茨城空港から上海まで片道4000円、羽田空港からマレーシアまで片道5000円。誰もが気軽に他国を見聞できる時代が来た。「外から日本を眺めなさい」と先輩から言われたが、その国の文化、生活、歴史を知り、日本と比較検討して今後の糧にする意味合いである。▼現在は、その目的意識が薄れている気がする。単に、飛行機に乗って他国の地を踏んだだけで、日本にいてもまとめられる稚拙な内容の海外出張レポートに出会い、愕然とすることがある。ただ海外に行った証を得たい欲求なのだろう、本来は感じてはいけない優越感や劣等感さえ持ち帰れない。▼1960年代、制御機器業界は必死の思いで欧米から最新技術情報を入手し、工夫を重ねてきた。1ドル360円の時代に、持ち出す金額も制限されながらの出張である。「手持ち金がなくなり、日系商社を介し送金してもらい、米国から欧州へと足を延ばして会社の進路を決める」(国際電業創業者・野原仙太郎さん)など、当時の経営者は強い目的意識で未知の国に出向いた。▼9月22日付け本紙連載「混沌時代の販売情報力」で黒川先生は「興味を持ち、拘わることが情報を取る秘訣である。情報を取れないのは、本心から知ろうとしていない」と意欲の不足を戒める。アジアの市場性、商習慣、欧米の経営や先進技術など得たい情報は山ほどある。格安航空はその機会を提供してくれる。