日本の製造業再起動(104)【提言】FANUCロボット 100万台実績の衝撃【コボ(協働ロボット)元年への期待】

ファナック株式会社(FANUC CORPORATION)は、誰でも知るロボットメーカーである。ロボット王国日本を代表するFANUCロボットは全世界に販売されており、性能は折り紙付きである。その技術力は、ファナック創業以来からのNCやサーボの優れた基本技術に支えられており、その歴史は長い。長い歴史の中で、FANUCロボットは100万台が販売されている。ファナック経営幹部のA氏は、『50万台売るのに40年かかったが、直近6年間で50万台が売れた』と語っている。 直近6年間で急速に売り上げを伸ばした衝撃の事実をもとに、ロボット需要の全貌と未来予想を解明してみたい。

ファナックの100万台販売実績は、全世界販売の総数であるが、前半40年間の50万台は、国内や米国需要が貢献しているが、後半6年間の50万台は中国需要を無視できない。また、100万台の主要顧客は大手製造業であった。 産業用ロボットの導入する業界は、主として自動車産業と電機産業であり、この2大産業の発展と軌を一にしてロボット産業は発展してきている。 歴史を紐解けば、日本の自動車や電機の大手工場は、世界に先立ち積極的な自動化を推進してきた。この旺盛な自動化需要を背景に、日本はロボット導入台数で世界一に輝いていた。 ところがこの輝かしい歴史も台頭する中国により急変した。10年前までは日本が第一位、米国が第二位、中国が第三位であったが、今日では、中国が圧倒的な第一位になり、日本はかろうじて第二位につけているものの、中国との差は3倍以上に広がっており、ロボット需要の座は日本から中国へと移ってしまった。ところが幸いなことに、ファナックほか、日本のロボットメーカーの世界的活躍は依然として強力であり、世界シェアの6割程度を日本勢が占めている。日本は「ロボット王国」であると言っても過言ではない。

ここで、産業用ロボットの中国需要の急速台頭と、今後の課題について触れていきたい。自動車・電機の各大手企業は、日本と中国では全く違った自動化の歴史を持っている。日本の工場の歴史は古く、レガシー設備を更新しつつ自動化(ロボット導入)を進めてきたが、中国ではいきなりデジタル化・ロボット化を武器とする巨大工場での大量生産を行い、低価格競争を強みに旺盛な中国国内市場での市場獲得競争に加え、世界市場への進出を行っている。近年の中国製造の自動車や電機を見れば一目瞭然である。 40年で50万台の販売実績が、たった6年で50万台販売した背景に、中国需要があったことは紛れもない事実である。

では、これからの5年先、6年先の予測はどうであろうか? ファナック社内でどんな青写真を描いているかは知る由もないが、今後数年で、100万台、いや200万台といった強気の成長を目論んでいたとしても何ら不思議ではない。では、需要先はどこか?中国経済は明らかに峠を超えて下り坂。欧州の製造業界は厳寒期に入っており、好調であった米国経済にも黄色信号が点っている。世界経済は明らかに成長鈍化の兆しが見える中で、産業用ロボットの需要だけが急拡大する要因は見当たらない。ところが、国内を中心に「膨大なロボット需要」の存在に注目しなければならない。その需要とは、中小企業での多品種少量生産を自動化する強力なニーズである。ここまで紹介してきた産業用ロボットは、大手企業・大量生産の需要がベースであるが、 中小製造業の多品種少量生産における自動化のニーズは、人手不足を背景に各企業の生き残りのための必需品としての切望されている。周知の通り、日本の生産年齢人口は急激な減少に見舞われている。1995年の8700万人をピークに、これから6年後の2029年には、実に1700万人の減の7000万人が予想されている。80%以上の中小企業での就業者の減少は防ぐことのできない事実であり、1000万人以上のロボット代替需要が潜在している。 この需要に対応するロボットが、協働ロボット(コボ)である。 FANUCをはじめ、日本のロボットメーカーが現在積極的にコボに参入している。従来、コボの市場は、デンマークのユニバーサルロボットと台湾のTM(テックマン)ロボットが世界で活躍しており、日本のロボットメーカーの影は薄かった。しかし今後のコボの最大需要国は日本であると言っても過言ではない。 日本のロボットメーカーが、中小企業需要を掘り起こし、中小製造業が多品種少量生産でのコボ化を徹底推進することが、日本再起動の要である。今回は、中小製造業のコボ活用による具体例を寄稿する予定であったが、紙面の都合で再び延期し、次稿で詳報する。

◆高木俊郎(たかぎ・としお)

株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。

電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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