令和の販売員心得 黒川想介 (81)

当月の営業活動で何か良い情報はなかったか。何かトピックスはなかったかと販売員に尋ねてみる。販売員からの報告はほどんどが受注に関係する情報である。

販売員は毎月の売上予算達成のため日々動いている。売上予算達成に厳しく管理されていなくても狩りをする猟犬の如く一周でも多くの売上をふやそうとするのが販売員である。だから何でもいいから情報を取って来いという指示を出しても、販売員は商談情報以外には目をくれない。仮に日頃、顔を出している技術課で人が一人減ったことがわかってもその事実を情報扱いにはしない。多くの販売員は一人減ったことを追及すれば大事な情報になるかもしれないと思わないのである。つまり情報イコール商談情報になっているからだ。

しかしこれまで述べてきたように売上が右肩上がりにならず横波のようなトレンドになっている販売店は商品を売り込む営業力のみを強化するのではなく販売店独自のマーケティング感覚をもってことに当たらねばならない。マーケッティングはマーケット創造の手法である。

販売店は商品を作るわけではないから新しい需要をどのようにして見つけるかという手法になる。実際に販売店では営業力を強化しても売上が伸びない時にこれまで本気に売ったことのない商品筋か、新規の客層へのアタックを試みようとしてきた。しかし現状の顧客に何を販売すれば売れるのかがわかる位ならとっくの昔にその商品を仕入れて販売しているのが商人である。だから残された道は新規の客層に挑戦するしかなくなる。つまり右肩上がりの売上を持続していくには顧客をふやすか顧客層を変えるしかない。もっともマーケッティング&イノベーションが進み、新しい概念の機器や部品の創出があれば従来の顧客に新需要が生まれるから従来の営業活動で売り込める。しかし不確かな期待に頼ることは得策ではない。それなら顧客を一人でも多くふやすことに専念すべきである。

一般の販売員が新規開拓のためにアポ取りして訪問まで漕ぎつけるのは容易ではない。だから現状の顧客内にある顧客を開拓して新しい活躍を見つけるのが現実的だ。顧客内のどこに、どのような見込客があるのかを知るのは情報次第である。

前回に例えとして出したような顧客内の事がある程度わかっているなら、それをタタキ台にして更に検討した上で、扱い可能な商品が売れるマーケットになるかどうかという観点で進出を決めればいい。

その際には情報の質量は欠かせない。そこで情報収集に慣れて来なかった販売員には情報収集の心得から説く必要がある。情報を入手する相手は色々な用事で顔を合せている顔見しりの人である。用件の打合せが終わった後にいつもは軽い雑談で締めるが雑談が代わりに以下の心得を実行することである。一ツ目は行き掛けの駄賃を狙うことだ。とりとめのない雑談を封印して、代わりに顧客を知るための軽い話題を出す。つまり、相手の会社や仕事に関することである。

例えば最近変わった事はないか、会社全体が力を入れている事や自部門の重点方針や課題、会社内で話題になっている事など大まかな情報入手から始めることでいい。二ツ目は当て馬作戦である。これは何の用件もない時の訪問である。まず取り易い用件をダシに使ってアポを取る。例えば納期の乱れの説明、材料高による価格改訂説明、設計変更や生産中止案内などである。用件はダシで、本心は情報入手の訪問だからそのための話題や質問の準備をして臨むことになる。これらの心得が無意識に出るようになるまで毎回やり続けなければならない。

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