令和の販売員心得 黒川想介 (76)

昔の武士は日夜剣術の稽古に励み、土台を作れと教えた。その教えとは武士は剣術の技を磨いて強くなり、戦いの場で相手に勝たなければ出家に奉公できないというものではなかった。もち論、日夜の稽古によって剣の技は上達しただろうがそれよりも担力が鍛えられることを狙った教えであった。身についた担力があればいざという時に冷静沈着にして何事にも動じないで対処できるという教えであったのだ。

営業の世界で稽古に相当する事と言えば社内営業研修やメーカーが実施する商品研修ではない。販売員が顧客や見込客の現場で日々苦渋を味わうような多くの経験をする事であろう。現在では隆盛を極めている機器部品マーケットであるが、成長期以前は販売員のかなりの時間は剣術の稽古のように担力をつくる日々であった。名刺が飛ぶようになくなる程新しい客先を訪問するのが日課であったから、冷や汗をかき、気の張った一日は剣術の稽古のように疲れた。この疲れの中で営業の土台となるマーケットに向う姿勢や基本力が育った。当時は現在盛んに行われている商品の研修は必要にせまられてするものであった。

やがて高成長期を経て現在に続く低成長期に入り、競合は激しくなると営業の稽古は剣の技を磨く方に重点が移ってきた。現在の営業を取り巻く環境は名刺が飛ぶようになくなるものではない。それでも安定した顧客を持って、売上の確保に善戦している販売店は多い。そこで心配なのが競合激化の低成長期が長い間続いてしまったために剣術の稽古が剣の技を磨く方に片寄って土台作りの方は忘れてしまっている点である。確かに低成長で安定しているマーケットは競合は激しいために商品研修で売り方の技を磨いて、成長を遂げることは最も重要なことだ。

しかしどんなマーケットでも、同じ環境は続くものではない。令和年間には機器部品マーケットも変客することは間違いないのである。つまり同じような営業をしていると令和年間にはいつの間にか置いて行かれることになりかねない。そんな時に多少戸惑っても体勢を早く立て直せる販売員がいれば貴重な戦力となる。営業は人との接触によって発揮できる仕事である。

会う相手がどんな人でも、どのような状態にあっても少しでも脈力があるならば良い関係に持って行く技量が営業の土台である。毎日のように新規の技術者と会って名刺を交換する営業は土台作りの稽古になる。しかし現在の営業の現場には成長期以前のように新規客や初めての技術者に会う仕事がルーチンのようにあるわけではない。だからといって人との接触に絡む数々の基本力に関して、社内研修を幾度、やったとしても効果は少ない。それではどうすれば販売員は現代流の稽古ができる、のだろうか。稽古というのは毎日やらなければ身につかない。毎日やる事によって新たな経験が身につくものだ。その新たな経験は新たな発見に導く。そしてその新たな発見は次の新たな経験を引き寄せる。現在、やっている営業活動でもたまたま新たな経験に出合うかもしれないがたまたまではマーケットに向う基本力は身につかない。

では毎日何をすればよいのか、第一に余程の事がない限り毎日顧客に会うことである。最近の営業は守備に徹しているせいか後方処理で社内帯在率が高い。なかなか外に出にくい処理が多くあっても、最低一軒は訪問する癖である。第二に訪問した顧客で必ず三知活動をすることである。前回少し三知活動を紹介したがとにかく今ある顧客の事は知ってるつもりにしないでこの活動を通して新しい経験を次々とすることだ。三知活動を毎日やることが現代流の稽古になる。

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