【産業用ロボットを巡る 光と影(40)】メーカーとの間に優秀なご意見番は必須 現場に寄り添う企業の重要性を認識せよ!

某ロボットメーカーの無責任さ

筆者の周りには産業用ロボットに関する仕事をしている人がたくさんいる。先日もSIer(システムインテグレーター)に勤めている友人から信じがたい話を聞いた。

そのSIerは某ロボットメーカーからメンテナンスを受注し、友人はそのロボットメーカーの作業着を着て顧客の工場でメンテナンスを行った。ロボット自体には問題はなかったが、その友人はロボットの先端にあるハンドとフランジとの接続部が外れ、数か月後には事故が起こる危険性を発見した。

友人はこのことを顧客には(直接の取引でないため)伝えることができないため、某ロボットメーカーの担当者にこの危険性を伝えた。ところが、この担当者は危険性を認知したにも関わらず「うちには関係ない」「ハンドはうちのメーカーじゃないんだから、余計な詮索はするな」と友人の警告を無視した。

この世界ではよくあること

筆者の考えでは、このハンドが某ロボットメーカーのものでなかったとしても、気付いた点を顧客に指摘するのが当然と思うのだが、産業用ロボットの世界では「少しでも関係がなければ関与しない」という風潮がある。例えば逆のパターンで、ハンドのメーカーがメンテナンス時にロボットに異常に気づいても顧客に指摘しない、という話もよく耳にする。

ハードだけでもこれだから、ソフトが加わるとメーカーはさらに冷たくなる。ロボットの動作に問題がおきた顧客に対し、ロボットメーカーは「その問題はソフトが悪い」と言い、ソフトのメーカーは「その問題はハード(ロボット)が悪い」と言い、顧客はたらい回しにされる。この記事を読んでいる読者の中にも、このパターンでロボットがほこりをかぶる羽目になった方は多いだろう。

ロボットの異常動作を解決した例

問題を解決するために「顧客がハードとソフトの分け目を理解していればよいのでは?」思われるかもしれないが、この世界ではその見極めが非常に難しい。その難しさを実感していただくために、当社が解決した某顧客での例を以下に述べる。

その某顧客はティーチングソフトは当社のRobotWorksを使っており、ロボットの熟練度は低い。先日、その顧客から「ロボットの動きが、全体の動きの中で何カ所かブレ(振動)が起きる。原因がわからず、このままでは顧客の製品を加工できないので助けてほしい」という連絡があった。ちなみにロボットがブレることは時々あることであり、ソフトとハードの片方が原因の場合があれば、両方が原因の場合もある。

当社はまず原因を特定するため、顧客から動画とプログラムを送ってもらい、詳細もヒアリングした。その内容を挙げると(顧客の情報なので、やや内容をぼかすが)「加工は溶射」「加工場所は面全体」「ツール姿勢は面に対し面直」「ソフト上ではロボットはブレていない」「ピッチは1㎜未満」「製品の置き方を90度回転させるとブレの量が増減」である。

ロボットの動きを見る限り、特異点ではないし、ロボットの腕が伸びすぎているという感じでもない。また、プログラムをパッと見た感じでは、ピッチが短すぎるのが多少気になるが、位置決め精度や速度指定などにも問題はない。また、このロボットは新しく購入したばかりであり、これまでに問題が起きなかったことを考慮すると、この問題は難易度が高い。そこで、当社から顧客に数通りのテストをお願いし、その中で「速度を1/10に落としたらブレがかなり減った。」などの報告をもらった。

これら全ての情報を元に当社からロボットメーカーに状況を報告し、アドバイスを求めた。ここでのメーカーへの報告の仕方が非常に重要で、もしロボットメーカーに丸投げすると、ロボットメーカーはソフトの仕様を知らないので原因の特定が不可能だ。よって、当社は何通りか仮説を立て、ロボットメーカーに「ロボットを〇〇な状況で△△なプログラムで動かすとブレが起きるか?もしそうなら解決する方法があるか?」と(必要なデータと共に)質問した。

このようなやり取りを繰り返す中で、解決方法が見つかった。それは、ブレが起きる箇所を速度の指定を「ツール先端速度」ではなく「角速度(姿勢の速度)」に変更することだ。問題がおきた原因は、簡単に言うと「動作目標の『位置』はほぼ到達しているのに、『姿勢』が未到達な(姿勢を変更する必要がある)ため、モーターの計算で矛盾が生じ、ロボットが誤動作した」である。
顧客の現場に寄り添う

さて、この顧客から「おかげさまで解決しました。素早い対応、有り難う御座いました。」とお礼をもらったが、当社としてはこれで終わらせず、さらに「おせっかい」のアドバイスをさせてもらった。なぜなら、顧客がブレが起きる箇所だけを角速度に変更する作業は、ソフトやペンダントのどちらを使用しても手間がかかり、長い目で見ると顧客にとって非効率的だからだ。「おせっかい」の詳細は割愛するが、要するに「製品の加工の質」と「サイクルタイム」の落としどころを顧客と相談をしながらソフトの「効率的な使い方」を指導した。ここまで顧客の現場に寄り添う企業は、他には無いであろう。

現場の問題を解決する知識(ノウハウ)

まとめると、くれぐれも注意してほしいのは、メーカー、SIer、商社などに丸投げをしてはならない。理由は、彼らが「冷たい」というだけでなく、なにより現場の問題を解決する知識がないのだ。特に商社は何も知らないといっても過言ではない。

この記事の読者は、今回の例を少し難しく感じたかもしれないが、当社からすると日常茶飯事だ。ちなみに当社は知識を持つだけでなく、顧客が「どのようにロボットを(周辺機器やプログラムを含め)使用しているか」を把握しているから、素早く的確なアドバイスができる。このような会社をご意見番にすれば、ロボットを安心して運用できるはずだ。

◆山下夏樹(やましたなつき)

富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。

福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。1973年生まれ。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

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