製造業、デジタル経営への道〜新時代の販売戦略〜④ どうする? 今後の「展示会」活用 新しい価値を得るための場

株式会社才流の岸田です。先日、1年以上ぶりに東京ビッグサイトで開催されていた製造業向けの展示会に参加しました。

2年に1度開催される「IIFES(アイアイフェス=旧:SCF/計測展TOKYO)」でしたが、オミクロン株の感染拡大やまん延防止重点措置などの影響により、大手企業の直前での出展取りやめもありました。公式ホームページを見ると、前回は約5万人が来場しましたが、今回は約1万人。残念ながら、かなり来場者数は減ってしまったようです。

昨年秋以降、ワクチン接種も進み、展示会の来場者数は回復傾向にありました。「2022年はあらためて展示会を活用した販促が戻ってくるのではないか」と期待した方も多かったのではないでしょうか。私も、その一人です。

残念ながら、新型コロナウイルスとの戦いは続き、リアルな展示会の開催にはまだまだ課題が多いのも事実です。しかし私は、リアルな展示会には、ウェブサイトやオンライン展示会では提供できない価値もあると考えています。会場を回りながらリアルな展示会は何の場で、顧客は何を求めているのか。「リアルな展示会の意義」について、あらためて考えてみました。

■果たして顧客はいま「何」を求めているのか?

コロナ禍が続く中、そもそも顧客はどのような情報収集を行い、何を求めているのか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラルの流れが加速し、経営層や役職者は新しい取り組みのヒントを模索しています。ただし、これはリアルの展示会に来場せずとも、ウェブサイトで情報を見たり、実際に取り組んでいる企業の視察をしたり、大手企業のショールームを見ることで代替できます。

他方で、目の前の仕事に取り組む現場担当者は、工場を止めないための設備部品、設計に必要なITツール、製品開発に必要な試作品を作れる外注先、生産管理システムなどを求めています。「ある程度世の中に出回っているものを今すぐ欲しい」というニーズを持っており、ミスミなどのECサイト、地場で付き合いのある商社や加工屋がニーズに応えているでしょう。
では、展示会は顧客にとって何の場なのでしょうか。

■リアルな展示会は「何」の場か?

「海外の展示会は商談会だが、日本の展示会は情報収集の場」という指摘は、地理的な特性や会場の広さの違いなども踏まえて以前からいわれていることです。

一方で、ものづくり商社が主催するような展示会は「即売会」としての側面が強く、その場で売り買いしたり、商談が活発に行われています。商社が主催する展示会のほうが、海外の展示会に近いものだなとあらためて感じました。

「では、なぜIIFESなどの展示会が商談会の場にならないのか?」が気になり、ブースを見回してみました。
すると、数年前から展示が増えているIoTを用いた新しい付加価値の提案や、カーボンニュートラルの取り組みの展示にチャレンジしているブースがありました。これは今すぐ買う製品やサービスではなく、少し先の未来を提案するショールームの要素が強いと感じました。

また、小物部品を扱うブースを見ると、金物屋やホームセンターのように商品を陳列した展示をしており、まるでECサイトのようだと感じました。大手企業の展示内容を見るとショールームの側面が強く、ウェブで同様の展示をして情報発信に取り組んでいるようです。

■リアル展示会の来場者は「何」が目的か?

製造業の方からは、「働き盛りの30-40代は現場の仕事が忙しく、なかなか展示会に来場できていないように感じる。多いのは若手社員の勉強目的と、役職者の新しいビジネスのネタ探し」という声をよく聞きます。

また、大手企業の方にインタビューをしたところ「どういう目的で展示会にいくか?」の問いに、「大手企業は提案しにきてくれるから、どちらかというと小さい企業やベンチャー企業などの新しい発見を期待する」という回答がありました。

もちろん会社の方針や事業フェーズ、商材によって異なるので一概にはいえませんが、来場者の調査情報などを見ても、「情報収集や業界トレンドの把握」という目的が多くなっているようです。
(参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000063081.html

ショールーム的な展示が多いから、情報収集目的になるのか。情報収集を期待されているから、ショールーム的な展示になるのか。「鶏が先か卵が先か」の議論になってしまいますが、来場者の目的の実態はそのようになっているようです。

■顧客はどこで製品の情報を得て購入するのか?

これまでの内容を踏まえて、顧客の「検討する製品に対する経験値」と「購入する時期」の軸で情報入手経路を整理してみました=図。

整理すると、リアルな展示会は「顧客が買ったことがない製品カテゴリ」の情報、つまり新しい価値を得るための場として利用していると考えられます。ショールームのような展示や、新製品や新技術の出展に注力し、さまざまな企業と比較してもらう場を提供しましょう。

企業のみなさまは、コロナ禍で来場者が減ってしまい、「展示会だけでは十分な顧客接点を得られない」という課題をお持ちだと思います。図のように製品カテゴリごとにどの領域に対してどの打ち手を打つかを整理すると、顧客接点の足りない部分を埋めていけるのではないでしょうか。

岸田 慎平 株式企業才流 コンサルタント 

新卒でIBMコンサルティング部門にて業務改革&IT領域のプロジェクトを経験後、BtoB製造業に特化した販売支援をするベンチャーへ転職。大手企業から中小企業まで幅広く、150社以上の販売戦略の立案から施策実行までをトータルに支援。自社の営業企画やマーケティング、営業マネジメントなどを経験したのち、2020年より株式企業才流にてコンサルタントとして活動。中小製造業の経営企画や事業戦略策定、IT化の支援などにも取り組み、製造業を総合的に支援できるコンサルタントを目指して取り組んでいる。

https://sairu.co.jp/

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