いまは「個が強い時代」と言われる。個を出してもいい、個が尊重されるべきだという認識が世間に広まり、皆が自分なりのライフスタイルを追い求められる環境が整ってきているのはとても良い傾向だが、喜んでばかりいられるだろうか。
個が強い時代が進むとどうなるのか?生活の糧となるお金を稼ぐことについては、いま多くの人が社員として会社で働き、労働の対価として金を得ている。これまでは会社>個人という力関係のもと、会社が主、社員が従、会社が個人をうまく使う形が長く続き、それで収益を上げられてきた。しかし個の立場が強くなり、会社と個人の関係性は上下のないフラットに向かっている。現実として、いまは転職も一般的で、人手不足で個の価値が高まったこともあり、個人は「自分を活かしてくれる会社に転職する」「居心地いいから在籍を続ける」となる一方で、会社も「長く続けてもらえるよう待遇や労働環境を改善する」と変わってきている。選択肢ができ、改善されるのは良いが、会社はこれまでとはやり方を変えて利益を上げていかなければいけない状況に変わった。個人も相対的に立場が上がった結果、自立して結果が求められるようになっている。痛し痒しだ。
個が強い時代、FA業界はどうなるのか?FAは比較的保守的な業界で、会社の規模やブランドが力を持っていた。しかし個が強い時代になると、Aさんが開発したPLC、Bさんが認めた品質のように、個と製品が結びついて価値になる時代がくるかもしれない。優れた個人が多く在籍し、彼らの存在を打ち出せる企業は価値が高くなり、競争力にもなる。そうなると信用や信頼、ブランドづくりの仕方も変わってくるだろう。もっと個にフォーカスが当たってきてもおかしくない。将来的に単純作業はロボットや機械が代行する。人は価値を生み出すことが仕事になり、ある種、責任は重くなる。そうなると生きやすくなる一方、息苦しさも出てくる。個が強くなるということは、個が自立・自律し、自ら競争に身を置く時代でもある。その世界を生きる覚悟を今からしておかなければならない。