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【パワーアシストスーツ特集】ATOUN 代表取締役社長 藤本 弘道氏「人手不足の“解決策”へ」

中小企業に最適

1. 人手不足感は中小企業のほうが深刻。だから…。

「働き方改革」が声高に叫ばれる日々が続く。この背景に「働き手の高齢化」と「若者の減少」による深刻な人手不足があるのはいうまでもない。しかもその傾向は、大企業よりも中小企業の方が顕著である。中小企業庁の「中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会とりまとめ」によると、中小企業の「従業員過不足DI」は、2011年からマイナスに転じ、16年時点では大企業を10ポイント近くも下まわっている。

2. パワーアシストスーツは導入障壁が低い

その解決策として近年は、物流や工場などの作業現場への自動化ロボットの導入が検討されている。しかし、実際に導入に踏みきり、望ましい成果を上げている企業は数少ない。なぜなら、自動化ロボットの導入には、設備や保守などを含めて数億円規模のコストが必要だからだ。大企業向けの解決手段であり、中小企業の体力に見合った方策ではないといえる。

そこで人手不足の新たな解決策として注目いただいているのが、パワーアシストスーツである。自動化ロボットと比較すると格段に導入コストが低くなるうえに、活用の自由度も高い。コストの面はもちろん、急な方針転換を迫られることが少なくない中小企業の解決手段として、いろんな意味で適しているのである。

3. パワーアシストスーツによる負担軽減効果

実際にアシストスーツはどのような効果をもたらすのか。例えば、物流や工場といった現場での積み込みなどでの利用を想定したATOUNのパワーアシストスーツMODEL A(AWN-03B)は、作業時の腰の負担を最大で15キログラム軽減することができる。

さらに、厚生労働省の平成28年度労災疾病臨床研究事業において、福井大学芸術・保健体育教育講座の山田孝禎准教授により、MODEL A装着時に重量物を持ち上げた際に腰部に掛かる負担および主観的苦痛度に及ぼす効果や腰痛予防効果について研究も行った。健康な青年男性10名(年齢:22.4±5.0歳)が、背筋および膝関節を伸展させたまま股関節を90度に屈曲し、各被験者の体重の20%あるいは40%の重量物を保持した姿勢からの重量物を持ち上げた時の負担を評価したところ、動作時における腰部の苦痛度と関節ピークトルクは、MODEL Aを装着したことで大きく軽減され、腰痛予防に大きく資する効果があると結論づけられた。

4. パワーアシストスーツによる作業効率の改善

では、作業効率はどう変わるのか。10キログラムの重量物をパレットから腰の高さまで持ち上げて下ろすというくり返し作業の回数を、パワーアシストスーツを装着した場合と装着していない場合について、当社内で測定して比較したところ、全ての被験者においてパワーアシストスーツ装着時の持ち上げ作業回数は、非装着時の回数を上回った(被験者は女性2名、男性3名の合計5名)。作業回数の増加度合いには個人差があったものの、なかには装着時の作業回数が非装着時の5倍を超える例もみられた。

5. 低コストの作業環境改善で大切な人材を確保

当社では、現在、腰の負担を軽減するMODEL Aに続き、腕や脚部の負担を軽減するパワーアシストスーツの開発に取り組んでいる。アシストの範囲が増えれば、物流や工場の現場作業などで体に掛かる負担をさらに軽減することができる。その結果として、中小企業を悩ませる深刻な人手不足に対して、低コストで作業環境が改善できる選択肢をさらに増やすことができればと願っている。