日本の製造業再起動(94)【提言】劣化列島日本/希望と勇気【その12(最終稿)】真犯人/出羽守(でわのかみ)

2022年は、『劣化列島日本/希望と勇気』をテーマに、1月より月1回合計11回連載してきた。本稿は最終稿として、第1稿から第11稿までを振り返り、締めとしての総集編を論じていきたい。

22年は、突然の円安に襲われ、コストプッシュインフレによる諸物価高騰など、生活圧迫の半面で、完成品メーカー・大企業は好決算に湧いているが、企業内に「劣化列島日本」の現象は存在しないのだろうか? 大企業の内部では、コロナ災いによる勤務形態に大きな変化が生じてきたが、社員のモチベーションが上昇しているとは言い難い。筆者の知り合いにも、長期のテレワークの影響でうつ病を患い、退職に追いやられた優秀な社員がいる。 好決算とは対象的に、残念ながら「劣化列島日本」の現象が散見されるのも現実である。

22年1月の第1稿では『カーボンニュートラル/SDGs』を取り上げた。SDGsは外圧である。ところが、ロシアからのエネルギー供給を止められた欧州を中心に、SDGsの掛け声は声を潜め、SDGsは棚上げ状態である。SDGsを「神の声」として崇拝している日本社会は、出羽守(ではのかみ)に汚染されてないだろうか? 筆者はかねてより、出羽守の弊害を提言してきた。出羽守とは、欧州では・・米国では・・と、欧米の習慣や言動を常に引き合いに出す事を言う。出羽守は「欧米は日本より優れている」との前提があり、日本を自虐的に攻撃する事が多く、日本の優れた文化を破壊し、日本のアイデンティティーを消滅させる非常に危険な言動である。SDGs崇拝は、出羽守による日本列島劣化の象徴である。

出羽守の弊害は、22年5月の第5稿において、『出羽守に支配されたウクライナ報道』と題し、詳細に寄稿している。出羽守の象徴のひとつに「ドイツ神話」があげられる。『ドイツはものづくりで優れている。見習うべき優れた国だ』といった認識が日本全体に定着しているが、その認識はかなり違っている。2月の第2稿で『ドイツ衰退に学ぶ劣化の法則』と題し、寄稿した。驚くことに、今のドイツは「国家劣化」に襲われ、ドイツ社会は大きく衰退している。ドイツ神話はとっくに崩壊しているが、日本ではあまり認識されていない。特に製造業界では、ドイツを信奉する思想が依然として強く定着している。『日本人は働きすぎだ!ドイツを学べ』などと言う御仁は、出羽守の典型であり、あまりにも的外れ発言である。 歴史を紐解くと、日本の素晴らしい遺伝子に触れることができる。

7月掲載の第7稿では、『50年前にタイムマシン。日本列島改造論』にふれた。出羽守が闊歩する前(バブル崩壊以前)の日本は、欧米よりはるかに優 れた文化とビジョンを持っていた。この歴史的証明が50年前の「列島改造論」である。列島改造論以降の日本では、列島改造論が中心軸となって、日本経済は大いに成長し、安全で豊かな日本が創造されたが、バブル崩壊以降の日本はグローバル主義を標榜し、国家戦略すらも見失った。かつては世界を席巻した電子技術も、Web1・0、 Web2・0の時代の流れに乗り遅れ、GAFAに取って代わり、日本の出る幕もない。列島改造論から50年。今まさに50年前の日本を学ぶ時である。数十年に渡り日本経済を苦しめてきた「円高」が消滅し、「円安」時代がやってきたが、今の日本では依然として出 羽守に支配され続けている。これが、劣化列島日本を誘発した原因である。  

第3稿では、ソニーの復活を取り上げた。ソニー復活物語は、劣化列島日本で花開いた 「希望と勇気」と言っても過言ではない。 不死身のように復活を成し遂げたソニーを取り上げ、我々日本人の誇りを取り戻す「希望と勇気」を検証した。ソニー復活は日本のものづくり遺伝子に回帰した革命であり、お客様の「感動」を旗印に、グローバル主義から脱皮した日本の誇りである。もっと強い言葉を使えば、「欧米からの思想的奴隷解放」でもある。ソニーの復活こそ日本復活のお手本であり、日本の「希望と勇気」がここにある。

紙面の都合で1年間に寄稿してきた『劣化列島日本/希望と勇気』のすべてを紹介することはできないが、劣化列島日本が侵された病は、「グローバル」という欧米発のウィルスであり、この病の特効薬は「日本遺伝子への回帰」であることは明白である。

最終稿のまとめ要約は、「劣化列島日本」を作り出した張本人は、「出羽守」であり、「希望と勇気」の原動力は「日本人の誇り。日本遺伝子への回帰」である。日本企業のすべてが、出羽守に支配された「グローバル化」から卒業 し、日本に錨をおろし、日本企業として世界に羽ばたく「インターナショナル企業」となることを祈願し、最終稿の筆を置きたい。

◆高木俊郎(たかぎ・としお)

株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。

電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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