「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」これは19世紀のドイツで、初めて統一を果たした鉄血宰相・ビスマルクが残した格言だ。できることなら賢者のように振る舞いたいが、いずれにしても、今または未来をより良いものにするためには、過去から学ぶことが重要であることを示唆している。
こんな言葉を持ってきたのには意味がある。この5年ほどの製造業、FA業界を取り巻く環境は大混乱の下にあった。ようやく正常化の道筋ができ、2025年からはようやく腰を据えてビジネスに取り組めそうだ。その一方で、市場環境や人の意識、技術は大きく変化した。例えば、人手不足がさらに進んでスマートファクトリーが再び注目されてきたり、FA各社がコンポビジネスに再注力したり、M&Aが活発化していたりと状況は確実に変化点を迎えている。先が見えないからこそ、過去に学び、もしかしたら製造業ビジネスの原点や本質まで回帰して考えることで、新たな時代の勝ち筋、スタンダードを見つけることができるかもしれないのだ。
いま日本をはじめ世界が米国のトランプ関税に揺れている。自由貿易に慣れた今の時代にはなかなか理解しにくく、受け入れがたいが、かつては各国が高い関税をかけて自国経済を保護していた。日本の製造業はその厳しくも理不尽とみえる状況のなかでも成長を遂げてきたという過去の経験と歴史がある。順風満帆で成長してきた訳ではない。技術も体制も何周も遅れ、かつ極東という不利な地理的状況を乗り越えて今を作り上げてきたのだ。これからどうすべきかのヒントは過去の歴史のなかにあるはずだ。