひとつである半導体・液晶製造装置は、国内半導体メーカーに加え、中国、韓国、台湾メーカーも旺盛な設備投資を行っていることから生産が急増している。半導体は、デジタル家電、携帯電話、パソコン、自動車、空調機器など中心に需要が拡大しており、休日返上で増産に追われていることもあり、投資意欲は非常に旺盛だ。昨今の環境問題を背景にした省エネへの取り組みから、照明機器関連のLEDへの置き換え、液晶テレビなどのLEDバックライト需要などが拡大して、旺盛な設備投資に繋がっている。

こうした急激な需要増加は原材料や部品といった川上に向けた部分への納期対応の遅れとなって玉突き現象が起きており、受注があるものの売り上げは計上出来ないという事態も起こっている。リーマンショック時の過剰在庫と過剰設備に苦労した教訓から、増産投資に対しては慎重なところが多く、納期対応の遅れを加速させることに繋がっている。

操作用スイッチはいまのところ他の製品に比べて極端な納期トラブルは起きていないが、セットメーカーにとっては部品一つが間に合わなくても完成品として出荷できないだけに、早期に正常な状態に戻ることが求められている。

照光式スイッチのもう一つの大きな需要先である工作機械も急ピッチで回復を見せており、前年同時期の最悪期に比べると3倍近い生産状況で推移しており、ピーク時の6割ぐらいまで戻っている。工作機械市場は中国での伸長が著しいが、同時に中国ローカルメーカーも急速に生産を増やしていることで、09年は中国が世界ナンバーワンの工作機械生産国になり、日本は3位に後退した。工作機械はタッチパネルスイッチの使用が増えており、以前に比べると照光式スイッチの使用数は減少しているものの簡易、あるいはローコストな機械ではまだまだ使用数は多い。
新エネルギー関連
市場の動向に注目

さらに、アミューズメント市場も最悪期は脱して上向いており、先行きの見通しへの期待は高い。

今後の市場として期待が高まっているのが、新エネルギー関連と鉄道車両関係である。

太陽光発電や風力などの新エネルギー関連は、電力変換用のパワーコンディショナーや受配電機器などで照光式スイッチが多く使用される。まったく新しい市場であり、今後国内外で大きく拡大が見込まれている分野だけに期待は大きい。

鉄道車両向けも、ドアや運転席周り、社内情報表示系統など照光式スイッチの用途が広い。

最近の鉄道車両は、単に人を運ぶだけでなく、快適な乗り心地の追求、車内でも情報収集や仕事ができる場として目的が変わってきている。運転席では、運転に関する情報が集中して表示されるが、照光式スイッチやタッチパネル表示器が大きな役割を果たしている。ドアや座席にも照光式スイッチがついており、ドア開閉や座席管理などで視認性を高めている。
デザイン・操作性が
重視される鉄道車両

鉄道車両のスイッチは、信頼性に加えデザイン性、操作性などがポイントとなっている。車両にマッチしながら、誰が操作しても確実に機能を果たすスイッチが選択の基準として重視されている。従来、鉄道車両市場は特定メーカーの寡占状態といえるような雰囲気があったが、前述ような鉄道車両に求めるニーズの変化に伴い、新たな参入を呼び起こしている。鉄道は環境にやさしいという社会的な追い風もあって世界的に見直されているが、鉄道車両にはスイッチだけでなく、いろいろな制御機器が使用され需要裾野は広い。日本の鉄道車両の国際的評価は高いものがあるが、最近は政治的・経済的な思惑も絡んだ受注競争が激しくなって来ていると言われ、そういった意味では、国全体でのバックアップ体制での拡販活動が重要になってきている。
放送・通信機器の市場は
技術力発揮の見せどころ

放送・映像・通信関連機器向けも魅力ある大きな市場だ。地上デジタル化放送への切り替えやCATVの普及など、さらに放送・映像機器の需要は拡大基調にあるだけに将来への期待も高い。

これらの機器は、頻繁な操作が行われることから操作性が非常に重視される市場といわれ、スイッチメーカーとしては自社の技術の見せ所といえる。

同時に、照光式スイッチに求められる操作感触、視認性、耐久性などといった、あらゆるニーズを集約できることが、スイッチメーカーにとって技術研鑽が図れることにもつながり、この分野向けを意識した開発を積極的に行っている。

NECAのスイッチ業務専門委員会が昨年、放送機器向けの操作用スイッチの動向を調べたが、放送機器に対するニーズは使用する機器や国によって違いがあり、放送機器メーカーはこれらをキメ細かく汲み取って対応している。また、LEDやLCDなどの技術に強みを有する台湾メーカーも技術レベルが上昇しており、今後日本メーカーとの競合が予想されるとしている。日本の放送・映像機器は世界でも高い評価を確立しているが、さらなるレベルアップを求められそうだ。

こうした分野を含め照光式スイッチの用途は、各種産業機械、業務・民生用機器、事務機器、計測機、アミューズメント、医療機器など多岐にわたる。

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