【FA時評】市場活性化へ正確な統計

 産業界はあらゆるモノの価格が上昇を続け、以前のデフレ状況から一転してインフレ傾向を強めている。原材料や資材価格の上昇に加え、物流費なども日ごとに上がり、これにモノ不足も生じていることから売る側の立場が強く、価格への転嫁が従来には見られないほど着実に行われている。

製造業でも、鉄や銅、アルミニウム、樹脂といった素材は、価格の上昇だけでなく、素材そのものが入手しづらい状況になっており、モノがあれば価格はいくらでもいいから欲しいといった話が各所で聞かれる。

デジタル化社会の進展から半導体を使った電子機器やコンピュータが社会の中核を支えていることもあり、最近の自動車や家電に見られるように、半導体の調達難で生産計画が大幅に狂い、納期遅れが日常茶飯事になりつつある。

 製造業各社の2022年3月期決算の数字を見ても、受注残が異常に膨らみ、販売商品の不足で売り上げを計上できなかった企業がかなりの数にのぼっている。現在はコンピュータを駆使したSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築が当たり前になっているが、皮肉なことにSCMによる計画生産・在庫レスが、こうした状況下では逆に足かせになり、伸び切ったゴムのように余裕がなく、すぐに切れて大騒ぎになる事態が生じやすいといえる。SCMには光と影の部分があるが、今回は影の部分が出てしまった。 

こうした納期問題は時間の経過とともにいずれ解消するだろうが、FA業界にとってこれを機にもう一度再考する必要があるのは、今後の市場拡大に向けた統計構造のありかたである。現在はモノが無いから右から左に売れているが、モノの供給体制が追いつき、余りはじめた時は当然買い手市場になり、競争がはじまる。

FA業界では「ソリューション提案」、「ソリューション売り」という活動が定着しつつある。FA機器を単品の価格で販売するのではなく、ソフトやシステムとセットにして販売する、あるいは、ユーザーの困っていることの解決や付加価値が向上する提案を行うことで、FA機器の製品価格に関係なく購入につなげる活動である。単品だけでの販売では、価格の高い・安いだけの交渉になり、ライバルとの競争や利益額の低下になりやすい。「ソリューション」という言葉の中に、ユーザーが購入することでのメリットを強調することで、FA機器単体の価格を目立たさないという思惑が込められている。

2021年度のFA機器の生産は好調で、日本電気制御機器工業会(NECA)は、前年度比118・7%の7215億円と過去2番目となり、日本電機工業会(JEMA)も標準仕様で生産する量産品である産業用汎用電気機器は、同118・2%の9014億円と同じく過去2番目となっている。

こうした工業会に加入している会社のFA機器の生産数量は概ね過去最高を超えているところが多い。しかし工業会統計の金額は過去最高までは達していない。その理由の一つは製品価格の低下であり、もう一つは工業会の統計に入らないOUT to OUT(海外生産・海外販売)分の扱いだ。

そしてこうした統計に反映されないのは前述した「ソリューション」の価格で、FA機器の販売促進のヒントとしての提案であれば、価格はつけられないだろうが、ソフトウェアやシステム開発や装置として販売した場合は対価が生じる。現在の工業会統計ではこの対価部分のカウントがされていないため、数字としてFA業界の市場規模へ反映されづらくなっている。従来からのハードの生産額だけをカウントする統計では、現在の市場の状況を正確に把握しているとは言えない。

また、OUT to OUT分の統計上の扱いも課題だ。NECAではこれをカウントしているが、工業会として正式には公表していない。日本電気計測器工業会(JEMIMA)は、OUT to OUTも含めた形で日本メーカーの生産として統計を公表している。

FA業界の中には、工業会未加入のメーカーで工業会の全体生産額に匹敵する金額を1社で売り上げている会社もあり、すべての統計が市場の実態を反映していると言い難いが、日本の製造業にとってグローバルに市場を広げていくことが重要な取り組みのひとつである。海外での活動実態も含め、生産統計の数字を正確なものにつなげることは、製造業を勇気づけ、活性化につながる一助にもなってくる。

ものづくり.jp株式会社 オートメーション新聞 会長 藤井裕雄

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