JEMAは、産業機械メーカーを対象に、製造している機械へのモータ・インバータの使用状況等の調査を行い、「モータ・インバータに関するユーザ調査」報告書としてまとめた。その内容を抜粋し、現在の機械メーカーがインバータをどれだけ、どのように使っているかについて紹介する。
7割以上の機械メーカがインバータを使用
はじめに、インバータの使用状況について、インバータを使用している(機械に搭載している)事業所の割合は76.3%。使用率が高い機械は印刷・製版機械、油圧機器および空圧機器、木材加工機等で、反対に動力伝導装置、冷凍機および冷凍機応用製品、農業用機械器具、繊維機械、電気計測器等は低くなっている。
対象機械における装着率は71.9%で、モータ使用台数141万920台に対し、101万4542台となっている。装着率の高い機械は冷凍機が圧倒的に高く(857%)で、環境生活関連機器、木材加工機、農業用機械器具が続いた。反対に装着率が低いのは金属加工機械および鋳造装置は2.2%と最も低く、ポンプ・圧縮機および送風機、電気計測器等が続いた。
モータの可変速のための導入が圧倒的
なぜインバータを導入するのか理由については、「可変速」が87.6%と突出して高く、土木建機や鉱山機械、製紙機械、プラスチック加工機械、印刷機械は可変速の回答が100%となっている。次いで省エネルギ化が26.3%、ソフトスタートが16.3%と続いている。
使わない理由については「可変速の必要がない」が43.9%と突出して高く、価格が高い8.8%、精度が悪い(7.0%)、高調波が心配(7.0%)と続いた。
モータと同一メーカのインバータを使用
インバータと組み合わせているモータの種類については、「三相誘導モータ」が 85.2%と突出して高く、土木建設機械や印刷機械、農業用機械器具は100%となり、ポンプ、圧縮機および送風機、運搬機会および産業用ロボットも90%を超えた。「永久磁石形同期モータ(PM モータ)」採用は油圧機器及び空気圧機器(75.0%)が最も高く、「ベクトル制御モータ」では「印刷、製版機械等」(36.4%)が高くなっている。
インバータと組み合わせるモータメーカについては、インバータと同じメーカのモータを使うのが92.5%となり、異なるメーカの7.5%から大きく上回っている。同じメーカーを使う機械で多いのは金属工作機械(86.6%)、「ポンプ、圧縮機及び送風機」(86.0%)等が挙げられ、異なるメーカでは「繊維機械」(99.9%)、「冷凍機及び冷凍機応用製品」(99.5%)等が高くなっている。
ネットワーク使用は50%にとどまる
インバータと上位装置をネットワークで繋げているかどうかについては、ネットワークを使っている比率は49.3%、使用していないが48.3%とほぼ半々。使っているネットワークの種類については、CC-Linkが最も多い63.1%で、CC-link IEが19.4%、EtherNet/IPが18.4%、シリアルネットワークが18.4%と続いている。
今後ネットワークを使うかどうかについては、使う以降は23.8%にとどまり、使用を考えていないが74.3%となった。どのネットワークを使うかについては、CC-Linkが54.2%、EtherNet/IPが54.2%と拮抗し、CC-Link IEが20.8%、DeviceNetが12.5%、MechatroLinkが12.5%で続いた。
品質と性能に満足も、納期と価格に不満が
現状のインバータに対する評価については、品質と性能のバランス、出力周波数範囲、振動の程度、騒音の程度、耐久性・寿命は比較的満足度は高く、反対に納期は不満足の回答が4割と高く、価格、高周波ノイズ対策に対する不満も多かった。
インバータをどのように選定するかの基準については、「価格」(54.0%)が最も高く、次いで「納期」(43.7%)、「全般的な品質・性能(バランス)」(39.7%)が上位を占めた。
2024年度の使用台数は微増の見込み
2024年度のインバータ使用見通しは、2023年度比104.1%と微増の見通し。使用が増えそうなのは、環境・生活関連機器が124.0%と最も伸び率が高く、冷凍機および冷凍機応用製品、運搬機械および産業用ロボット続いた。
調査は、土木機械や印刷機械、農業機械、運搬機械、ロボット、油圧機械、金属工作機械、繊維機械、食品加工機械、包装機械、冷凍機、半導体製造装置など、モータ・インバータを装着した20品目の機械を製造している全国の1771事業所に対してアンケート調査で行い、259事業所から回答を得た結果をまとめたもの。インバータは、汎用インバータ(入力電圧 600V以下、出力 100kVA 以下の電圧形インバータ)を対象としている。