【FAトップインタビュー】パトライト 代表取締役社長 山田 裕稔 氏 FA市場への原点回帰と新事業創出への挑戦 中期経営計画「CHANGE CHALLENGE V-SHIFT 200」

FAと産業用表示灯の分野で圧倒的なブランド力を持つパトライト。2025年度から「CHANGE CHALLENGE V-SHIFT 200」と名付けた新中期経営計画がスタートした。2030年度の売上高200億円に向け、新中計では、国内はFA市場の強化と新事業創出、海外では地産地消をコンセプトにした汎用品の現地開発・生産化など、意欲的な挑戦を進めている。新中計とその取り組みについて、代表取締役社長の 山田 裕稔 氏に話を聞いた。

車両機器、FAともに好調だった2024年度

――2024年度の振り返りについて、決算は好調な結果だったようですね

2024年度は単独で前年比10%増、海外を含めた連結でも8%増という形で終えることができました。

国内事業では、FA関連を中心とする「ソリューションコンポ事業」が若干未達だったものの前年比5%増、もう一つの柱である緊急車両向けの車両機器事業が6%増と、まずまずの数字で着地できました。

海外事業に関しても、一部で貿易問題などの懸念はありましたが、海外販社向けの売上が2桁増となる13%増となるなど、全体として2桁成長を達成することができました。これまで行ってきた様々な施策が、ようやく実を結び始めたという手応えを感じています。

――FA事業についてもう少し具体的にお聞かせいただけますか。

FA関連は、半導体業界向けの需要が国内外で非常に好調でした。特に前工程のお客様からの実需に連動した受注が堅調に推移しました。単なる従来製品の置き換えだけでなく、人手不足や工場のネットワーク化といったお客様の課題解決に貢献する高付加価値製品もいくつかリリースし、それらも順調に採用されました。

また、2024年9月にリニューアルオープンした「ソリューションサイト品川」も大きく貢献しました。FA市場だけでなく、防災、店舗などのリテール市場、物流市場といった「新領域」に特化したソリューション事例を数多く展示し、約20枚のパネルを並べ、お客様が実機に触れて体感できる空間にしました。

これまでは「パトライトの製品は明るい、音が大きい」という「モノ」の評価が中心でしたが、このサイトでは、例えば「パトライトのこの製品と、A社のネットワークカメラを組み合わせることで、こんな課題が解決できます」といった「コト売り」の提案を具体的に見ていただけるように展示しています。これによりお客様自身が課題解決のイメージを掴みやすくなり、多くの案件化に繋がりました。これまで点だった新領域でのビジネスが、ようやく線になり、面になり始めました。

――車両機器事業の方はいかがですか

車両機器事業では、聴覚障がい者の方に配慮した新型の散光式警光灯をリリースしました。緊急走行時と通常のパトロール走行時で光り方を変えることで、サイレン音が聞こえない方でも車両の状態を視覚的に判別しやすくしました。警察庁と5年がかりで共同開発したもので、市民の皆様からも高い評価をいただき、製品単価、利益率ともに改善し、事業の伸長に大きく貢献しました。今後はこの技術を消防車など、他の緊急車両へも展開していこうと考えています。

課題は利益率の低下、2025年度からは大胆な変革へ

――逆に難しかった点、うまくいかなかった点などありますか?

ここ数年の円安傾向や材料費の高騰がボディブローのように効いてきており、利益率の低下傾向には頭を悩ませています。これは2025年度以降も続く重要な課題と捉えており、原価低減や工場の稼働率向上といった対策を打とうとしているところです。

新中計の柱となるFA市場への原点回帰

――2025年度からの新中期経営計画について

今期から始まった新中期経営計画では、2030年度に売上高200億円の達成を目指し、これまでの利益改善を主眼に置いた守りの施策から、規模拡大を目指す攻撃的な路線へと大きくシフトチェンジします。そのスローガンとなるのが「CHANGE CHALLENGE V-SHIFT 200」です。

新中計にはいくつかの大きなテーマがあり、ひとつめが国内市場における「FA市場への原点回帰」です。

インダストリー4.0というコンセプトが叫ばれてから10年以上が経ち、ようやく今、現場レベルで具体的な製品やソリューションとして形になり、製造業全体が大きな変革期を迎えています。このタイミングで、我々はもう一度FA市場に軸足を戻し、日本のものづくりが直面する課題を捉え、新しい価値を提供していくべきだと考えました。国内営業のすべての戦略の中心は販売店です。販売店との関係をより強固なものにし、共に製造業のお客様のトレンドを先取りした新製品を開発し、市場投入を目指しています。そのために今年度の研究開発費を思い切って倍増しました。

――研究開発費を倍増し、具体的にはどのような製品開発を?

既存製品のブラッシュアップはもちろんのこと、今後は社会課題やお客様の潜在的なニーズを解決する、全く新しいコンセプトの製品開発に力を入れていきます。

例えば、近年は協働ロボットの導入拡大に伴い、安全柵をなくしてフレキシブルな生産ラインを構築するという動きが加速しています。しかし、そこには必ず安全確保という課題がつきまといます。それに対し、床に光でラインを照射し、危険領域と安全領域を視覚的に示す「ラインライト」のような製品を開発しています。単に光るだけでなく、センシング機能を融合させ、人が侵入すると光の色やパターンを変えて警告するなど、センサーメーカーとはまた違う、我々ならではの「報知」の技術を生かしたアプローチで安全確保に貢献したいと考えています。この秋には具体的な製品としてお披露目できる予定です。

海外は「選択と集中」と「製品の2極化」

――海外戦略についてはいかがでしょうか

海外事業では、「選択と集中」と「製品の二極化戦略」を推進します。これまでは成長市場に広く投資してきましたが、今後は投資対効果を厳しく見極め、リソースを集中させていきます。その一環として、今年の3月にはメキシコの拠点を閉鎖しました。

製品戦略としては「地産地消」をコンセプトに、二極化を進めます。ハイスペックな製品は従来通り日本で開発・生産しグローバルに展開しますが、一方で、現地のニーズに合わせたミドルレンジの製品群を現地の委託生産パートナーと共に開発・生産していきます。

第一弾として、中国市場向けにセカンドブランドを立ち上げ、この3月から販売を開始しました。今後はこのモデルをASEANや米州、欧州にも展開していく計画です。

「第三の事業の柱」創出も強化

――2025年1月に組織化した「事業創造本部」とはどんな組織ですか?

FA、車載事業に続く「第三の事業の柱」を創出するため、私の直轄組織として今年1月に「事業創造本部」を発足させました。FAや新領域といった従来の枠に一切とらわれず、全く新しい市場の開拓を目指します。

これまで当社は「光」と「音」というコア技術を組み合わせることで成長してきました。今後はそこに「画像」や「アプリ」といった新しい要素を掛け合わせ、「光×画像」「音×アプリ」といった切り口で、例えば医療業界やビルメンテナンス、あるいは一次産業といった未知の領域に挑戦していきます。事業創造本部のメンバーは全社から公募し、強い意志を持った若手からベテランまでの4名を選抜しました。初年度となる2026年度に売上1億円、5年後には10億円規模の事業に育て上げることを目標に、今、第一歩を踏み出したところです。

創業の精神に立ち返り、全社一丸でV字回復へ

――今後に向けて

新中計では、「顧客本位」「独創能力の追求」「従業員の満足」といった、当たり前だけれどもここ数年少しおろそかになっていた部分があるのではないかという反省をもとに、創業者が掲げた「5つのV」という行動基準を、現代版にアレンジして復活させました。

もう一度、ものづくりの原点、お客様第一の精神に立ち返り、従業員満足度を高めるための「リンクワンプロジェクト」といった社内向けの施策も同時に進めていきます。全社一丸となって目標に向かう組織風土を醸成し、「FAへの原点回帰」と「未知の領域への挑戦」という両輪を力強く回していきます。

https://www.patlite.co.jp


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