クリーンルームの省エネソリューション オムロンのクリーンルーム省エネソリューション

省エネ対策を実施する場合、まずエネルギーの「見える化」からスタートするが、オムロンではクリーンルームの省エネを実現するために電力センサによる消費電力の測定だけではなく、クリーンルームの基準として一般的に設けられている温度・湿度・クリーン度・陽圧をそれぞれを測定できるセンサで「見える化」を実現する。クリーンルームは、消費電力量が大きいだけに真っ先に省エネ対策を実施したい場所である。その一方、品質面でも大変重要な工程であるため、そのような工程に対して、安易に消費量を下げるだけの対策を打つことはできない。本ソリューションは、オムロンが得意とするセンシング技術を活用することで、製品品質を保ちつつ、省エネ効果を実現するものである。

以下は、クリーンルームの品質と省エネの両立をサポートする代表的なセンサである。

(1)パーティクルセンサ

パーティクルとは、ほこりやちりのことで、1立方フィート/約25cm角の中に、いくつほこりがあるかを計測し表示する。

(2)電力量センサ

(3)温湿度センサ

(4)圧力センサ

クリーンルーム内の室圧が、室外より高くなっている状態を維持できているかを計測する。

以上のように、空気中のパーティクルを感知する以外にも様々なセンサを使用する。一般的には、クリーン度の測定に使用されるパーティクルカウンタは、高価でしかも構造的に常時設置に向いていないとされているが、オムロンでは、徹底的に整流化した内部構造と大吸引ファンの採用で、2.83L/minの吸引量を確保し、高精度変位センサで培った独自のレーザー光学設計技術により、計測器並みの精度を実現しているのである。

クリーンルームと言っても、内部には見えない空気の流れがあり、パーティクルの多い場所と少ない場所が存在する。まず、品質への影響が強いと考えられ、管理の必要がある部分に各種センサを設置していく。電力データとともに、クリーンルームの管理標準である温度・湿度・クリーン度・室圧が、常時モニタリングできることにより、生産現場の状況と電力量の関係が見えてくる。そして、これらのデータを現場の品質基準と照らし合わせながら省エネ改善を進めていくのである。

図1は、実際に自社の生産工場でのパーティクル量の実測値である。

折れ線グラフが、実測されたパーティクルの数を示しており、1万~2万個程度に収まっていることがわかる。この生産ラインのパーティクル量の基準は10万個以内なので、実測との差がこれまでは余裕度として考えられており「十分低いから問題ない」と捉えられていた。従来、多くのクリーンルームでは、何かの拍子に制限を超えるかもしれないと考えられ、余裕度を多めに取るしかなかった。しかし、パーティクルを「見える化」することによって、この余裕度を必要最小限にコントロールすることが可能となるのである。

これにより必要な品質を維持しつつ、最低限のエネルギーによる運用が実現可能となるのだ。

この工場では「見える化」により、ムダをなくしてクリーン度にメリハリをつけた結果、空調機を停止することが可能となり、運用改善で年間100万円以上の電力料金の削減を実現した。

また、更なる省エネ対策として、クリーンルームの一部だけを高基準化するクリーンブース化という手法もある。つまり、クリーンルームの局所化である。

クリーンルームにおけるもっとも大きな発塵源は人間であり、人間と製品を分離することが、極めて効果的な省エネ手法になるのである。発塵源を分離することで、製品の品質を維持しつつ、製品への影響が少ないブース外のクリーン度の余裕度をさらに削ることが可能となる。まさに、必要なところに必要なエネルギーを投入する、省エネの基本となるのである。

例えばスイッチを製造する場合、内部の金属の接点にごみが付着すると、不良の発生原因になってしまう。そのためスイッチの接点部分の組み立て工程はクリーンルームで行うこととなる。これに対し、パーティクルの影響を大きく受ける接点がむき出しになる工程のみをブース化し、この部分のクラス1万を保つようにすると同時に、ブース外はクリーン度を下げてクラス10万相当のレベルを維持する運用とした。これにより、工程全体をクリーン化していた時より消費電力を80%も削減することができたのである。

オムロンはこのような様々な実績やノウハウを元としたクリーンルーム省エネソリューションを展開し、省エネルギーと低炭素社会の実現に貢献したいと考える。

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