混沌時代の販売情報力 黒川想介 営業に個人的戦術思考が必要

2010年3月10日

ローマが都市国家から始まって広大なローマ帝国を築けたのは、いろいろな因があると思うが、ローマ軍の強さと現代の世界にも大きな影響を及ぼしている政治の仕組みの2本柱が要因であると思われる。特に、ローマ軍の強さは戦略の要である司令官の存在と戦術の要である軍団長の存在、そして戦闘時の要である百人隊長の存在であった。

相手に勝つために戦略を練ったり、この戦術でいこうと決めたりする武将には、素質が大きく作用するようであるが、戦場で戦闘をやり抜く兵士達の強さは素質以外が大きく物をいう世界である。たゆまぬ訓練はもちろんのこと、それ以上に戦場での勢いが勝敗を決することになる。

兵士達の義務感・欲望・衝動など、さまざまな動機を戦うという方向にまとめていくのは司令官の役目であるが、戦場での勢いをつくる要になるのはローマでは百人隊長であった。兵士達を奮いたたせ、先陣をきって雲を突くような大男のゲルマン人の中に突っ込んでいった。白兵戦をやり抜く強い意思を持った百人隊長がいなければ怖気(おじけ)づいて逃げ出したくなるだろう。そういった意味では、戦闘に勝てるかどうかは兵士達の戦闘力と、戦闘力を10倍にすることのできる百人隊長の存在がローマ軍の強さであったはずである。現代の営業戦線においてはどうだろうか。事業の戦略目標は一般的には各期の目標売り上げ達成か、永続的な成長指標である。戦略目標を達成するんだという雰囲気を作っていくのは営業の総責任者である。それぞれの目標を持った営業は、達成のための行動を起こしていく。日々の活動の他に新商品発表会、各種の展示会やセミナー、戦略商品拡販作戦、キャンペーンなどの企画を立て行動する。
課や所、係などの部署長は他の部署に後れを取らないように販売員を叱咤激励し、率いていくのが一般的な現代流であろう。ローマの兵と同じように勢いを持っていくだけでは成果は大きく挙げられない。現代の販売員は、成長期と同じような経験をもとに行動量を上げるだけでは駄目ということだ。

個人的戦略思考や、個人的戦術思考が必要な時代に入っている。とりあえず行動することから脱して、考える癖をつけることが、個人的戦略思考だということを前回まで詳述してきた。

個人的戦術思考はどうだろうか。そもそも戦術という概念は、戦略目標達成のため集団の戦闘力を使って成果を挙げる技である。孫子の言う「兵は詭道なり」ということであり、いかに相手の裏をかくかということになる。現代の営業戦線においても、個人的戦術思考が必要である。

販売力をどのように使えば、最大の成果を挙げることができるかと考えると、相手は一体何を考え、何をしようとしているかという情報がなければならない。ところがどうだろう。成熟期にある電子・制御部品業界では、大競争が起こり市場のシェア争いが激しくなっている。そのため商品に関するスキルがオンリーと言ってもいい程、商品に関する知識、イコール販売力となっている。その証拠に頻繁に商品勉強会が行われ、特徴・納期・コストの比較、お客様からの質問に答えられるように商品技術を教えられ、メーカーが集めたアプリケーション情報を習い、切り換え活動に邁進している。

これではあまりに当たり前過ぎて教えられたことを几帳面にこなしている営業となり、ちっとも面白くないと思う。もっと詭道ぶり営業ができるような、情報を入手する力を持たねばならない。
(次回は3月31日掲載)